甘玉子小話 (八)
途中、まつり屋の個人的な忙しさで中断が多くなっています。
ごめ〜んの。
「袖ちゃ〜ん。」
「はいはいはいはい、その顔はわかったごつぁるね。」
「ふーん、そういうあんたも考えちょったごつぁるね。」
「う〜〜ん、やっとね。」
「どげした。」
「話したかとばってん、こりゃ二人の問題じゃなかばい。だけん久しぶりに女将んみんなば集めちから話そうばい。」
「そうな、なら久しぶりに“じゅん”に集合たい。ばってん、なんな、わくわくするな。」
「なら、頼むばい。1時にな。」
杖立温泉、ど真ん中に筑後川の源流が流れ、1,2km谷間に24件の旅館がひしめき合って、競い合って、それでもけんかしながらでも仲良く商いを受け継いで、たくさんのお客様に愛されながら日々が流れていく。
その24件の女将衆が集まるということは滅多にあるもんじゃなかったが、老舗旅館の女将、栄の掛け声にそれぞれなにかしらの疑問符を持ちながら、みんなで温泉街の中心にある“じゅん”に集合した。
「ここは相変わらず狭かねー。」
「あんたが大きかけんたい。」
「ほんなこつ、ほんなこつ。」
「はーいはい、みなさんお集まりのごつぁるね。それじゃ、栄さんお願いします。」
「ありがと。では、改めまして・・・。」
「なんな、そげんあらたまっちから、どげしたつな。」
「うん、こん前からな、玄関にお客さんが到着した度に、どうしてもなんか違和感があったとたい。そりがずーっと心にひっかかちょったつたい。ばってん今日、何の気なしにたまたまわかったったい。」
栄は以前はお客様がバスを利用して来泉していたことが最近、自家用車が増え、温泉街周辺の道路事情が悪いためにお客さんが疲れ果てて到着することをみんなに話した。
「そうねー。そげ言や確かに最近お客さんが着いたときに疲れた顔ば見るたいねー。」
「お客さんのことにゃ、なんでんわかっちょるつもりやったばってん、こりゃしもたねー。」
いろいろな話が女将の間で話し合われたところで袖が一言。
「それで、栄さんと少し話したとばってん、あぎゃん疲れてもお客さんがこん杖立に来てくれるとにこのまま放っておいちゃ女将が廃るって話たいね。疲れたときには何んがほしかね。」
「・・・疲れたときねー。・・・甘いもんかねー。」
「ほい、それたい、それ。」
「で、みんなにお願いしたいのはお客さんが着いたときにお茶ば入れるやろ、そん時になんか甘いもんば出してほしかって思いよるとたい。」
「甘いもんて、なんでん最近高こーなりよるやんね。特に砂糖は高っかばい。」
「だけんたい。みんなに集まってもらったつは一緒にそこば考えてほしかったったい。」
「・・・。」
「ちょっとみんな、途中で悪かばってんついでに聞いてほしかこつのあるとたい。」
栄はだんだんと温泉地を取り巻く環境や状況が難しくなってきていることや他の温泉地ではその地域全体で地域を盛り上げる取り組みをしていることを例に挙げ、今のうちになんとかしないといけないと話始めた。
また、袖も栄と同じくこの集まりをきっかけに“杖立温泉女将の会”の発足をと考えていたことを話した。
「いいたいね。若っかあんたたちががんばんない。みんな依存はなかね。」
この中で最年長の女将、清がまとめると全員が一同にうなずいた。
「で、肝心の甘かもんはどげすると?」
「・・・。」
「ぷ、ぷ、ぷでん・・・。」
「な、なんな?」
「いや、・・・よかです。」
「じゃなかたい、栄さん、ぷ、なんな?」
「いや、うちにお客さんで来ちょる河本先生ちゅう人が仏蘭西の国のお菓子で杖立で出来るっちゃないかと前話しちょったけど・・・、こんなことになるんならようと聞いちょけばよかったー。」
「今、おるとな?」
「まだ帰っちょらんかったらね。」
「なんな、早よー呼んできないよ。」
栄は河本を急いで呼びに戻った。
「先生、先生、なんやったかね?ほら、ほら、ぷれんじゃなか、ほら、ぷーなんとか?」
「はぁー?そげ急いでどうしたね。落ち着きなさい。」
「先生、前、私に話してくれた仏蘭西の・・・。」
「あープデングね。」
「そうそう、私が横浜にいたときねー。友人のところにいたお手伝いがお菓子作りの名人でねー。とろとろのふわふわ。甘くて美味かったねー。」
「でなんで杖立で、って話になったとですかね?」
「なんでやったかいな?」
「先生、大事なこつばい。まーよかばい、はい行くばい。」
「はぁ、どこに?」
「良かたい、どこでん。はい、行くばい。先生、行きながらさっきの話、なんで杖立っちいうのを思いださないかんばい。」
「栄さんはなんでんかんでん一緒やねー。」
河本は手を引っ張られ、背中を押され息も絶え絶えに女将衆の前に連れてこられた。
「栄さん、こりゃいったいどうしたこつね。」
「ここにおる女将みんなが先生の名答を待っちょるとですばい。」
「すごいプレッシャーやねー。」
栄から詳しい事情を聞くと
「やっとお役に立てるような気がしてうれしいねー。そのお菓子はね、プデングといって仏蘭西のお菓子で、作るときに釜の中で蒸し焼きにすることから、杖立温泉名物の茶碗蒸しに似ているよと栄さんに以前お話したことがあったんだ。そうかー、お客さんに甘いものをねー。いいじゃないですか、私もできるだけ協力しますよ。」
「じゃ、話も決まったたい。杖立温泉女将の会の最初の取り組みはお茶菓子作りに・・・。それじゃ、来週、またここに集まりましょ。」
「はい、私は袖さんと先生とプデングっちゅうのを作ってみましょ。ジュンちゃん、手伝ってくるるよね。」
「任してくださいよ。・・・食べるのは。」
「あんた、いいねー。」(全員笑)
次回、ほんとのほんとに最終回。
・・・かな?