実は難しくない、“世界最大の草レース”ニュル24時間の現地観戦ガイド【準備編】

  • 実は難しくない、“世界最大の草レース”ニュル24時間の現地観戦ガイド【準備編】

今年も“世界最大の草レース”とも言われるニュルブルクリンク24時間レースが開催されました。これまで数多くの日本の自動車メーカーが参戦し、今もなお多くの日本人ドライバーも参戦しています。

今年も2009年から継続して参加するスバルテクニカインターナショナルが、スバルWRX S4(井口卓人/山内英輝/カルロ・ヴァン・ダム/ティム・シュリック組)で参戦。トラブルによるクラッシュに合わせて、エンジンを含め不具合の出ていたパーツを総交換、4時間半ストップしたもののクラス2位で無事に完走を果たしました。

また、ニュルブルクリンクは高性能スポーツカー開発の聖地としても有名ですし、どのようなコース、雰囲気なのか気になっている方も多いと思います。

そんなニュルブルクリンクに行ってみたいなと思っているみなさんに向けて、カメラマン兼ライターとして現地で取材した筆者が、事前の手配からドイツでの移動、現地の雰囲気まで、2回に分けて「観戦のための旅行ガイド」をお届けしていきましょう。

ニュルブルクリンク24時間レースの基本情報

まずニュルブルクリンク24時間レースは、正式には第51回ADAC TotalEnergies 24H Nurburgringという名称です。
以前はチューリッヒ保険が冠スポンサーだったため、ADAC Zurich 24h Rennenと呼ばれていましたが、2019年より石油会社のTOTALが冠スポンサーになり、後に社名が変更となったことで、TotalEnergiesの名前が付くようになりました。

そんなニュル24時間が行われるのは、ドイツ西南部ラインラント=プファルツ州の中で、北方に位置するアールヴァイラー郡ニュルブルクにあるサーキット「ニュルブルクリンク」です。

レースはグランプリコースの約5kmのコースと、オールドコースや北コースと呼ばれるノルドシュライフェ約20kmのコースを合わせて使います。1周約25km、コーナーは170を超え、高低差は300mを超える過酷なコースです。

  • ドイツ西南部の赤い点のあたりにニュルブルクリンクがあります。右側はグランプリコース+北コースの全体図。左下がグランプリコースで、そのスケールの大きさが伝わりますでしょうか。

通常のレースではグランプリコースを使いますが、ニュルブルクリンク24時間レースや、ニュルブルクリンク独自で開催しているNLS(ニュルブルクリンク耐久レース)では北コースも使ってレースが行われます。

ニュルブルクリンク24時間は毎年5月〜6月に行われます。これは1日の陽の長さが長い時期を選んで開催しているからです。なるべく夜の時間が短い方が、参戦しているドライバーやチームにとっても負担が少ないですし、観戦している方も楽しみやすいですよね。
また気候的な問題で、春はちょうど寒すぎず暑くならないということで車やタイヤにも優しいことが考えられます。

ニュルブルクリンクは自動車メーカーの開発現場としても使用され、過酷なコース状況であるからこそクルマが鍛え上げられ、高性能の評価軸の一つとなることもあります。最近ではホンダのシビックタイプRがFF車最速タイムを刻んだことも記憶に新しいところです。

飛行機、レンタカー、宿は事前にオンラインで予約、決済しておこう

  • 2023年5月時点の日本からドイツへの航路

    2023年5月時点の日本からドイツへの航路

そんなニュルブルクリンクに日本から向かうには、日本各地の空港からドイツのフランクフルト国際空港に向かうのが一般的です。成田や羽田、関西国際空港などから直行便が飛んでいます。またはトランジットを行い中東などを経由していく便もあります。

2023年現在世界情勢が不安定なため、日本からの直行便はロシア上空を通過できず、ドイツへは北極圏を通過する北回りの空路を使っています。復路は南周りと呼ばれる中東・アジア圏を通過してきます。 往路・復路どちらもおよそ14時間程度かかります。

ニュル24時間レースを見に行こうと思ってもツアー旅行は基本的にはありません。毎年参戦しているスバルチームを応援する、スバル応援ツアーというものが企画されていますので、このツアーに参加するという方法もアリでしょう。

