自動車メーカーの業績改善が加速している。今期の営業利益は上場10社合計で約7千億円の見通し。リーマンショック前の2008年3月期は約4兆7千億円を稼いだが、この3年間で10社の世界販売が340万台減り、20円以上の円高に見舞われた。しかし、原価低減や販管費の削減に総力をあげて“危機脱出”を急いだ結果、10社合計の営業利益は期初見通しに比べ1兆7千億円も改善する。各社は「世の中の環境はまだまだ厳しいという前提を置いている」(マツダの山内孝社長)と警戒しつつ、経済危機でも開発を続けた小型車やエコカーに完全復活への望みを託す。
経済危機が直撃した09年3月期は全10社中6社が営業赤字に転落。今期も当初は6社が赤字を見込んでいたが、四半期決算のたびに上方修正が相次ぎ、現時点で赤字見通しはトヨタ自動車といすゞ自動車、日野自動車の3社に減った。そのトヨタも、赤字幅は期初予想の8500億円から200億円まで一気に縮小。品質問題に伴う2千億円近くの費用計上・減収分がなければ営業黒字も射程内だった。
各社は、決算発表時に前期と比べた営業利益の主な増減要因を公表している。単純に10社の要因を合計すると、台数減や小型車シフトなどによる「台数・構成」と「為替(差損)」で1兆9千億円の減益分を「販管費削減」と「原価低減」の増益分2兆1千億円で埋め合わせ、業績悪化を食い止めた構図が浮かび上がる。「3カ月の営業利益で1千億円を出せる体質になった」(ホンダの近藤広一副社長)、「少々の円高で再び赤字に陥るようなことはしたくない。(国内の工場稼働率は)通年で79%ぐらいだが、このベースでこの利益になった」(マツダの山内社長)と収益回復に自信を見せるメーカー首脳も出始めた。
こうして収益体質を改善させたところへ、販売台数の上積みや金融収支の改善が追い風となった。トヨタは期初計画に比べ販売台数を60万台、日産自動車は40万台、積み増している。10社合計では148万台の増加だ。
ただ、先行きはいまだに不透明だ。新車需要は主要国で販売促進策を打った反動がどこまで出るか読めないし、中国にも不動産バブルなどリスク要因が潜む。来期の黒字化を目指すトヨタの伊地知隆彦専務も「正直、なかなか見通せない」と話す。
しかし、各社は経済危機で投資や経費を絞るなか、エコカーや小型車の開発だけは止めなかった。例えば、日産は戦略小型車や電気自動車の発売が迫る。マツダもパワートレーンを次世代型に刷新、ホンダも人気車「フィット」のハイブリッドを投入するなど、“種まき”の成果が来期以降の業績回復をけん引するとの期待感が出ている。