レース実況はむずかしい。
スーパー耐久シリーズのTV中継のために富士スピードウェイに来ました。
某TV局向けの番組制作です。
解説はトヨタチームクラフト代表の平岡寿道さん。
昨年までの解説はGTアソシエーション委員長の坂東正明さん。
このお二人のお喋りによって
どんな中継番組になるかは、ご想像にお任せします・・・・!
このスーパー耐久シリーズはスーパーGTシリーズをだいぶユルくしたような感じですが、
これはこれで、結構緻密で激しいバトルが展開されています。
スーパーGTは500と300の2クラスですが、
スーパー耐久は4つのクラスの混走レース。
ここが曲者です。
しかも、スーパー耐久の番組は2時間枠の録画中継です。
番組開始と共にレースがスタートし、チェッカーと共に番組を終了させるわけには行きません。
CM時間やレース前後の時間を考慮すると、
実質、レース実況の時間は90分前後になってしまいます。
しかし、実際のレースは3時間から4時間。
実質、レースの半分以上は放送上では「カット」になってしまうのです。
こればっかりは仕方ありません。
レースがスタートすると、常時、4つのクラスのTOP3(合計12台)の
位置関係やタイム差などを監視しつつ、
コース上のどのバトルをスイッチングするかを中継車にいるディレクターに指示を出し、
実況アナに喋ってもらいます。
で、これがまた難しいのです。
コース上の何箇所かで同時にバトルが発生している場合は大変です。
4つのクラスはお互いの走行速度が違うので周回数が同じではありません。
しかも、レースカーはコース上のいたるところにまんべんなく散らばってしまいます。
なので、同時には2箇所くらいしか追いかけることができません。
それも、お互いのバトルの位置が離れている場合のみです。
これが近いと、カメラが追いかけ切れません。
しかも、スーパー耐久は2回のピットストップが義務付けられています。
なので、各車のピットも映しつつ、4クラスのバトルを追いかけます。
それも、ちゃんと90分の時間に収まるように。
TVを見ている人が最低限のレース展開を理解できるようにしなければなりませんから。
こんな状態なので、なかなか4位以下のバトルを映すことができないのです。
これはジレンマです。
各チーム、ドライバー、みんな一生懸命、スポンサー獲得に努力して
資金を集めて準備してレースに臨んでいます。
たとえ、上位では無くても
それなりに努力してレースカーを走らせているはずです。
つまり、
それぞれのドライバーやチームにはそれぞれのドラマがあるはずなのです。5位争いには5位争いのドラマがあるのです。
ピットを取材してみると、色々なエピソードを聞くことがあります。
しかし、番組時間は無情にもかなり窮屈。
レースを追いかける以上は、勝者が誰になるのかが最大の関心ごとです。
そして、誰が表彰台に上るのか・・・・・・。
4つのクラスがあれば、表彰台にあがるチームは12チームです。
現状はその12チームのドラマを追いかけるだけで精一杯です。
時には全12チームすら追いかけにれないこともあります。
残念ですが。毎回それがジレンマです。
このスーパー耐久以外にもインディカーシリーズやWTCCなどの番組制作にも
携わっていますが、
インディカーレースなどはオーバルレースだったり
生放送もあったりして、これまた別の課題がたくさんあります。
特にインディカーはピットストップの回数が多かったり
フィニッシュ間際まで接戦が続いたり、コーション(SC)も多いので
レース展開や作戦面のフォローにはかなりの労力を割きます。
しかし、レース中継ではTV画面に映る部分はレースの中のごく一部分です。
サッカーやテニスなどの球技は、とりあえず、ひとつのボールを追いかけていればOKです。
基本的にはボールのないところでは何もおきません。
当然、ボールの無い所をカメラがフォローする必要もありません。
もし、サッカーの試合で使われるボールが一度に10コだったとしたら、
フィールドのそこかしこで攻防が展開されて、
TV中継や実況はかなり混乱するでしょうね。
でも、レースはまさにその状態なんです。
レースは画面に映っている以外とところでも
常に何かしらがおきています。
画面以外のところで起こっているドラマを如何に拾い上げて情報に載せるか、
二次元の画面だけが頼りのTV実況に如何に奥行きを持たせるのか、
これは私の永遠の課題です。
と言うことで、
サーキットにはTVではお伝えきれないドラマがあふれています。
なので、テレビ観戦だけではなく、サーキットに足を運ぶことをお勧めします。
サーキット観戦では視界は限りなく広がります。
TV実況では伝えきれていない多くの事があることに気がつかれるかと思います。
トップから最後尾まで自分の目で追いかけることができますし、
ストップウォッチを持ってゆけば、1周ごとのラップやタイム差などもわかります。
一度、ご自身の目でレースシーンを切り取ってみてはいかがでしょうか。