スーパーカー今昔物語(後編)

メルセデス・ベンツとマクラーレンのコラボによって誕生したメルセデス・ベンツSLRマクラーレン。アルミとカーボンで構成されたボディーに、626psを発生する5.5リッターV8ツインターボを搭載していた。
最高出力1001ps、最高速407km/hというスペックで世界を驚かせたブガッティ・ヴェイロン16.4。後に、最高出力を1200psに高めたさらなる高性能モデルも登場した。
12Cは、F1世界選手権の名門であるマクラーレンが投入したミドシップのスーパースポーツカー。エンジンは3.8リッターV8ツインターボで、600psを発生した。
2011年のジュネーブショーでデビューを果たしたランボルギーニ・アヴェンタドールLP700-4。0-100km/hは2.9秒、最高速は350km/hを豪語する。
世界499台の台数限定で販売されたラ・フェラーリ。6.2リッターV12エンジンと電動モーターを組み合わせたハイブリッドシステムは、最高出力963psを発生する。

スーパーカーの21世紀は、あたかも20世紀的高性能マシンの軌跡に自らピリオドを打つかのごとき豪華さで、華々しく幕を開ける。

ポルシェ・カレラGTは特異なカーボンボディー&シャシー構造で時代を先駆け、創始者の名を与えられたエンツォ・フェラーリは自然吸気12気筒ミドシップカー最後の跳ね馬にふさわしく、持てるすべての最新テクノロジーが注ぎ込まれていた。

そして、メルセデス・ベンツもまた、SLRマクラーレンという完全フロントミドシップのスーパースポーツをリリース。メルセデスクオリティーを厳しく保ったイージードライブのロードカーでありながら、超高速域においてはレーシングカー顔負けのパフォーマンスを誇るという、スーパースポーツの新境地を開いてみせたのだった。このとき培ったCFRP製ロードカー生産のノウハウが、後に完全オリジナル設計のマシンによるスーパーカービジネスへの参入のバックグラウンドになったことは想像に難くない。

極めつけは、最新技術の走るショーケース、ブガッティ・ヴェイロンの誕生だ。フォルクスワーゲングループの誇る自動車テクノロジーの粋を集めて生産されたこの16気筒ターボのミドシップ4WDロードカーは、驚異の最高速400km/h以上を記録。スーパーカーの最高速争いを、一挙に400km/hの大台にのせてみせたのだった。

ヴェイロンが最高速以外にもうひとつ、スーパーカーに新たな方向性を与えていたことを見逃してはならない。それは、“ラグジュアリー”の追求だ。それまでスーパーカーとは無縁であった“贅(ぜい)”を存分に盛り込んでいたのである。ヴェイロンの登場を起点として、速さと美しさに加え、豪華さもまた、スーパーカーに求められる重要な“憧れの要素”となっていく。

一方、90年代に端緒を開かれたスーパーカーの民主化はこの時期、いっそうの広まりをみせている。アメリカに次ぐ巨大市場・中国の台頭がそれに拍車をかけた結果、高性能で誰もが扱いやすいスーパーカーが時代のスタンダードとなっていった。加えて、いよいよ環境性能と安全性能を無視できない時代が到来しようとしていた。

最新スーパーカーのキーワードは、CFRP、電子制御、ライドコンフォート、ターボエンジン、デュアルクラッチシステム、である。そのすべてを備えてスーパーカー界に革命を起こしたのが、マクラーレン12Cだ。スポーツサルーン並みのライドコンフォートと、ブリティッシュスポーツカーの伝統を受け継ぐハンドリング性能、そしてスーパーカーにふさわしい加速パフォーマンスは、登場していきなり、3000万円クラス=最もコアなスーパーカーのスタンダードとなった。

スーパーカーブランドの雄、ランボルギーニも、CFRPモノコックボディーをもつアヴェンタドールを世に送り出して、カウンタック以来のスーパーカーキングの座を堅持する。そして、ガヤルド後継となる最新モデルのウラカンは、乗り心地の良さやスタビリティーの高さ、ラグジュアリーさでクラス最高レベルに達し、誰もが気兼ねなく扱える史上初の猛牛となった。もちろん、スポーツ性能も一級だ。

スーパーカーの民主化は逆に、さらなる高性能をもち、希少性の高いウルトラスーパーカーの登場を促す。1億円級の限定マシン、マクラーレンP1、ラ・フェラーリ、ポルシェ918スパイダーは世界中のミリオネアによって争奪戦が繰り広げられ、発売前からプレミアムがつくほどの成功を収めている。いずれもモーターを積極的に利用したハイブリッドカーであるという点も時代の流れだろう。

メジャーブランドによるウルトラスーパーカーの成功は、パガーニやケーニグセグといった新興勢力をも勢いづけた。彼らの最新作、芸術性の高いウアイラや、性能至上主義のアゲーラRなどは、さしずめ民主化され過ぎたスーパーカーたちに対する、アンチテーゼなのである。

(文=西川 淳)

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[ガズ―編集部]