想い出のジェミニと私とフィールダー
三つ子の魂百まで、と申しますが、
クルマにも何かしら当て嵌まるものはありそうです。
私の最初の車は、いすゞのジェミニでした。
型で言えばJT190。ハッチバックのロータスバージョンで、1600ccの4XE1ツインカムエンジンは、135馬力を搾り出していたと記憶しております。
8000回転まで優に回るエンジンで、車重も960kgという軽量なものでしたから、そんなパワーでも走り出せば大層面白く、またロータスの名前や、レカロやモモステ等の豪勢な室内など、心踊る様々な要素がわんさかと盛り込まれており、不満を覚えるようなことなどありませんでした。
強いて言えば電装系の日本車らしからぬ信頼性だとか、手放すきっかけとなった「まっすぐ走っていて急に砕け散るリアガラス」を筆頭に、ちょっと素敵なトラブルが続いたのが問題といえば大問題ではありましたが。
ジェミニに乗っていた当時は、マイナートラブルには悩まされましたが、それでもとても楽しかったものです。
夏の時期にエアコンが壊れたり、雨漏りがあったりとしましたが、まだ若かった、ちょっとやんちゃだった時分、自分の車でどこかに出かけられる、というただそれだけの事で十分幸せでした。
乗り心地や使い勝手、絶対的な速さよりも、想い出を含めた様々なものが、私にとっては掛替えの無い大切なものだったのです。
私の車に対する価値の基準は、今でもあのジェミニにあるのでしょう。
大排気量、大パワーの車には左程興味が持てません。
また世間一般で車好き受けすると言われる、ドイツ車の重厚な乗り味やイタリア車の官能的なフィーリングは、良いものであるのは解るのですが自分には合わないと思っています。
今では走って遊ぶ為の車と、普段の足としての車の二台を持つ、という贅沢が可能な環境にあり、純スポーツのセブンがいる以上、私は足車にそこまで走りのスペックは求めていません。
だからこそエスティマやプログレのような快適な車を選んでいたわけですが、満足しながらもどこかしっくりこなかったのは、きっと最初にジェミニに刷り込まれた価値観との相違だったのだと思います。
初めてフィールダーを運転した時、「ああ、帰ってきたなぁ」という、ちょっと不思議な気持ちになりました。
フィールダーの軽い車重には必要十分プラスアルファのパワーを、マニュアルシフトで思うように使いきる。
振り回してみるとボディはちょっと頼りないかな、と感じますが、もともとそういう車ではないのですから問題ありません。
そう思えることが、ジェミニに乗っていた頃と今の私の差なのでしょう。
あのジェミニは廃車にしてしまったため、もうこの世には在りません。
しかしその当時の思い出にと、キーだけは大切に保管しています。
フィールダーと私の過ごす時間が、ジェミニと同じように車との接し方を決めるような大きなものになるのかどうか。
それは車の持つ個性や性能よりもむしろ、私がフィールダーでどのような時間を過ごしていくのか。
決してステータスシンボルになるような車ではありません。
だからこそ私には、フィールダーと過ごす時間が、とても大切なものに思えるのです。