Super Cypha GT1のブログ

滑るな、パナソニックトヨタ。2008年こそは初優勝くらいにしておくか。そして日本最強チームに。


状況によっては重大な局面を迎えかねない来週の株式市場

2008年10月27日

あり得ないことが、(156)

これはフィクションです。実在の人物、団体等とは一切関係ありません。


次に人事課長が出て来たが誰が出て来ても話すことは同じだった。僕は人事の担当者に話したことと同じことを話して最後に自分の意見を付け加えた。

 

「おっしゃることは分かりました。この件については当課としてもさらに調査をしますのでその際はご協力をお願いします。」

人事課長は特に何らの感情を示すこともなく淡々と話を締め括った。それで僕も放免されて自室に戻ることが出来た。

 

何時ものことで話はもう社内に広まっているらしく僕を見て声を潜めて話をする姿があちこちで見られた。どうせ僕が営業君に縛られて調教されたとか、あるいは僕が営業君を襲って縛ったなんて話しているのかも知れない。こうなったら何でも勝手に言うがいい。

 

部屋に戻るとこれまた一人を除いて全員が僕の方を見た。僕を見ないで淡々と仕事をしていたのは株屋の姉御だけだった。この女は感情というものをほとんど表情に出さないという特技を持っているようで、その顔つきから内心を読もうとしても何とも掴み所どころか手がかりさえほとんどなかった。

 

女土方には昨夜大方の話はしておいたが、北の政所様には何も話していなかったので、大まかなことは話さなくてはいけないだろうと真っ先に彼女のところに行った。北の政所様は僕を見ると「社長が呼んでいるわ。」と言って立ち上がった。それで僕はそのまま北の政所様と一緒に社長室に入った。

 

「佐山さん、仕事以外にもいろいろ負担をかけて申し訳ない。今回のことは社として新部門に傷をつけたくないなどという時代錯誤的な組織防衛意識が働いて、対応が後手に回ってしまいあなたにとんでもない迷惑をかけてしまった。今更あなたに直接の深刻な被害がなければ良いという訳じゃないが、とにかくあなたが無事でよかった。

 

事実については確認されたわけではないが、あなたがこんなことでうそをつくような人でないことは僕がよく承知している。二度とあなたにこんなことで負担をかけることのないよう人事措置をするつもりだから今回のことは勘弁して欲しい。

 

いや、ここで勘弁と言っているのはすべてを水に流すという意味じゃなくて社として措置が後手に回ったことを許して欲しいということだ。会社としての落ち度については出来るだけのことはさせてもらうつもりだ。

 

ところでこれはまじめに聞きたいのだけど、今回のことでPTSDなどの精神的な障害は大丈夫だろうか。あなただから間違ってもそんなことはないだろうという者もいるが、精神的なことは場合によっては肉体的な傷よりも深刻な打撃を人間に与える場合が多いので確認しておきたい。」

 

『あなただから間違ってもそんなことはないだろう云々』というところで北の政所様は口を押さえて横を向いた。失礼な女だ、人の不幸を笑うなんて。それにそんなことを言うのはどこのどいつだ。

 

でもこんなことを言ってはそういう症状に苦しんでいる人に申し訳がないが、PTSDなんてなってみたくても僕にはなれそうもない。これが本当の女性が受けた被害ならいざ知らず、大体ついこの間まで間違いなく襲われる方ではなくて襲う方の側にいた人間として、これくらいのことで精神的障害など負っては男としての趣旨が立たない。

 

そういう精神的な打撃を受けるということの大前提には予想外という条件があるのだろう。ところが営業君の場合は明らかに予想の範囲内だったのだから精神的な打撃を受けようもない。

 

それよりももしも彼がさらに強行に目的とする行為に及んで来た時の方が重大な事態を招いていたかも知れない。僕は最後の最後まで抵抗を止めなかっただろうし、その抵抗も半端な手段ではなかっただろうからそれこそお互いに流血の惨事になっていたかも知れない。

 

特に深い考えがあって持っていたわけではないのだが、考えようによってはそれを避けるための護身用スプレーだったのかも知れない。そうだとすればあのスプレーは極めて効果的だったと言うことが出来る。口には出せないが僕は社長の質問にこんなことを頭に浮かべていた。

 

「精神的に何も打撃がないというわけじゃありませんけどあのくらいなら想定の範囲内で生活に支障を生じるような障害はありません。大丈夫です。」

僕がそう答えると北の政所様は社長の方を向いて「ほらね」とでも言いたげに首を一、二回小さく縦に振った。

 

「そうか、それはよかった。せっかくの大事な企画もあるようだし。」

社長は安心したように微笑んだが、本当は僕よりも僕が担当している新しい企画の方が心配だったのかも知れない。僕自身よりも企画を心配されたのにはちょっと気分を害するが、少なくとも経営者たるものそのくらいの打算的な部分がないと情だけではこの厳しい経済環境を乗り切れないので、それでいいのかも知れない。

 

「それでは調査の結果が出るまでちょっと待って欲しい。あとは冴子、じゃなかった、森田室長に何でも言ってくれ。」

社長との面談はこれで終わった。社長は「結果が出るまで少し待って欲しい。」と言っていたが、その日の午後には営業君は人事課付きとなり、併せて後任人事も発表された。

 

営業君が人事課付きとなったということは実際に彼の行為が非として認定されたことになる。会社として公的にどのようにそれを疎明したのかは分からないが、要は僕の言い分を認めてくれたということだろう。これで問題はすべて片付いて大団円かと思ったらとんでもないことが待ち受けていた。


2008年10月27日 0:16

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