「自動車メーカー、ブランドの創業物語シリーズ」の巻(その1)メルセデス・ベンツ
トヨタ博物館ブログをご覧のみなさま、こんにちは。今回より、「自動車メーカー、ブランドの創業物語シリーズ」をお送りします。初回はメルセデス・ベンツです。
■カール・ベンツのベンツ・パテント・モトールヴァーゲン
今から126年前の1886年1月29日、ドイツのマンハイムに住む一人の技術者、カール・ベンツが、ドイツ帝国特許庁に自ら発明したガソリンエンジンを搭載した三輪車についての特許を申請しました。審査の結果、申請日の1月29日付の特許証(特許許可書番号37435号)が発行され、これが現在一般的に自動車の誕生日とされる日です。
トヨタ博物館では、この世界初の自動車となった「ベンツ・パテント・モトールヴァーゲン」(ベンツ特許自動車)のレプリカモデルを所蔵・展示しています。レプリカではありますが、当時の姿を忠実に再現したもので、実際に最高時速約15km/hで走行でき、各種走行披露会等で活躍しています。
ベンツ・パテント・モトールヴァーゲン(トヨタ博物館蔵)
しかしながら、ベンツ・パテント・モトールヴァーゲンは画期的な乗り物ではありましたが、人々からは奇異な目で見られはしたものの、最初から商業ベースにのったわけではありませんでした。
■カール・ベンツの妻、ベルタ・ベンツの長距離旅行(グランド・ツーリング)
有名なエピソードが残っています。この「ベンツ・パテント・モトールヴァーゲン」がなかなか世の中に認められないのを見たカールの妻ベルタは、1888年の夏のある日の早朝、カールがまだ寝ている間に二人の息子のオイゲン(当時15歳)とリヒャルト(当時13歳)を連れて、マンハイムから親戚のある約65km離れたプフォルツハイムまでの世界初の長距離ドライブを敢行したのです。

出典:「The story of Veteran & Vintage Car」
途中、現代の舗装された道とは異なる、でこぼこ道や急勾配の坂の度に車から降りて後ろから押したり、チェーンが伸びて外れたり、ガソリンの管が詰まったりといった数多くの問題に直面しました。燃料のガソリンも、当時ガソリンスタンドなどあるはずもなく、給油が必要な際には街の薬局まで行って“ベンジン”を購入しなければなりませんでした。
ベルタと二人の息子は、疲れ果てて埃だらけで何とかその日の夕方に目的地に到着し、夫カールに「無事プフォルツハイムに到着せり」との電報を打ったとのことです。カール・ベンツは当初この冒険ドライブをひどく心配し、憤慨したそうですが、後の自伝では誇らしげに書いています。やはりうれしかったのでしょう。
なお、その自伝によれば、この長距離ドライブは一般的に言われるように妻ベルタではなく、実は息子達の発案だった様です。
■ゴッドリーブ・ダイムラーの四輪ガソリン自動車
カール・ベンツが「ベンツ・パテント・モトールヴァーゲン」を発明したのとちょうど同じころ、シュツットガルトに住むもう一人のドイツの技術者、ゴットリーブ・ダイムラーも、ベンツに少し遅れて、馬車にガソリンエンジンを搭載した四輪の“自動車”、「ダイムラー・モトール・クッシュ」の特許の申請を行っていました。ほんのわずかの差で、“世界初の自動車”はベンツのものになりましたが、ほぼ同時に、わずか100kmほどしか離れていない場所で、二人は新しい乗り物を発明していたことになります。
この二人、カール・ベンツとゴットリープ・ダイムラーが現在の“メルセデス・ベンツ”ブランドの創始者であり、後に合併するまでは、よきライバルとして世界の自動車界を牽引したのでした。
(続く)