【折原弘之の目】冬の撮影は太陽(光)と遊ぼう

冬は気温と湿度が下がり、空気がクリアになるので、写真を撮るのに絶好の季節。そして何より、太陽の位置が低いため、コントラストの強い写真が撮りやすくなります。

逆光や斜光のシチュエーションが容易に楽しめるのも、冬ならでは。
今回は、低い太陽光と遊びながら写真を撮るコツについて、お伝えします。

逆光と露出の使い方

  • 【写真01】:サーキットでの逆光の基本は路面を光らせ被写体をシルエットにする事

まずは、わかりやすい「逆光線」の使い方から考えていきます。ことサーキットに関して言えば、逆光は路面を光らせ、マシンをシルエットにするのが基本です。

【写真01】は太陽、被写体、撮影者が一直線に並ぶことで、路面の照り返はより強くなりシルエットとなった被写体を強調する事ができます。

ここで注意しなければならないのは“露出を開け過ぎないこと”です。
マシンの区別がつかないくらい絞って、路面の光った部分を飛ばさないことが重要になってきます。そしてできるだけ、光った路面の中に車を収めることです。

  • 【写真02】:S字カーブのようなシチュエーションなら路面を主役にしてもOK

路面に露出を合わせることで全体が締まり、より緊張感のある写真に仕上がるはず。露出を絞ることで【写真02】のようにマシンを主役にするのではなく、路面の表情を主役にした表現も楽しめます。

  • 【写真03】:路面光らせバックを落とすのは最強のシチュエーション

【写真03】のようにバックをシャドウにすることで、全体的に引き締まった作品となるでしょう。
たとえ黒いマシンであってもルーフやドアにラインライトが入るので、バックの黒と同化してしまうことはありません。“勇気を持って絞る事”が、逆光の写真を成功させる秘訣です。

低い光を利用した撮影方法

  • 【写真04】:低い光を利用してクルマのラインを出していくのも冬ならではの手法

  • 【写真05】:車の正面からの光を利用して見せたい部分を強調した写真

逆光の次は、“低い光”を有効に使う方法です。太陽の位置が低いのが冬の特徴ですから、陽の当て方を考える事でクルマのフォルムや、強調したい部分をより際立たせましょう。

GTカーのようなクルマは、車の持つ美しさを強調させます。フォーミュラカーでは、ドライバーのヘルメットを強調させるのも面白いと思います。

【写真06,07】: 長く伸びた影を利用して被写体を際立たせるのも冬ならでは

また陽が低いと影が長く伸びてくるので、その影を上手に使いましょう。
【写真06,07】は木漏れ日をうまく利用して、ドライバーを強調させた写真です。

関口選手の写真は日陰に入っていく写真なので、クルマのフロント側が影になりコックピットが強調されます。
平川選手の写真は、ちょっと特殊なシチュエーションです。この写真は、鈴鹿の逆バンクで撮影したもので、長く伸びた看板の影の隙間に、ヘルメットが来る瞬間を狙ったものです。

このシチュエーションでは、コックピットのみに光を当てる事が可能となり、よりドライバーにフォーカスした作品作りが可能になりました。

サイド光をうまく使う

  • 【写真08】: 車のプレスラインや凹凸も低い光なら出やすい

  • 【写真09】: コックピットに光が入ればドライバーの表情まで見えることも

最後にサイド光ですが、これも冬ならではの光です。前記した「低い光の当て方の方向」を変えるだけで、全く違った表現が可能になります。

先程は、クルマの前方から光を当てる表現を説明しましたが、斜め前やサイドから当てると【写真08】のようにクルマの凹凸が出やすくなります。

そして半分影になることで、容易に雰囲気の良い写真を撮る事ができるのです。そして副産物的にコックピットに光が入り、ドライバーの表情まで見えることもあります。

このように低い光を使える冬は、良い作品が撮れる可能性が跳ね上がります。
今後も各サーキットで、イベントやレースが沢山開催されます。お目当ての選手やクルマを、より一層綺麗に撮るチャンスです。

多少寒いと思いますが、防寒しながらぜひ撮影に出掛けてみてください。

(文、写真:折原弘之)

折原弘之 プロカメラマン

自転車、バイク、クルマなどレース、ほかにもスポーツに関わるものを対象に撮影活動を行っている。MotoGP、 F1の撮影で活躍し、国内の主なレースも活動の場としており、スーパー耐久も撮影の場として活動している。また、レース記事だけでなく、自ら企画取材して記事を執筆するなどライティングも行っている。

作品は、こちらのウェブで公開中
https://www.hiroyukiorihara.com/

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