ダカールラリーの“はたらくクルマ” ハイラックスは競技車だけでなくオフィシャルカーでも大活躍!

ダカールラリーは、バイクやクルマ、トラックなど競技車が注目されますが、大会運営を支えるオフィシャルカーも大切な存在です。2009年から南米大陸に舞台を移してから、三菱、フォルクスワーゲンなどの4WDが務めていましたが、現在はトヨタがサプライヤーとして、現在日本でも大人気のハイラックスやランドクルーザープラド、海外専用車で私もプレスカーに乗っているSW4(フォーチュナー)が、活躍しています。
今回はダカールラリーを主催するA.S.O.(Amaury Sport Organisation)で、オフィシャルカーの管理運営をしているディレクターと、メンテナンスを担当している現地トヨタ販売店のチーフメカニックに、オフィシャルカーについてインタビューしました。

トヨタの4WDはオフィシャルに絶大な信頼を得ている

ASO車両管理責任者 フェルナンド アチュディロさん(Fernando Astudillo)
ASO車両管理責任者
フェルナンド アチュディロさん(Fernando Astudillo)

―2010年のダカールラリーからこの任務に携わっています。オフィシャルカーの仕様には2種類のレベルがあり、レベル2が普通車に近い仕様でレベル3が競技車に近い仕様になっています。移動の多くは一般道を走り、多少オフロードを走ってチェックポイントまで行くオフィシャルの乗るクルマがレベル2でチャーリー(Charly)と呼んでいます。そして実際競技車と同じコースを走って事前確認をしたり、撮影をするクルマがレベル3で、インディア(India)と呼んでいます。

ステージのCPやゴールにハイラックスで向かい、テントを立てて待つ
ステージのCPやゴールにハイラックスで向かい、テントを立てて待つ

―トヨタのクルマはダカールのオフィシャルカーとして最適だと実感しています。最適だというのは、ハイラックス、SW4の耐久性、信頼性の高さはもちろんのこと、メカニックのメンテナンス能力の高さ、人間性などサービスも含めてです。ドライバーたちとトヨタのメカニックたちの信頼関係がしっかりしていて、ラリー運営をしっかりサポートできています。

左はハイラックス。右の2台はSW4。夜間走行の多いオフィシャルカーはアクセサリーランプを増設している
左はハイラックス。右の2台はSW4。夜間走行の多いオフィシャルカーはアクセサリーランプを増設している

―トヨタがオフィシャルカーをサポートし始めたときのダカールラリーで、おもしろかった話があります。インディアのドライバーは、フランス人やイギリス人のオフロードドライブのスペシャリストが運転するのですが、彼らに初めてレベル3のハイラックスに乗ってもらったとき「なぜMTでなくATなのか?」と質問されました。彼らからすれば、過酷な未舗装路を今までMTで走ってきて、ATで本当に大丈夫なのかと心配だったようです。しかしドライバーたちが一度乗って競技車と同じコースを走ってみると、その乗りやすさ、耐久性の高さを実感し、疑問が晴れて今は当たり前のようにATに乗っています。

先代モデルのハイラックスもこうして砂丘を走り、競技車が来るのを待ち受ける
先代モデルのハイラックスもこうして砂丘を走り、競技車が来るのを待ち受ける

―そしてトヨタがサポートを開始したときの話をもうひとつ。今までこういったオフィシャルカーのサポートには、たいがい20フィートの大きなコンテナを引っ張りながらトレーラーで部品を運んでいましたが、トヨタは小さなトラック2台でやってきました。これで本当に大丈夫なのかと心配でしたが、結果、ハイラックス、SW4の耐久性の高さから交換パーツが少ないのでこれだけ小さなサポートトラックで十分なのだと実感し、メカニックのスキルと仕事に対する情熱、姿勢がすばらしく期待以上のサービスを受けています。

ディーラーメカニックがダカールラリーを支える

エキッポ テクニコ トヨタ(EQUIPO TECNICO TOYOTA)チーフメカニック ホワン・オラシコ マスさん(Juan Horacio Mas)
エキッポ テクニコ トヨタ(EQUIPO TECNICO TOYOTA)チーフメカニック
ホワン・オラシコ マスさん(Juan Horacio Mas)

エキッポ テクニコ トヨタは、ダカールラリーの主催者にトヨタから提供されるハイラックス35台とSW4 7台のメンテナンスなどをするチームです。(A.S.O.所有のランドクルーザープラドも整備を担当)スタッフはみな、ふだんはサンファンにあるトヨタのディーラーに勤務しています。

毎日10台程度を整備する。1台につき3~4日ごとの計算だ
毎日10台程度を整備する。1台につき3~4日ごとの計算だ

―まずレベル2のクルマですが、事前にロールバーやサスペンションの補強などをしています。これはふだん私たちが鉱山向けに補強などをしているノウハウを活かしています。またレベル3のクルマは、ほぼ純正の状態です。競技車は約9,000kmを走りますが、オフィシャルカーもそれに近い距離をラリー期間中に走ります。メンテナンスはオイル交換やブレーキ点検など日常的な作業に加え、ラリールートを走るクルマもあるので、しっかり点検整備をします。ダカールラリーを円滑に進行するためにも、オーガナイザーの人たちが、決まった時間に、安全、快適に到着できるよう、しっかりサポートしています。

ふだんディーラーで行っている整備を行う。メカニックたちにとってもいい勉強の場となる
ふだんディーラーで行っている整備を行う。メカニックたちにとってもいい勉強の場となる

―そしてダカールラリーを走ったこれらのハイラックスやSW4の走行、修理データを元に、さらに改善の余地がないか、「もっといいクルマづくり」に活かしています。

総勢12名のメカニック。後ろの2台の8トントラック2台で42台のハイラックスとSW4をサポートする
総勢12名のメカニック。後ろの2台の8トントラック2台で42台のハイラックスとSW4をサポートする

日本でも同じハイラックスに乗れる喜び

一般道であれば思いもよらない故障がオフロードでは考えられます。砂丘や涸れ川など誰も来ないような場所で故障したら、誰も助けてくれません。まず壊れないこと、そして多少不具合が出ても、目的地までたどり着けること。ハイラックスやランドクルーザーは、この使命を持っています。特にハイラックスは、世界中で信頼を得て、すでに1740万台以上販売されています。ダカールラリーのオフィシャルカーとして大会を支えているハイラックスが13年ぶりに日本でも乗れるようになったのは個人的にとてもうれしいです。試乗車のある販売店などで、ぜひその世界観を体感し、ダカールラリーに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

(テキスト:寺田 昌弘)
(写真:寺田 昌弘・MARIO SATO・トヨタ自動車)

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。