製造業派遣の原則禁止に関し、部品メーカー各社が危機感を強めている。「非正規従業員が期間従業員など直接雇用のみになれば、採用コストは一気に跳ね上がる。これまでスリム化してきた総務人事部門の負担も増大する」(日本自動車部品工業会・信元久隆会長=曙ブレーキ工業社長)と事業効率の悪化を懸念している。また中部地区などのサプライヤー首脳が「海外シフトを考えざるを得ない」「日本に代わって海外を生産調整やグローバル供給を行う中核基地として育成する必要が出て来る」と同様の見解を示しており、円高と合わせ生産の海外移管に拍車をかける材料になりつつある。
製造業派遣の原則禁止を盛り込んだ労働者派遣法改正案は、2月中にも国会に提出される見通しだ。法案が成立すれば、自動車メーカーに比べて採用機能が弱くなりがちなサプライヤーは対応に苦慮すると見られている。
これに対し、部品メーカー各社の首脳は「雇用の流動性は経営者にとっても働く人にとっても必要。このまま製造業派遣が禁止になるなら海外との間でバランスを取らざるを得なくなる」(大手独立系メーカー)や、「現状、生産の調整弁を果たすのは国内の役割だし、海外もそこまで実力が追いついていない。中長期的には自動車メーカー各社も国内生産を今より低水準で一定に保ち、海外で柔軟な生産を行えるよう対応を進めるのでは」(ホンダ系サプライヤー)といった見方を示している。
現在、部品メーカー各社は「中長期の見通しが不透明な中で人を増やすのは難しい。間接人員を現場に振り向けて生産増に対応している」(トヨタ系サプライヤー)と、生産変動への対応に知恵を絞っているケースが多い。「新興国に負けないよう改善を徹底するしかない。増産で非正規従業員を採用するにしても、その間に正規従業員には改善活動に集中してもらう」(信元会長)と国内生産維持に前向きな姿勢を見せるメーカーもある。
ただ製造業派遣の禁止には政府関係者も「二次、三次メーカーに深刻な影響があることは認識しているが、現状のままでは抜本的な打開策はない」と漏らしている。改めて国内で柔軟な人材活用を進める議論が交わされなければ、生産の軸足を海外に移す企業はますます増えて来そうだ。
[2010年1月27日 18時48分 日刊自動車新聞 ]