Water Land
田植えの前の、静かなひととき
今の季節、私たちの住む谷では、ちょっと不思議な光景が見られます。昨日までは畑であったところが、突然巨大な湖と化すのです。
今は、田植えを前に農家が一斉に田んぼに水を入れる時期。冬の間畑であった場所に、山から滔々と流れる川の水を、次々に引いていくのです。
川上の棚田の方から順番に、水が満ちていきます。早苗が植えられるのを待っている状態の田んぼ。まるで、陸地に忽然とあらわれたオアシスのよう。
谷をぬけてくる初夏の風が、水面に美しいさざなみを作ります。そして風のない時には、大きな鏡のようになって青い空や周りを取り囲む山々を映します。
この時期、月の輝く夜の道を行くならば、田舎の明るく大きな月が水面に映り、それはそれは幻想的な世界が繰り広げられます。子供たちがいるようになって、とんと夜のドライブを楽しむことがなくなったのが、ちょっぴり残念です。
もうまもなく、我が家の前の道にも忙しく田植え用の車両が行き来するようになり、谷は一気に活気づきます。
その前のほんのひとときの静けさの中、私も憩いの水際に、心を潤わせてみたいと思います。