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連載「12億人の潜在力 熱くなるインドの自動車産業」(中)



 ニューデリー市内で開催された「オートエキスポ2010」。5日から11日まで7日間の会期中、約180万人の来場者があった。特に週末には、家族連れや友人同士などの来場者が目立ち、人気メーカーの展示館には入場待ちの行列ができ、館内は身動きが取れない状態となった。180万人というと、2009年に開催された東京モーターショーと比べ3倍近い来場者。しかも会期は約半分。つまり一日当たりの平均来場者数は東京の約6倍に達する計算になる。

 インド市場で今後、新規の自動車購入層の中心になると見られているのが年収20万〜100万ルピー(1ルピーは約2円)の中間所得層。オートエキスポ会場で話を聞くと、こうした層の人たちが多かった。「月収は1万2千ルピー」と言う33歳の男性は「貯金は少ないが、借金をしてでも3年以内に車を買いたい」と話す。また、「マルチ・スズキ車を2年前に購入した」と言う27歳の男性は「月収が2万ルピーを超えたので、車を持てるようになった」と言う。
 50万ルピー―。実はこの価格がインド市場におけるひとつの大きな基準となっている。
 息子2人、妻との一家4人で来ていた42歳の男性は「韓国車を2台保有している」というが、「50万ルピー以下でいい車があれば買い替えたい。そんな車を探しに来た」と話す。「年収は36万ルピー」という34歳の男性が「この車は間違いなく売れる」と指さしたのは、米ゼネラル・モータースが発表した1200ccのハッチバック車「ビート」。価格は33万4千ルピーで、彼にとって「驚くような値段」だったからだ。さらに、韓国・現代自動車が出品した電気自動車(EV)のコンセプト車に見入っていた55歳の男性は「マルチ・スズキの車を2台保有しているが、もう、ガソリン車は買いたくない。次はEVがいい」というものの、「その車がいくらだったら購入するか」と問うと、「50万ルピーよりも高かったら買わない」ときっぱり。EVが50万ルピーとは少々現実離れしている感もある。
 現地メーカー製の二輪車に乗って会場に来た28歳の男性に日本の自動車メーカーについての印象を問うと、「よく分からない」のひと言。「トヨタ自動車とホンダは」と問い直すと「ああ、知っている」とだけ。すでにインド市場で27年の歴史を持つマルチ・スズキは現地の人にとって“インド企業”と認識されている一方で、トヨタやホンダにとってはブランドの認知度向上がまず最初のテーマになりそうだ。その上で、年末までに発売予定のトヨタ「エティオス」と11年に発売予定のホンダ「ホンダ・ニュー・スモール・コンセプト」では、価格設定が非常に重要になる。それが50万ルピー以下であることは必須条件だ。
 これらのモデルと真正面から勝負する現地製「ポロ」の発売を3月に控えたフォルクスワーゲンの担当者は「価格は未定。競合車の価格設定を慎重に見極めて、2月までに決める」という。期間中、2万人以上の来場者から顧客カードを集め、「価格も含めたニーズの吸い上げに役立てる」と話していた。
 オートエキスポ2010会場では、こうした小型車が注目の的だった。新規の購入を考える人たち、代替を検討するユーザーたちの目は、車の性能よりも、まず第一に価格へと向いている事は間違いない。

[2010年1月14日 21時37分 日刊自動車新聞 ]

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