ATの技術革新のおかげで、ギアシフトの面白さを実感する人は、かえって増えているように思う。指先でシフトパドルをシャカシャカするだけで、簡単に変速させてエンジンブレーキを使ったり、エンジン回転を下げて燃費を稼いだり容易に行える。もっとも、限られたパワーを有効に引き出す手段としてなら、今でもATよりMTの方が優れていることは知られている。
とはいえ、MTは操作する楽しみはあっても、クラッチ操作を苦手とする人もいるだろう。最近の技術はエンジンに低速トルクを与え、問題のクラッチ操作さえ“省略”してしまったが、それですべて解決かというと、そうではない。
さて、そこで「MTに乗ってみようか」と思った時、われわれの周囲にはMT仕様が手に入りにくい状況にある、という現実に直面することになる。スポーツカーでさえ、いまどきはほとんどがATなのにも愕然(がくぜん)とさせられる。日本車ならそんなこともないだろうというのは幻想だ。比較的求めやすい価格帯には、「ヴィッツRS」「オーリスRS」「デミオスポーツ」ぐらいしかないのだ。そんな状況の中にあって、「スズキ・スイフトスポーツ」はMT車の旗手として君臨する。
エンジンの排気量は1.6リッターと先代型と変わらず、自然吸気で136ps/6900rpmと16.3kgm/4400rpmを発生する。そして注目のMTギアボックスは5段から6段になった。1速で目いっぱい引っ張って2速に上げると、思ったほどクロスしておらず、回転落差は大きい。「なーんだ」とガッカリすることなかれ。その後が素晴らしいのだ。