甘玉子小話 (二)
いつになったら出てくるのやら?
甘玉子って、いったいなんじゃい!
「やっと全部(料理)あがってしもうたかい。今日は人数の割りにはお酒があがらんかったねー。」
「女将さん、今日は女の人が多いきんですよ。」
ガチャガチャと茶碗がぶつかりながら世間話をしながらの茶碗洗い。
いつもの光景・・・。
「今日も・・・ウン、残っちょらんね。」
お客さんの食べ残りを確認するのも栄の大事な仕事のひとつである。
「板さん、おつかれさん。今日もお客さんは喜んでくれたごつぁるばい。」
「ほんなこつ、ばされ喜んじょったばい。ここん板さんは腕がよかーっち、言いよった。」
仲居さんたち、板さん、女将さん、小さい調理場にみんな集まり、話ながらの片付けが日々の日課。
毎日が反省会であり、連絡会であり、ほんの少しのお小言がある。
「はい、おつかれさん。今日もたいへんやったけど無事に終わりました。また明日もせわしいかもしれんばってん、頼んじょくばい。」
「サッコさん、もうちょっとお客さんに気ー使わんといかんばい。」
「・・・はぁぃ・・・。」
「・・・。」
「でも、最近なんかお客さんを迎え入れる時、おかしいったいねー。」
「・・・。」
「みんなも気がついたら教えてね。じゃ、これで、はい、おつかれさんでした。」
調理場から次々と人がいなくなっても栄は伝票整理に、明日のための最終チェックにと余念がない。
最後に火元をしっかりと確認して栄の仕事はようやく終わりを見る。
「ふー、やっと終わったねー。」
「おっ、おつかれさん。」
栄の一番の理解者、この湯元屋旅館の社長、兼夫の金衛門である。
代々続く湯元屋旅館を大事に、堅実に守ることを第一に考えるまじめなのんびり屋。
どちらかというと馬鹿がつくほどの正直もんであった。
でも栄にとってはそののんびりなところも馬鹿がつくほどのところも悪くは感じないようで、二人で地道にこつこつとその代々の教えを守ってきた。
「ねー、あんた。お客さんを迎え・・・」
「またその話か。お前はよーお客さんのこつば考えてくれるばってん。ちーったー違うこつば考えんと頭が痛ーなるばい。まっ、ありがてーつばってんたい。」
「でんがたい・・・」
「わかったち、俺もずーっと考えよるばってん、思いつかんとたいねー。」
「私もなんかが違うっちゅうだけで、はっきりじゃないもんだけんねー。」
「まー良かたい。ちょっと待っちょけ・・・。」
金衛門はそう言うと計算している手を止めて調理場のほうへ・・・。
「ほい、お待たせ。」
金衛門は栄の好きなちょっと熱めな燗のお酒とこれまた好物の湯豆腐をそっと出した。
「これしか作りきらんばってん。」
と、言いながら・・・。
「・・・。」
金衛門は料理が上手なわけではない。
むしろまったく出来ないと言ったほうが早い。
でも栄の好むこの熱燗と湯豆腐だけはよく作るだけに、上手に作ることが出来るようになった。
それに作るときの、その時々のタイミングが絶妙なのだ。
「うまいやろ・・・。」
「おいし・・・。」
しばし、金衛門の自慢の熱燗と湯豆腐の素人講義が続き、黙って栄が聞いている。
毎回なのでうざったいようだけれども、音楽のように耳に届いていて栄にはそうまんざらでもないようだ。
お酒も入り、口も滑らかに、さんざんいろいろとしゃべった後に。
「さっ、明日も早ぇーばい。いろいろ考えることもあるやろうけど、一人で考えちょってもしょうがねーばい。明日あたり、時間作って川向こうにお茶飲みに行ってこい。」
「そーねー。」
「そげんしない。さっ、寝るぞ。」
金衛門のいびきがうるさいといつも思いながらすぐに寝てしまう栄が、いつものように元湯屋旅館の中で最後に床に入った。
次号へ・・・。
なぜにこう書くことになったかというと、写真がアップできないから・・・。
なぜにできない・・・。
でも甘玉子のお話は続きます・・・。