薫風
風薫る5月
軒下から滴り落ちるしずくに首をすぼめ
大きく開け放って中庭に出る
すでに大気は膨張の一途だ
なんと言おうと断然たる孤高の輩から恵みを授かろうと両手を広げる
乱反射の視界は一隅の隙間を縫って
大気の中に集束する一方
温んだ池の水面では拡散の舞台芸を繰り広げる
さらに水中奥深くナノ単位までの振動で轟然と差し込む
ここそこに感じられる息吹は確かなものであろう
しかしだ
砂上の楼閣よろしく不如意なものでもある
一陣の突風がその証拠だ
うなじにたまっていたぬくもりなど微塵もない
時には揺らめく陽炎も切り裂かれるカーテンよろしく
断罪され
風前のともし火の一人舞台となる
しかしだ
熾火はかえって自らの肺を大きく膨らませることになる
ふたたび、三度と春への思いは強まり
遠来の綿毛に乗った薫風は土地を席巻し始め
爾来
居を確実なものにする
