試乗インプレッション ※本車両は2009年、限定100台販売。生産・販売は終了しました。

特別なiQ、「GRMN」バージョンを敏腕ジャーナリストが斬る!

よりパワフルな1.3リッターエンジン、日本のiQにない6速MT、そして特別に用意された足まわり―― マイスターの手で特別に仕立てられた「iQ GAZOO Racing tuned by MN」は、どんな味わいを見せるのか? その走りやデザイン、乗り心地など市販モデルとしての仕上がりは?
さまざまなシチュエーションで世界中のクルマをテストしてきた、3人の敏腕ジャーナリストが、その実力に迫った。

石川真禧照氏

石川真禧照氏

佐藤久実氏

佐藤久実氏

石島下泰久氏

石島下泰久氏

「その見た目にはワケがある」by 石川 真禧照

ワイトパールクリスタルシャインの精悍なボディを、前後バンパースポイラーやサイドマッドガードなどの「GAZOO Racingスタイルパッケージ」で武装。ノーマルの「iQ」より30mm低められたその車高も、ただならぬ雰囲気を感じさせる要因だろう。さらに足元には、ひとまわり大きな16インチの専用ホイール。踏んばった感じが強調されている。

り込んでみれば、ダッシュボード右上に新設されたタコメーターがこの「GRMN」の性格を主張する。ワンポイントの赤が印象的なカバーが与えられたシートは、見た目はもちろん、体をしっかりと支えてくれる。欲をいえば、もっと着座位置が低ければスポーティな気分がより高まるのだが……これはエアバッグなど保安上の理由でNGなのだそうだ。
回のテストはサーキットに限ったものではあったが、スポーツ走行向けに固めたという足まわりもハネることのない落ち着いた挙動、そしてリアに装着されたディスクブレーキの安定感も印象に残った。100台の限定車ということだから、貴重なプレミアムモデルになるかもしれない。

石川真禧照氏

石川真禧照氏プロフィール

“生活の道具”という観点からクルマをテストすることに定評ある、フリーランスのモータージャーナリスト。歯に衣着せぬ評論でも知られる。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)副会長。著書に、『史上最強の外車選び’90』(ロングセラーズ)など。

「キモチ、いい!」by 佐藤 久実

iQ GAZOO Racing tuned by MN」のドライバーズシートに座るや、フィット感にハッとさせられた。聞けば、実はバケットシートではなく“サイドサポート入りのシートカバー”とのことだが、スポーティでファンなクルマをリーズナブルにユーザーに提供したいというコンセプトはこんな所からも伺えた。
6段マニュアルトランスミッションのギヤをローにいれる。アクセルペダルに呼応する軽やかな加速感が気持ちいい。オートポリスのストレートエンドでは、1リッターの「iQ」より10Km/h以上トップスピードが伸びる。が、そんな絶対的な値以上に気持ちよく感じられるのは、300ccのアドバンテージがもたらす滑らかな加速フィールと、専用センターマフラーがもたらす“サウンド”があるからだ。

ーナーでは、ノーマルのiQが穏やかなアンダーステアでアウト側にはらみがちなのに対して、このMNはブレーキング時のスタビリティがアップ、進入では素直に旋回し、フロントタイヤも踏ん張ってくれる。ひとことでいえば、「常に地に足がついている感じ」。オートポリスでは、コーナーへのアプローチ以外、アクセル全開でイケる。
さに、「マイスター・ニュルブルクリンク」の名にふさわしく、「走る・曲がる・止まる」のすべてがバランスよく引き上げられている。手の内に収まる性能を目一杯引き出せる―― そんな、安心感ある楽しさこそ、このスペシャルiQの魅力といえる。

石川真禧照氏

佐藤久美氏プロフィール

学生時代から、耐久レースなど国内外のレースで活躍。数少ない女性レーシングドライバーとして知られる。メーカーが主催するドライバートレーニングのインストラクター、自動車ジャーナリストとしての顔ももち、多くの自動車雑誌やTVなどで活躍中。東海大学非常勤講師、芝浦大学特別講師。

「日常ドライブにもよろこびを」by 島下 泰久

1.3リッターエンジンに6段MTというパワートレイン。実はこれだけで日常の伴侶として付き合ってみたい気持ちが盛り上がってしまった。
iQの1リッターエンジン+CVTは、実用性こそ申し分無いものの、操る楽しさはハッキリ言って希薄だ。けれどMTのこちらは、すべてがドライバーの思い通りでダイレクト。自分なりに工夫を凝らしコツを覚える楽しさもある。そう、なにもスポーツ走行向けというわけではない。MTのおかげでクルマと密度濃い対話ができるから、街乗りですらドライビングのよろこびを堪能させてくれるのだ。心地よいシフトタッチや300ccぶん上乗せされたパワーもそれを大いに後押ししている。

かも足まわりは専用セッティング。ふだん使いの乗り心地は心配無さそうだが、レスポンスは俄然シャキッとした。それこそ十字路を曲がるのだって車線変更だって、これならきっとその瞬間瞬間が歓びになるはずだ。
iQ本来の実用性はそのまま。しかし、単なる移動の時間すら楽しさに満ちたものになる。「iQ GAZOO Racing tuned by MN」との生活には、そんな期待が持てそうだ。

島下泰久氏

島下泰久氏プロフィール

学生時代から自動車雑誌の編集に従事し、1996年からはフリーランスのモータージャーナリスト。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。著書に『極楽ガソリンダイエット』『極楽ハイブリッドカー運転術』(ともに、二玄社)などがある。