陸上自衛隊新型戦車開発の背景5
戦後の戦車3代の軌跡は。
戦後、世に出た日本の戦車は、61式、74式、90式、そして今回の新戦車だが、これらは配備後どの程度改造あるいは改良を受けているのだろうか。
まず61式戦車だが、これは1961年から73年まで約560両が量産配備された。この戦車は装甲防御などいろいろ問題が多い戦車だったが、それでも一応合格点と言うことで2000年近くまで現役にあって活躍した。その間に受けた改良はエンジンの小改良や発煙弾発射機、投光器の装備程度でほとんど能力向上は行われていない。
次の74式戦車は1974年から900両に近い数が量産され現在も数的には陸上自衛隊の主力となっている戦車だ。この戦車も登場当初は姿勢制御、レーザー測遠器、射撃指揮装置などを装備する第2.5世代戦車として注目を浴びたが、その後何ら近代化改装を受けることなく現在に至ってほとんど過去の戦車となってしまった。現代戦には不可欠と言われるパッシブ暗視装置すらなく実戦になった場合戦力的にはほとんど期待できないしろものと成り下がった。
この戦車も一時期近代化を目指して改良試作が行われたことがある。油圧式のサスペンションを持つこの戦車に重量の増加を伴う改良は不可能と言うことでパッシブ暗視装置を組み込んだ射撃統制装置(89式装甲戦闘車のものを流用したと言われている)、サイドスカート、後部起動輪に履帯脱落防止装置、新型砲弾の装備など攻撃力の増加で能力向上を図ろうとしたものだった。
これで1台約1億円の改造費が必要とのことだったが、結局この改良を行うためには予算の問題から90式戦車の装備数を減らす必要があるということで中止となった。確かに改良の範囲の割には価格が高いようにも思うが未だに主力戦車なのだから能力向上は必要だったのではないだろうか。それをしないということはやはり戦うという危機意識がないということなのだろう。
夜間戦闘の映像を見たことがあるが、74式戦車のアクティブ投光器の光が90式のパッシブ暗視装置には太陽のように明るく映っていた。あんなものを実戦で使うことはここにいるから撃ってくれと言っているようなものだ。
そして現在最新の90式も登場以来18年が過ぎようとしているのに信頼性の向上程度の改良だけで戦闘力の向上は何一つ行われていない。90式の問題点は使用する砲弾が旧式で威力不足、車長用スコープが前方180度しか視野がない、C4I機能がない、などが挙げられるがこの程度は比較的容易に改良できることなので今度こそ近代化を行って有効に使って欲しいものだ。
そんな訳で今回の新戦車は74式の減耗更新用として開発したのだろう。財務省は更新というと比較的簡単に予算を認めるらしいので74式に手を着けずに旧式のまま残してその更新として開発したのだろうか。
こんなことを言ったら陸上自衛隊と三菱重工に叱られるかも知れないし、中身は分からないので革新的な新型戦車かも知れないが、どうも外から見ていると90式を軽く、ハイテクで色付けしてそして新しい装甲理論を応用した鎧を身に纏った程度でさほど革新的にも見えない。
予算が取れるからと言って何となく中途半端な新規開発などしないで既存の改良で凌いでもう少し先を見てから作っても良かったように思うがどうなんだろう。まあこれまでは何時も世代の最後から登場だったが今回は先陣を切ってだからそれを評価すべきなのだろうか。しかし各国が改で済ませたことをわざわざ新規開発したように思うが。
この戦車が300両、90式(改であって欲しい)200両、装輪戦闘車100両の合計600両が15年ほど先の陸上自衛隊の機甲戦力だろうか。その頃にはまた戦車の装備定数が変わっているだろうか。