その他の場合は個人で行くしかありません。航空券、ニュルブルクリンク周辺の宿、レンタカーなどを旅行会社に頼んで手配する方法もありますが、宿泊予約サイトやレンタカー手配サイトなどが充実している昨今では、個人で全て手配することも可能です。

  • フランクフルト国際空港に到着するANA機

    フランクフルト国際空港に到着するANA機

まず航空券です。これも航空券の比較サイトがありますので、格安航空でトランジットをしながら行くのか、大手航空会社の直行便で行くのか選択肢は多くあります。

筆者の場合はニュル前後のスケジュールの問題で羽田〜フランクフルト直行便を選びました。若干値段は高い傾向ですが、ANA、JALも直行便を飛ばしていますし、日本の航空会社の直行便は何かあった時も安心感が違います。
海外の航空会社でもドイツのルフトハンザ航空も直行便を飛ばしていたり、フラッグキャリアと呼ばれる国を代表する航空会社を選べば間違いないと思います。

  • トヨタ・アイゴX

    レンタカーで借りたのは欧州でよく走っているトヨタの「アイゴX」

現地の移動はレンタカーにしました。昔はニュルの近くまで行く鉄道があったそうですが、今はありません。バスについては詳しく調べておらず、一番無難な方法としてレンタカーを手配することにしました。

今回筆者はANAの航空券を手配する際、同時にレンタカーを手配することができました。ANAの航空券を購入するサイトから、現地の移動にレンタカーはいかがですか?という案内が出てくれたため、そのまま手配を済ませました。

ドイツ到着からドイツを離れる期間の予約をしますが、保険にフルサービスで加入しているかどうかなども確認しておきましょう。
レンタカー代もオンライン決算ができるので、なにか現地でオプションをつける必要がないなら、現地で支払うことはほぼないでしょう。

ドイツでレンタカーを運転するには、国外運転免許証が必要です。日本の免許証と併せて所持することでドイツでの運転が特別に有効となります。
国外運転免許証は各地の自動車免許を発行してくれる免許センターでは即日発行してくれますし、対象の警察署の運転免許窓口でも後日の交付にはなるものの申請することができます。

ニュル24時間に行くにあたって宿の確保も非常に重要です。なにせ20万人以上の観客が来るイベントです。
ニュルブルクリンク周辺は小さな町ですが、世界中から観光客が訪れる場所なだけあり宿泊施設も多くあります。高級なホテルから小さめのホテル、ペンションやいわゆる民宿のようなものまで多く点在しています。

これらも今は宿泊予約サイトから地域と日程・予算から選ぶことが可能です。ニュル24時間が行われる時期は宿泊費も高騰していますので早めの予約が大事です。
今回筆者は車で20kmくらい離れたアパートメントを予約しました。事前にwebで決済が終わっていることあり、チェックインなどもスムーズにできます。

さて、いよいよこれで航空券、レンタカー、宿泊場所が確保できました。その他、海外旅行をするにあたって必要な、保険やwifi、観光地やお土産の下調べなどの準備もお忘れなく。

そして最後に、荷物をパッキングするときに忘れずチェックしたいのが現地の天候です。5月〜6月は比較的天候は安定していることが多いようですが、山間部にサーキットがあることも考えて、急な天候変化はあって当たり前と考えておきましょう。
過去に雹が降ってコース一面真っ白になったこともあるくらいです。

今年のニュル24時間は5月に行われたこともあり、朝・夜は気温が15度前後まで下がり肌寒い気温となり、明け方は夜露が落ちるほどでした。
決勝が行われた土曜・日曜の日中は逆に汗ばむくらいの気温になり、1日の中で気温変化が大きいので温度調整のできる服装を用意しておいたほうが良いでしょう。
どうしても寒い時は、思い切ってジャケットなどを買うのもアリかもしれません。記念のお土産にもなりますしね。

それでは、いざニュルへ出発です。
後編では飛行機で到着してからドイツでの移動、現地の様子などをお届けしていきます。

(文:雪岡直樹、写真:雪岡直樹、Nurburgring)

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