【ミュージアム探訪】池沢早人師 サーキットの狼MUSEUM(前編)

『サーキットの狼』の主人公、風吹裕矢のマシンを忠実に再現したロータス・ヨーロッパ。ミュージアムにはこのほかにも複数のヨーロッパが収蔵されていた。
主人公のロータス・ヨーロッパと並んで展示されていた、ライバルたちのマシン。手前が沖田のフェラーリ・ディノ246GT。奥が早瀬佐近のポルシェ911カレラRS2.7。
作中で風吹裕矢がドライブしたものとしては、ランチア・ストラトスの姿も。ちなみに裕矢がドライブしていたのは、イエローのマシンだった。
ロータス・ヨーロッパのルーフには、『サーキットの狼』の作者、池沢早人師氏のサインが。

東関東自動車道・潮来ICを降りてクルマで走ること約15分、のどかな田園風景の中にいきなり現れる「池沢早人師 サーキットの狼MUSEUM(以下、サーキットの狼ミュージアム)」。その建物外観はどことなくキッチュな雰囲気も持ち合わせており、一瞬及び腰になってしまったことを白状せねばなるまい。しかし結論から申し上げると、ここサーキットの狼ミュージアムは、老若男女を問わずクルマ好きであれば、特に1970年代のスーパーカーブームを生で経験した人であれば絶対に訪れてみるべき、素晴らしいミュージアムであった。

土日祝日のみの開館となるミュージアムの受付にて入館料(大人800円、小中高校生400円)を支払い、入口をくぐる。と、そこにいきなり現れるのが漫画『サーキットの狼』に登場した、スーパーカーブーマーとしては知りすぎるほど知っている「あのクルマたち」だ。紙の世界から飛び出し、時を超え、そして超リアルな姿で鎮座している。実物なのだから当たり前だが。

入館してすぐの場所にあるのは、主人公・風吹裕矢の初期の愛車であったロータス・ヨーロッパ スペシャルを忠実(ちゅうじつ)に再現した一台。おなじみのレッドストライプには29個の撃墜マークがペイントされ、リアウイングも完全に「風吹裕矢仕様」だ。それを見ただけでもかなりグッときてしまったが、その隣に展示されている2台を見れば、さらに感極まってしまうのがスーパーカーブーマーというものだ。

裕矢のヨーロッパ スペシャルのすぐ隣には「沖田」が公道グランプリでドライブした黒いフェラーリ・ディノ246GTがあり、そしてその隣には、主人公の最大のライバルであった「早瀬佐近」の、白にブルーのラインが入ったポルシェ911カレラRS2.7、いわゆるナナサンカレラが並んでいる。さらに奥に目をやれば「ハマの黒ヒョウ」のランボルギーニ・カウンタックLP400Sがあり、「飛鳥ミノル」のランボルギーニ・ミウラP400Sなどなど、もう挙げていけばキリがないほど。とにかく紙の中にあった『サーキットの狼』の世界が、すぐそこで展開されているのだ。

記者のようなスーパーカー世代は、このあたりですでに血中少年濃度が著しく上昇すると同時に涙腺が決壊するはず。また当時のブームをリアルタイムで経験していない世代であっても、新鮮な驚きとともにこれらスーパーカーの姿を存分に楽しむことができるだろう。いや、本当に素晴らしい。

このような博物館がなぜ、どのようにできたのか。案内してくれた運営会社の専務取締役、芦川元昭さんに聞いた。

「作者の池沢早人師先生と、こちらを運営している私どもの会社の会長、そして劇中に登場した“潮来のオックス”のモデルになったSさんという方が友人関係にあったことが、すべての始まりでしたね」

えっ、「潮来のオックス」は実在する人物だったんですか!?

(文=伊達正行/取材協力=アニメディア・ドット・コム)

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[ガズ―編集部]