中学時代に見たCMの衝撃を忘れられず購入し、共に15年を過ごしてきたセブンス(HR31)

“セブンス”の愛称で親しまれた名車スカイラインの7代目、R31シリーズ。
ドラマチックな曲調の「エリーゼのために」をBGMに、世界初のGTオートスポイラーが出現する印象的なCMが心に残っている人も多いだろう。

R31に15年間乗り続ける埼玉県所沢市在住の細矢暁央さん(49歳)もそのひとりだ。

「僕はもともとバイクがメインだったので、クルマの免許を取ったのは20歳になってからなんです。ジムニーなどでダート遊びをした後は、趣味を一本にしようと思ってキャラバンを買ったんですよ。そうしたらディーゼル規制が施行されて乗れなくなってしまって。次のクルマに悩んでいた時、信号待ちで左を見たらこのR31が売っていたんです。その時に、自分が中学生だった頃のCMがすごく印象的だったのを思い出して、全然方向性が違うけど、こういうのもありかなと。GTオートスポイラーがフロントのバンパー裏からモーターで出てくるのもカッコよかったなって。その週末にはお店に見に行って買っていました」

これは約15年前、細矢さんが34歳の頃のお話。ちなみに現在では高値のR31も、当時は30万円弱で購入できたそうだ。

細矢さんが所有するR31スカイラインは1987年式2ドアスポーツクーペの後期モデルで、エンジンは直列6気筒1998cc、DOHCのRB20DETを搭載している。

購入時からしばらくはノーマルのまま乗り続けていたが、岐阜県にある専門店『R31ハウス』との出会いがこのR31を大きく進化させることとなる。

「R31は結構な年式だったけど、専門店があるなら大丈夫だろうという安心感もあって買ったんです。そこで、R31を購入して3〜4年後に、どんなところかなと部品を買うついでにバイクでR31ハウスに遊びに行ってみたんですよ。そしたら畑の中に部品取り車が何百台とあるのを見て圧倒されちゃったんです。それから通うようになりましたね」

「ボロくて古いクルマだと思われるより、キレイな旧車の方が周りから見ても自分から見ても気持ちいいじゃないですか。とはいえ、派手なのは好きじゃないので、まず10年ほど前に純正色に全塗装しました。それからダンパーがダメになったから車高調にしたり、穴が空いたからマフラーを変えたりと、消耗品交換のついでに少しずつリフレッシュしています」と細矢さん。

その言葉通り、外装はスポーティでありながら、当時のハイソカーブームを彷彿とさせるシックで落ち着きのある雰囲気。リア周りは10年ほど前にトレードマークのレンズテールをデッドストック品に交換し、GTS-Rのリアスポイラーも装着している。

一方の内装は、購入時にボロボロだったシートを当時2万5000円で購入したレカロ製に交換している以外はできるだけ純正の雰囲気を維持。自作したというリヤスピーカーのバッフルボードも車内の雰囲気によく似合っている。

タービン交換仕様のエンジンルームも、美しく仕上がっている。

「R31ハウスに車検に出した時に、限定車のGTS-Rに乗せてもらったら、あまりにも高回転が楽しくてびっくりしました。それに社長が『あのタコ足は楽器だ』というだけあってかなりいい音を出していたので『チキショー、じゃー自分もやる!』ってエキマニ&タービンを交換したんです。ついつい回したくなっちゃうくらいとても楽しいです」と、見た目だけでなくチューニングもぬかりはない。

また、エアコンはR12ガス仕様からR134a仕様に変更済みで、劣化しがちなリザーブタンクなどもR31ハウスの復刻パーツに交換されている。

フロントタワーバーは細矢さんが1000円で購入したもので「当時このタワーバーを装着して走ったら、フロントがしっかりしすぎて雨の日にスパーンとケツが出ちゃいまして…。それでリアにはR31ハウスで買った2万円のタワーバーがついています(笑)」というエピソードのおまけ付きだ。

“鉄仮面”の愛称で親しまれたR30や、現在も人気のR32以降のRB26搭載モデルに比べるとマイナー感もあるR31だが、細矢さんが特に気に入っているのがR31ならではの“無駄に長いテール”、そして購入動機のきっかけにもなったフロントのGTオートスポイラーだ。

「テールが無駄にでかいというか、なんとなくアメ車のようなおおらかさというか。走りはそこそこでも見た目がいい感じなんです。それと車速に応じて伸びたり格納したりするフロントのGTオートスポイラーは、やっぱり中学の頃のCMの印象もあってかなり気にいってます」と嬉しそうに語る。

ちなみに「鉄仮面、渋いですね!」とR30に間違えられることも少なくないものの、最近ホームセンターですれ違った人に『セブンスかっこいいですね!』と言われた時はびっくりしつつもちょっと嬉しかったそうだ。

現在、細矢さんはR31の他にも大型バイク1台と普段乗り用のオフロードバイクの2台を所有し、休みの日はバイクで出かけることが多いという。そのため、R31に乗るのは雨の日や荷物を積むことが多い時、そしてイベント時にサーキット走行を嗜んだりする程度と、乗る機会はそこまで多いわけではないという。

にも関わらず、美しく保ち乗って楽しいマシンとして15年間大事に維持し続けているのだから、その愛情は本物だ。

「去年2&4ライフの特集を組んでいた某バイク雑誌の表紙にこのR31が載った時は、とても嬉しかったですね。現状で苦労しているのはお金だけで、あとは不満はないですね。ただ、R31ハウスがバンバン新しいパーツを作るんですよ。専用アルミを使った逆反りホイールとかすごくかっこよくて。だけど雨の日しか乗らないクルマにそこまでするのもどうなのか…という葛藤です(笑)」

これまで購入金額の10倍くらいをこのスカイラインに費やしているそうだが、今後もお財布と相談しつつ、細矢さんのオリジナリティが光るマシンに進化していくに違いない。

エンジン音を動画でチェック!

(文: 西本尚恵 / 撮影: 土屋勇人)

[ガズー編集部]

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