杖立温泉まつり屋

杖立温泉の旅館からお届けする、あったかブログです。

小国ブログリンク:【オグニを田舎と思ってないオーリー】


復活!

2008年1月16日

甘玉子小話 (六)

杖立温泉小話集?のひとつ・・・。
みなさん、軽ーく読んでくださいまし。

 

 

「さて、頃合いですよっと。」

金衛門自慢の「湯豆腐」が出来たようだ。

栄もこの楽しみの時には少々仕事を早めに切り上げる。

「先生はまだね。」

「うん、まだ来ちょらんぞ。始むるか。」

「そろそろやろばってんね。・・・!、あー良かー匂いのすっ。今日は柚子入りね。」

「おっ、っそうたい。」

「先生は早よせんかいねー。」

「そげん忙がんでん、なーんも逃げちいかんち。」

っと・・・。

「良かかい。」

スーっとふすまが開く。

「待っちょりました。どうぞ、どうぞ。」

「あーえー匂いのすっねー。なんね。」

「今日はいつもん湯豆腐ばってん、柚子ば入れちょります。」

金衛門がもうすでに少々鼻を膨らませている。

「そりゃいいねー。」

「なら、始めますか。」

 

ウマの合う3人が揃い、帳場のこたつと手火鉢とで暖をとりながら特別な時間が流れる。

いつものようにほんとかうそかわからない先生の近況をおもしろおかしく目を細めながら聞いている栄の顔。

鼻を膨らませながら毎回同じような素人料理の自慢をする金衛門の顔。

酒を飲むと茹蛸のように真っ赤にしながらおしゃべりの止まらない自称先生の河本の顔。

と、

「女将。」

いつも時が経つのを忘れてしまうのだが、今回はちょっと違う。

「さっき私に尋ねたいことはなんっだったんね。」

河本が尋ねる。

そこで栄が最近の玄関での違和感を話始めた。

それが、はっきりとしないこと、玄関では感じるのだがその他の場所ではその感覚が薄れること、感じ始めたのは最近で昔は感じなかったこと、「瀬音荘」の袖もおなじようなことを言っていたこと等、全てを河本に話した。

ついでに毎日相談しすぎて、金衛門が閉口していることも・・・。

河本も最初はニコニコと聞いていたのだが、その栄の真剣な口調に合わせるかのように目を瞑り頷きながら聞いていたが、その話が途切れると、

「大体の内容はよー解った。でん、はっきりとせんとやけんなー・・・。瀬音荘の女将も同じことを・・・。なら、間違いはなかろ・・・。ぶちぶち・・・。ぶつぶつ・・・。・・・。」

と念仏のようにつぶやき始めた。

栄も金衛門も耳をすませて聞いているが、一向に何を言ってるのかわからない。

その河本のつぶやきが長い時間続く。

次第にそのつぶやきが大きくなり、頭の中に箇条書きするかのようにはっきりと話し始める河本を見て二人は、普段は柔和でどちらかというと間の抜けたように見える人間がだんだんと凛々しい表情に変わる様を見て、河本が先生と云われる所以、それから凡人ではないことを感じざるを得なかった。

そして・・・、

「うん、わからん。」

「・・・はぁ。・・・。」

「なぁ、女将。私もいろんな経験を積んでおるつもりじゃが、旅館業には手を出したことがなか。それにあんた達ゃその専門じゃなかね。それでもわからんもんに私がわかるわけなかろうもん。」

「そりゃそうですけどねー。でも・・・。」

「うん、でんな、さっきから女将の言うことを整理しながら考えると昔はなかったらしいから、いつの頃なのかをまず考えるこっちゃね。それから瀬音荘の女将の意見とも共通していることからお客さん全体の事柄であると判断するが如何なもんかね?そして私には玄関で他と同じように感じんたんかね。」

「いえ、先生にはそれがいつもないんですよねー。」

「そうかー、私にはないと・・・。女将、要点をまとめると時期、お客さんの様子、それから他のお客と私の違うところ辺りから考えにゃいかんかもねー。」

「はい・・・そうしてみることにしましょ。あらあら・・・。」

栄と河本の推理を子守唄に金衛門は一足お先に船を漕いでる。

「じゃ、先生また明日ということで・・・。」

「そうじゃね。でん、あいかわらずあんたーお客んこつば考えてくれちょるとやねー。ありがたいこったい。」

「先生、逆ですよ。うちん旅館にこげん常連さんが増えたつはいつ頃からやろうか・・・。」

「・・・!先生、ちょ、ちょっと、先生、こん頃ですばい。さっきんとん話は・・・。あらー、こら眠られんごつなったばい。なんか紐が少し解けたごたる。」

「まー今日は遅いき、寝ながらゆっくり考えない。ちょっとは進歩したじゃなかね。

「あらほんと、こげな時間。先生、明日も名探偵で頼みますばい。」

「ほいほい、ほんなら明日な。」

 

気がつくとこんな時間になることはしょっちゅうだが、今夜は栄の一人の時間が続きそうだ。

簡単に片付けを済ませると床に就き、目を閉じた。

「よかったたい。ちょっと進んで・・・。そげん根をつめんでいいけん。ゆっくり考えればいいたい。又明日、又明日・・・。」

金衛門は半分起きていたようだ。

「そうですね・・・。」

「はい、おやすみ・・・。」

 

湯元屋旅館の玄関にある柱時計が刻を告げた。

・・・が、栄にはもう聞こえてはいないようだ。

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


コミュニティ特集「ふるさと自慢

あなたの住む町や村、故郷の魅力をブログに書いてみませんか?

このテーマの投稿募集は終了しました。

このテーマのブログをチェック

2008年1月16日 22:48

コメントを投稿する

※は必須項目です。   ※はじめて投稿される方は、こちらをご覧ください。

ニックネーム
メールアドレス   
URL  
コメント
(全角500文字以内)
 
パスワード   

投稿する

トラックバック

この記事に対するトラックバックURL:

  ※はじめて投稿される方は、こちらをご覧ください。

復活!


<<  December.2008  >>

SMTWTFS
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   


九州地区限定 Gazoo mura応援企画 ムラの笑顔に会いに行こう!キャンペーン

TOYOTA METAPOLIS

TOYOTA METAPOLIS

TOYOTA METAPOLIS




アクセス数

446026pv


お気に入り登録ユーザー数

9Users    



最新のコメント一覧