ブルドーザーが土をならすとクラッカーの炸裂音が田園地帯に鳴り響き、紙吹雪が舞った。チャイナ・プラス・ワンの投資先として脚光を浴びているベトナム。その同国北部のフンイエン省イエンミイ県で11日、住友商事が開発を進める総面積220fの工業団地「第2タンロン工業団地」の安全祈願式が行われた。同社にとって同国内で2番目となる工業団地の開発。雇用機会創出や外貨獲得に対する期待を背負い、開発工事が進められている。
(遠藤 幸宏)
同社はこれまで、インドネシアで「イーストジャカルタ工業団地」、フィリピンで「ファーストフィリピン工業団地」、ベトナムで「タンロン工業団地」の開発・販売を行ってきた。
このうちタンロン工業団地は1997年、ハノイ市内に設立。全体で約280fの開発面積を、三つのフェーズに分けて開発・販売してきた。これまでキヤノンや松下電器産業、デンソーなどの日系企業を中心に82社が入居。2007年9月には第3フェーズの開発を終え、新たな入居企業の工場建設が進んでいる。
タンロン工業団地と入居企業の累計投資額は13億1千万j。さらにタンロン工業団地内から国外に出荷される製品の年間輸出額は15億8千万jで、ベトナム全体の輸出額の約3・3%を占める。また団地内の雇用者数は約3万7千人を数え、工業団地の開発が成功した事例とされている。
ベトナム国内に3工場を有するキヤノンベトナム(景山幸郎社長)は100%輸出企業。売上高は07年見込みが9・5億円でベトナム全体の輸出額の約2・0%を占める。最大生産拠点であるタンロン工場は約8千人の従業員を抱え、インクジェットプリンターなどの組み立てを行っている。
影山社長は、「ベトナムでの生産の魅力は人件費だけではない。従業員が自分たちで什器も工具もつくり、作業も改善できることだ」という。インクジェットプリンターの国内需要はまだないが、勤勉で手先が器用な国民性に加え、人口の60%が30代以下であることから若い労働力が確保できる。日系企業にとっては、コスト競争力があるだけでなく、ものづくり文化を伝えやすい国であるのだ。
だが日本語が通じない国に進出した場合、税制や法律の変更などの情報入手が大きな課題だ。そこで同社は、工業団地の売りっぱなし解消を目指した。タンロン工業団地では毎月1回、入居企業の代表者を集めた情報交換会を開き、総合商社として得たさまざまな情報を公開して各社の活動をサポート。さらに中国・華南地区、タイ・バンコクとのトラック輸送需要も想定して物流会社ドラゴンロジスティクスを設立し、入居企業の物流ニーズにも対応した。
同社はタンロン工業団地の運営手法と成功体験を、第2タンロン工業団地にも取り入れて入居企業の発展の実現を狙う。第2タンロン工業団地の販売は8月頃開始されるが、ハノイ市とハイフォン港を結ぶ国道沿いという立地の良さもあり、すでに入居の見込みがつきはじめている。
ベトナム政府や地元関係者たちの期待を背負った第2タンロン工業団地に、どのような企業が入居し、さらに今後、先行するタンロン工業団地とともに、入居企業がどのように発展していくか注目されている。