賢治の学校 綾

綾には日本一の照葉樹の森などの雄大な自然が残されています。この環境の中で自然農を中心に学ぶ学校作りをingで行っています。人間に備わっている喜びを大事にした学びの場作りを行っています。いい汗でいい笑顔に!!


宮沢賢治 童話集vol.4

2008年7月6日

宮沢賢治 童話集vol.5

〔やまなし〕より

 

 

 

 

 

『クラムボンはわらったよ。』

 

『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』

 

『クラムボンは跳(はね)てわらったよ。』

 

『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『クラムボンはわらっていたよ。』

 

『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』

 

『それならなぜクラムボンはわらったの。』

 

『知らない。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『クラムボンは死んだよ。』

 

『クラムボンは殺されたよ。』

 

『クラムボンは死んでしまったよ・・・・。』

 

『殺されたよ。』

 

『それならなぜ殺された。』  兄さんの蟹は、その右側の四本の脚の中の二本を、弟の平べったい頭にのせながら云いました。

 

『わからない。』  魚がまたツウと戻って下流の方へ行きました。

 

『クラムボンはわらったよ。』

 

『わらった。』

 

 

 にわかにパッと明るくなり、

日光の黄金(きん)は夢のように水の中に降って来ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お魚はなぜああ行ったり来たりするの。』

 弟の蟹がまぶしそうに眼を動かしながらたずねました。

 

『何か悪いことをしてるんだよとってるんだよ。』

 

『とってるの。』

 

『うん。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうしたい。ぶるぶるふるえているじゃないか。』

 

『お父さん、いまおかしなものが来たよ。』

 

『どんなもんだ。』

 

『青くてね、光るんだよ。はじがこんなに黒く尖ってるの。

 それが来たらお魚が上へのぼって行ったよ。』

 

『そいつの眼が赤かったかい。』

 

『わからない。』

 

『ふうん。しかし、そいつは鳥だよ。かわせみと云うんだ。大丈夫だ、安心しろ。

 おれたちはかまわないんだから。』

 

『お父さん、お魚はどこへ行ったの。』

 

『魚かい。 魚はこわい所へ行った』

 

『こわいよ、お父さん。』

 

『いいいい、大丈夫だ。心配するな。そら、樺の花が流れて来た。

 ごらん、きれいだろう。』

 

 泡と一緒に、白い樺の花びらが天井をたくさんすべって来ました。

 

『こわいよ、お父さん。』  弟の蟹も云いました。

 

光の網はゆらゆら、のびたりちぢんだり、

 

花びらの影はしずかに砂をすべりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのつめたい水の底まで、ラムネの瓶の月光がいっぱいに透きとおり

天井では波が青じろい火を、燃したり消したりしているよう、あたりはしんとして、

ただいかにも遠くからというように、その波の音がひびいて来るだけです。

 

 蟹の子供らは、あんまり月が明るく水がきれいなので睡(ねむ)らないで

外に出て、しばらくだまって泡をはいて天井の方を見ていました。

 

『やっぱり僕の泡は大きいね。』

 

『兄さん、わざと大きく吐いているんだい。

 僕だってわざとならもっと大きく吐けるよ。』

 

『吐いてごらん。おや、たったそれきりだろう。いいかい、兄さんが吐くから

 見ておいで。 そら、ね、大きいだろう。』

 

『大きかないや、おんなじだい。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そうじゃない、あれはやまなしだ、流れて行くぞ、ついて行って見よう、

 ああいい匂いだな。』

 

なるほど、そこらの月あかりの水の中は、やまなしのいい匂いでいっぱいでした。

 

 三疋(びき)はぽかぽか流れて行くやまなしのあとを追いました。

 

 その横あるきと、底の黒い三つの影法師が、合わせて六つ踊るようにして、

山なしの円い影を追いました。

 

 間もなく水はサラサラ鳴り、天井の波はいよいよ青い焔をあげ、やまなしは

横になって木の枝にひっかかってとまり、その上には月光の虹がもかもか

集まりました。

 

『どうだ、やっぱりやまなしだよ、よく熟している、いい匂いだろう。』

 

『おいしそうだね、お父さん。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 親子の蟹は三疋 自分等の穴に帰って行きます。

 

 波はいよいよ青じろい焔をゆらゆらとあげました、それはまた金剛石の粉を

はいているようでした。

 

 

 

 私の幻灯はこれでおしまいであります。

 

 

 

 

 

賢治の学校・実習生  緑

 

 

 

 

 

 

 


コミュニティ特集「ふるさと自慢

あなたの住む町や村、故郷の魅力をブログに書いてみませんか?

あなたもテーマ「ふるさと自慢」でブログを書いてみませんか?

このテーマのブログをチェック

このテーマのブログを書く

2008年7月6日 6:15

コメントを投稿する

※は必須項目です。   ※はじめて投稿される方は、こちらをご覧ください。

ニックネーム
メールアドレス   
URL  
コメント
(全角500文字以内)
 
パスワード   

投稿する

トラックバック

この記事に対するトラックバックURL:

  ※はじめて投稿される方は、こちらをご覧ください。

宮沢賢治 童話集vol.4


<<  October.2008  >>

SMTWTFS
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 

カテゴリ

  • カテゴリはありません。

九州地区限定 Gazoo mura応援企画 ムラの笑顔に会いに行こう!キャンペーン

TOYOTA METAPOLIS

TOYOTA METAPOLIS

TOYOTA METAPOLIS




山村

 


拍手する


アクセス数

79958pv


お気に入り登録ユーザー数

10Users    


最新の記事一覧


最新のコメント一覧