京都大学 高坂会のホームページ

日本を代表する国際政治学者であり、熱狂的なトラキチ、そして、ちょっとだけタレントとしても活躍された故・高坂正尭先生の門下生(ゼミ生)で作る高坂会のホームページです。会員の交流&情報発信の場として利用させていただきます。世界各地を飛び回っている高坂先生の教え子の近況や今後の日本の針路に関する真剣な議論を公開させていただきます。


高坂先生13回忌に寄せて[高坂節三さん]その2

2008年4月24日

高坂先生13回忌に寄せて[高坂節三さん]その3

高坂節三さんから新しく投稿を頂きましたので、ご紹介します。



兄を思う、その3―アメリカ大統領選挙、パパ・ブッシュの頃

高坂節三

 民主党は、オバマかクリントンで半ば泥仕合を演じています。共和党は昨年まで泡沫候補といわれたマッケイン候補が早々と指名を獲得しています。片や、黒人系か女性か、いずれも今までになかった候補者であり、他方、過去の人だと思われていた、高齢のベトナム戦士、しかも従来の共和党の主流ではない候補が、評判の悪いブッシュと距離を置きながら、虎視眈々大統領の座を狙っています。賭ける金額の大きさも、時間の長さも、マスコミの力の入れ方も世界に例のない選挙活動を展開しています。

 いまから20年前、パパ・ブッシュとデュカキスが大統領の座を争ったことを思い出します。当時、ニューヨークに駐在していた私は、日々激しさを加える「日本たたき」に頭を痛めていました。共和党の有力ロビーイストとは、ある程度良い関係が出来ていましたが、民主党とは、殆ど関係がなく、もし民主党候補者が勝った場合、ますます「日本たたき」が激しくなることを怖れた本社から、大統領選挙の行方を見ながら、民主党有力者へのチャネルを作ることを指示してきました。このため、両党の選挙運動の行方を見つめながら、両党の党大会を直に観察する機会を作ったのでした。

 アトランタで開かれた民主党党大会の前に、カーター元大統領と同じくアトランタを地盤としている、安全保障問題の権威、サム・ナン議員のお宅を訪問する機会を得ました。バス旅行で各州を廻って民主党のPRを努めてきた黒人の宣教師ジェッシー・ジャクソンが大会直前、デュカキスを支援する演説をすることで、民主党党大会は波乱なく進みました。デュカキス候補は、百戦錬磨のベンツェン、テキサス州選出の上院議員を副大統領候補に指名したのです。70ドルをポッケットに入れてアメリカに渡って来た移民のデュカキスは、アメリカン・ドリームを実現できるのは私であると主張し、テキサス州上院議員選挙でブッシュを破ったベンツェンが副大統領に就任してくれれば、鬼に金棒だと言わんばかりの勢いでした。

 他方、レーガン大統領のもとで、カーター時代の低迷を脱却しつつあった共和党は、レーガン大統領の人気が上るのとは逆に、「Where is Bush」という言葉が示されるようにブッシュ候補に対する疑問があちこちで聞こえる状況でした。果たして、ブッシュがレーガンの跡を継いで、大統領になれるかが大きな疑問であったのです。ニューオリーンズで開かれた共和党の党大会をつぶさに見ていた私は、以下のような結論でブッシュが勝つであろうという報告を、本社に言うと共に、兄にも同じ報告をし、両党大会前後の現地の新聞を纏めて兄に送ったのでした。

 「共和党党大会の開催直後、レーガンが登場し、ブッシュ氏が如何に副大統領として、レーガン大統領を支えてくれかを表情豊かに説明し、ブッシュへの支持を要請すると共に、自らの発言を終えるや否や、カリフォルニアの自らの牧場に戻って行きました。その後、多くの支持者の推薦の言葉の後、ブッシュ候補は受託演説をすると共に、副大統領候補に、殆ど無名の40歳にもならないダン・クエールを副大統領候補に選びました。長身で経験豊かそうに見え始めたブッシュと若くエネルギッシュではあるが、やんちゃそうなダン・クエールが並んで立つと「Where is Bush」が「Here is Bush」に変わり、これまた長身のベンツェンに抱えられるように見えるデュカキスが小さく見えた」と。

 後に、兄はあの報告本当に有難う。人に先駆けてブッシュが勝つことを言えたのは、節チャンのお蔭や、と普段褒めてくれることのなかった兄からお褒めの言葉を頂戴したのでした。

 いま、思い起こすと、兄は吉田首相の言葉として「勘」の大切さを主張していましたし、兄がサントリー文化財団の研究レポートを纏めて出した『陽はまた昇るか――挑戦するアメリカ』の中でも、レーガンがカーターを負かした原因の一つに「ABC」(Anyone But Carter)と言う言葉があるが「現代の大衆民主主義国家における選挙は、“イメージ選挙”という性格が強く、したがって各候補者のイメージを表現したキャッチ・フレーズが選挙の動向をわかりやすく説明するところがある」と表現していたから、私の報告を比較的単純に信用してくれたのでしょう。

 蛇足ですが、1989年のブッシュ大統領の就任演説の一部を書いておきましょう。
「America is never wholly herself unless she is engaged in high moral principle.We as
a people have such a purpose today. It is to make kinder the face of the nation and gentler the face of the world」


(コンパス・プロバイダーズL.L.C. ゼネラルパートナー/東京都教育委員)


2008年4月24日 18:39

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