日産自動車とヤマハ発動機が生産現場の従業員の応受援に関して協議していることが明らかになった。今年度下期以降に国内各地の工場で増産を見込む日産が、ヤマハ発の二輪車工場などで働く従業員を応援要員として受け入れる。双方とも「取引関係が薄い系列外企業と生産人員の応受援を行うのは過去10年間で初のケース」(関係筋)という。自動車産業内で既存の垣根を越えて連携し、雇用確保や人材の有効活用を促進する。日産はヤマハ発を始め複数企業と協議しており、下期に全体で数百人規模を外部から受け入れる方針。ヤマハ発も「並行して他の四輪メーカーと協議中」(同社幹部)で、段階的に人員規模を適正水準に近づけていく。
今回の応受援は、増産に向けて人材を確保したい日産と、雇用を守りながら人員の最適化を図りたいヤマハ発のニーズが一致し、協議が始まった。日産は、エコカー減税の対象モデルの好調により残業や休日出勤を再開した追浜工場や日産車体・湘南工場、「新型フーガ」の立ち上げで繁忙傾向にある栃木工場を候補に応援要員を配置する考え。今年度下期の実現に向けヤマハ発以外の企業とも調整を進めている。
一方、ヤマハ発は先進国市場での事業不振から09年1〜6月期の業績が当初の想定より悪化した。体質改善策として足元の在庫調整を継続することに加え、中長期的に国内生産体制を再編する計画を打ち出しており、国内に1100人の余剰人員を抱える格好となった。
人員規模の適正化に関しては、7月末からトヨタ自動車とパナソニックの共同出資会社「パナソニックEVエナジー(PEVE)」への系列外出向を開始。PEVE向けの出向は約230人を計画している。今回の日産への出向はこれに続く第2弾で、数十人規模となる見込み。今後は「第3、第4の系列外出向を模索するとともに、自社工場間での再配置やキャリア転身プログラムなどを実施し、雇用を守りながら最適化に取り組む」(同社幹部)としている。
◆下期増産に入るメーカー各社、周辺企業の受け皿に
自動車メーカー各社が、回復が遅れる業種や企業の雇用の受け皿となりながら増産体制の再構築を図る構図が鮮明になってきた。9月に岡崎工場を2直操業に戻すことを決めた三菱自動車は、取引先部品メーカーなどとの応受援により人員を確保。「新型プリウス」のヒットや減税対象車の好調で生産が上向くトヨタ自動車も、取引先の設備メーカーから人員の受け入れを開始した。日産自動車とヤマハ発動機による応受援も自動車産業内の雇用確保を図りながら、相互に最適な事業環境を構築する狙いがある。下期以降は、国内生産の拡大につれて人員面の補完体制の構築に動くメーカーがさらに増えると予想される。
自動車メーカー各社は昨秋以降、過去に例のない規模とスピードで減産を実施した。その後、今年5、6月をめどに大半の在庫調整を完了し、ライン停止や非稼働日の設定による生産調整を解除。さらにエコカー減税や環境対応車購入補助制度の効果で国内新車市場が回復傾向にあることを受け、国内工場の操業度を高めつつある。ただ、本格増産には減産に合わせて縮小した生産要員を改めて確保する必要がある。足元で活発化しつつある企業間の応受援もひとつにはそうした背景がある。
ただ、各社がこうした動きを進めるのは、単純な人手不足が要因となっているわけではない。メーカー各社の間には「急激な減産や設備投資の見直しにより、取引先各社に大きな迷惑をかけた」との認識も強い。いち早く最悪期を脱した四輪メーカーに対し、業界内には依然として不振に苦しむ企業も多く、そうしたダメージをグループ内や産業全体で吸収しながら事業基盤を再構築しようという側面もある。
こうした企業間の応受援に関しては自動車総連も「雇用を守るための施策として基本的に前向きにとらえたい」(西原浩一郎会長)としており、今後も実施に動くメーカーが増える可能性が高い。
[2009年8月20日 20時28分 日刊自動車新聞 ]