「生命」vol.1 文 白川静
雑誌「風の旅人」第6号より

「 いのちとは、い(生)のち(霊妙)である。

生命ほど、霊妙なものはない。

遠くはるかな時代に、海底の藻くずの如くにして、生命がうまれたという。

しかし無機的な世界からどうして生命が発生するのかという根本の問題は、
今日においても解決されていない。

あらゆる生命体に先がけて、どうしてあの巨大な恐竜の時代があったのかも、
明らかではない。

人が生まれてからはまだ数十万年、そのころこの地上には、おそらく、
今日とあまり変ることのない生命が、みちみちていたであろう。

そしてそれぞれのDNA は、すでにその壮大にして複雑を極めた体系を
成就(じょうじゅ)していたであろう。
あとはいくつかの、突然変異を待つだけである。
すべては与えられた世界、所与の世界である。 」
(つづく)
賢治の学校・実習生 緑