スーパー耐久で唯一! 初心者の学生メカニックが“主役”の日本自動車大学校がシビックでST-2に参戦
そのレーシングチームである#72 日本自動車大学校は、2023年シーズンにロードスターでST-5クラスのクラスチャンピオンを獲得しているが、2024年シーズンはFL5型のシビックタイプRにマシンをスイッチ、クラスもST-2クラスにステップアップすることとなった。
さらにマシンやクラスのみならずチーム体制も変更となっているということで、開幕戦が行われているスポーツランドSUGOにて、チームのAドライバーを務め日本自動車大学校の教員でもある金井亮忠選手と、今季から新たにチームをマネジメントする山野哲也選手にお話を伺った。
「山野選手と一緒にロードスターで2年戦ってきましたが、昨シーズンの途中から来年はステップアップしたいねという話になっていました。実際にシーズンの途中から山野選手や当時の監督にいろいろと動いていただいていまして、無事チャンピオンという結果を残すこともでき、いよいよステップアップすることができました」
マシンについては山野選手からの提案もあったというが、まだスーパー耐久にデビューしたばかりのFL5型のシビックタイプRをもっと盛り上げたいという雰囲気がチーム内でも盛り上がっていったという。
実はこのニューマシンをシェイクダウンしたのはこのレースウィークに入ってからという。さらにそのマシンを整備するメカニックの学生たちは毎年モータースポーツ科の3年生が務めている。つまりこのレースでメカニックを務めるのは3年生になりたてで実戦経験のない学生たちであり、この開幕戦SUGOは初めて尽くしの状況での参戦だというから驚きだ。
「今週初めてサーキットに来て、初めてクルマを見るところからスタートしているんですけど、みんなどんどん仕事を覚えてくれていて日に日に自分の仕事がこなせるようになってきています。最初はみんなわしゃっと1つのことをやったりしていましたけど、もうきちんと別々に動くことができています。この1週間の成長具合って、もうハンパないと思います!
ただこれはプロのチームにメカニック研修みたいな感じで行っていたらこういう雰囲気にはならないと思います。やはり自分のチームとして自分たちがマシンを走らせているからこそすごく勉強になるし、成長に繋がっているんだと感じています」
自分は班長ではありますが、現場に来てからはけっこう緊張して、焦っちゃって、頭が回らなくなってしまっているところもあります。まだまだみんなをまとめられていないので、次のレースではできるように頑張りたいです」と、初めて尽くしのことに戸惑いながらも、「自分がやるんだ!」という秘めたる情熱を感じることができた。
そして今年はチームの体制も変更となっており、山野選手が中心となりチームをマネージメントし、日本自動車大学校とタッグを組んで学生の教育も行っていくという。
これは山野選手が目指している「モータースポーツのあるべき姿」を具現化するために、日本自動車大学校とのタッグはとても理想的だからだという。
「レースという現場を通じて学生たちが普段ありえない経験をしながらその技術力をアップして欲しいというのが一つ。あと若い人たちの力をどんどんどんどん自分たちのレースカーに取り込んでいくことができる若々しいチームを作りたいと思っています。
さらに、若い人の可能性を早いうちに引き上げていくというのも僕の使命だと思っていて、今季は卒業生で今25歳の豊福大樹君にチーム監督をしてもらっています。それは、勝つためという明確な目標に向けてチームメンバーの力を集結して、どうやれば一番勝利に近づけるのかという組織論やリーダーシップを早いうちに身に付けて欲しいからです」
また山野選手は、このシビックは今週走り始めたばかりでレーシングカーとしてはまだ全然詰め切れておらず、「まだ赤ちゃんみたいな状態」だという。勝てるクルマに仕上げるためには「多分半年くらいはかかるだろう」という見込みも語っていた。
金井選手もこの開幕戦では、まずはしっかり走りきっていろんなデータを手に入れるところが第1目標だという。
「本来であれば、一度クルマを全部ばらして自分たちで作っていくっていうのが、マシンの習熟度を上げるのには一番早道なんです。でのこの後もテストとレースが続くのでまだ手探りの状況が続きますが、次の富士24時間が終わったあとには少し時間が空くので、そこでしっかりとマシンを理解して仕上げていきたいと思います」
毎年チームメンバーが入れ替わるというレーシングチームも珍しいうえに、それが毎回初心者であるという日本自動車大学校。特にこのスーパー耐久は耐久レースでありマシンやパーツへの負荷も高く、ピットストップやドライバー交代も複数回ある中で最後までチーム全体としてミスなく走り抜くこと自体が大変なこと。
そのうえで、百戦錬磨のレーシングチームと戦っていかなくてはならないわけだ。
「人材育成の基本は育てるのではなく育つ環境を整えること」という話を聞くことがあるが、このスーパー耐久はまさにこれ以上ない「育つ環境」なのだろう。
初めて尽くしの2024年シーズンの日本自動車大学校が、シーズンを通してどのように成長し、混戦のST-2クラスでどのようなレースを見せてくれるのか、楽しみで仕方がない!
(文:GAZOO編集部 山崎 写真:GAZOO編集部)
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