自動車メーカーや大手サプライヤー各社が、為替の動向に警戒感をあらわにしている。11月27日、14年ぶりに1ドル84円台をつけた円相場は先週末90円まで水準を戻しているものの、今後も乱高下が続けば業績回復に水を差しかねない。「90円でも苦しいと申し上げたが、85〜86円は非常に大変。個別企業で対応できる次元を越えている」(トヨタ自動車・布野幸利副社長)、「短期的な為替の変動は経営にインパクトがある。どこかで安定してもらいたい」(デンソー・加藤宣明社長)と懸念を示している。昨秋の経済危機で傷んだ財務体質を健全化するには2009年度下半期が正念場。当面は外為市場の動きに神経をとがらせる状況が続きそうだ。
09年度下半期の主要メーカー各社の為替前提は、米ドルが1ドル85〜90円、ユーロが115〜130円。4日時点の88円台で下半期の前提を割っているメーカーもあり、収益の下押し要因となる可能性が強まっている。円相場が1円動いた際に営業損益に与える影響度は現地化や原価低減効果、足元の輸出減により縮小傾向にあり、トヨタは07年度に比べ100億円減の250億円(対ドル)、ホンダも経済危機以前に比べ80億円減の120億円となっている。
しかし、財務の健全化を果たし、中長期の研究開発投資などに少しでも多くの資金を振り向けたい現状では、下半期業績も計画通りの収益改善が急務だ。「第4四半期以降の為替予約はこれから」(ホンダ・曽田浩取締役)というケースもあり、不安定な市場の動きに対する懸念は大きい。
足元の対策としては「費用節減、原価低減しか短期的には打つ手はない」(トヨタ・布野副社長)、「経費の削減や構造改革、国際分業、海外部品の輸入など、これまでの活動の延長線で対応していく」(デンソー・加藤社長)との声が多い。年度内は上半期から取り組んで来た改善活動に集中しながら、事態の推移を見守るメーカーが多そうだ。
トヨタは「伝統的に供給に利益要素を織り込まないで来たが、今後は販売、在庫レベルを見て、利益率をにらみながら、限られた(供給)能力のなかで利益の高い車種に振り分ける。『仕向け先でも利益の高い地域へ厚めに』という要素を入れる」(トヨタ・布野副社長)というように、メーカー各社の意識を変えつつある。このまま円の独歩高が続けば、供給戦略や事業体制の再構築が加速するのは必至の情勢だ。
■各社幹部のコメント
トヨタ自動車・一丸陽一郎副社長「車という商品は世界的に見て(日本製品の)競争力があるので、日本での生産には意味があるが、一般の製品では異なる。日本のものづくりを考えると、為替水準にもあるべきレベルというものがある。トヨタでもモノのつくり方、買い方などで、いろいろとやらなければならない」
デンソー・加藤宣明社長「基本的には現地化をきちんとやっていくしかないだろう。(国内生産の)空洞化もありうるかもしれない。しかし、車という商品が変化するなかで省燃費商品などを幅広く開発し、生産することは雇用の確保にもつながる。先端技術で空洞化を防いでいく」
ホンダ・曽田浩取締役「為替ばかりは読めない。現在はある意味で不幸な状況だ。予約が済んでいるのは第3四半期くらいまで。今後の動きを注視している。トップからは為替も需要も厳しい現状が当面続くと見て体質強化を図るように指示が下っている。今後も対応を加速していきたい」