イチオシカー&オススメ装備を聞いてきた ジャパンキャンピングカーショー2017

2017年2月2日(木)から5日(日)まで4日間にわたって幕張メッセで開催されたジャパンキャンピングカーショー2017。キャンピングカー業界のモーターショーとも言うべきイベントだ。主要ビルダーのブースでイチオシ車や、購入の際のオススメ装備を聞いてきたので、足を運べなかった人はぜひ参考にしていただきたい。

【総評】 各社が力を入れるアラウンドビューモニター、大容量電源、急速充電

全体的には、各社が得意分野の車種に磨きをかけてきたという印象で、見た目に大きなインパクトがある車両は目につかなかった。その一方、装備面ではいくつかの傾向が見られた。ひとつめのポイントは、アラウンドビューモニターの普及だ。

アラウンドビューモニターは、自分が運転するクルマを見下ろすようにモニターに映し出せる装備で、ミニバンを中心に市販車に広がっている。一般市販車の装備としては目新しいものではないものの、モデルや装備によってボディサイズが変わるキャンピングカーへの装着はそれほど進んでいなかった。その状況が大きく変わり、今年は各社がアラウンドビューモニターをアピール。キャンピングカーはバックミラーがほとんど役に立たないので、運転に苦手感のあるユーザーにとってアラウンドビューモニターは強い味方になるだろう。

後付けタイプのアラウンドビューモニターも展示、販売されていた

もうひとつのポイントは、電源周りの変化だ。かつてキャンピングカーのサブバッテリーには100Ah程度のものが使われていたが、電装品が増えるに従って搭載するバッテリーが増えてきた。今では中堅モデルでも100Ahバッテリーを2基、もしくは3基搭載するのが当たり前になっている。100Ahバッテリーを3基搭載したモデルなら、数日の旅行でもバッテリー残量を気にせずに旅を続けられる。1泊2日なら、家庭用エアコンを一晩中つけておくことも可能だ。しかし容量を増やしたことで充電時間がかかるという新たな問題も生じている。この解決策として、エンジンの発電機からいかに効率よくサブバッテリーを充電するかという、工夫をこらすビルダーが増えている。

バッテリー関連では日産の取り組みにも注目したい。電気自動車で培ったリチウムイオンバッテリーの技術をキャンピングカーに応用、12kWAの電源を搭載したキャンピングカーのコンセプトモデルを展示。12kWAといえば一般家庭の1日の消費電力と同程度。つまり、自宅やホテルと同じように気兼ねなくテレビやエアコンなどを使える容量を確保しているということだ。贅沢な時間を過ごせるということで、同社はこれをキャンピングカーではなく「グランピングカー」と呼んでいる。一体どの程度の価格になるのか、充電やバッテリーメンテナンスにどの程度の手間がかかるのかはわからないが、市販化が楽しみだ。

日産のコンセプトモデルは豊富な電力を活かして優雅な車中泊を楽しめる「グランピングカー」として展示されていた

では続いて、各社のイチオシ車を見ていこう。
※社名の読み50音順に掲載

【アネックス】 COMPOSER with DOG

乗車定員5人、就寝定員2人、車両本体価格5,185,200円(税抜)
アネックスは売れ筋のバンコンモデルCOMPOSERにwith FAMILY、with DOGという2つのモデルを追加。中でも特徴的なのは、with DOGに備わる犬用シャワールームだ。外を走り回って泥だらけになった犬の足を、専用シャワーで洗い流してから車室内に連れて入れる、犬好きご用達モデル。では逆に犬好き以外には無縁のモデルかと言えばそうでもない。シャワー室は当然水濡れ対策が施されており、しかもリアハッチからすぐアクセスできる場所にある。濡れたもの、汚れたものなどをそのまま気軽に放り込めるスペースとして活用できる。サーフィンなど海辺で遊ぶ人、雨で濡れたキャンプ用品の持ち帰りに困った経験のある人なら、その利用価値がわかることだろう。

ベース車両は日産・NV350バン DX
カーゴスペースに設けられた犬用シャワースペースは、水濡れ対策ばっちりで様々な活用が可能

【AtoZ】 アミティ LX Porto

乗車定員6人、就寝定員6人、車両本体価格3,854,000円(税抜)
キャブコンの中でもコンパクトなライトキャブコンジャンルで長い歴史を持つ、AtoZのアミティ。売れ筋の固定二段ベッドなどに加え、よりゆったり過ごせるワイドベッドを備えたリアドアレイアウトなど、新しいものを加えて全4レイアウトを用意。花をイメージしたFiore、港をイメージしたPorto、森をイメージしたBoscoなど、インテリアも従来のキャンピングカーのイメージにとらわれないデザインで飾ってきた。質素で柔らかいトーンのキャンピングカーでは物足りない人向けの選択肢と言える。

ベース車両はマツダ・ボンドトラック (写真は同モデルのFiore)
港をイメージしたというPortoはキャンピングカーでは珍しいブルーのインテリアが施される

【トイファクトリー】 BADEN

乗車定員7人、就寝定員5人、車両本体価格5,240,000円(税抜)
トイファクトリーはベッドを高い位置に設置し、ベッド下に大きな荷室を確保したモデルをいち早く展開してきた。今回のイチオシであるBADENは大人2人+子供2人のファミリーや、ペットを連れて旅を楽しみたい人にオススメのモデル。ベッド下収納の容量とベッド上空間を巧みに配分してみせるあたりはさすがだ。

ベース車両はトヨタ・ハイエース ワイドスーパーロング
ベッド下の収納スペースをしっかり確保しつつ、大型犬用ケージを収納できる高さにベッドを設置
オススメのオプションは、断熱効果が高く結露とも無縁なサイドとリアのアクリルウィンドウ

【東和モータース販売】 WOHN EXCLUSIVE

乗車定員7人、就寝定員6人、車両本体価格7,900,000円(税抜)
東和モータース販売は、キャブコンモデルのWOHNにロングボディモデルを用意してきた。オススメポイントは家庭用エアコンを装備していることだという。家庭用エアコンが付いているだけなら今や珍しくはないのだが、WOHNの場合は特殊な電源回路を搭載することで、エンジンのアイドリングだけでエアコンを稼働させることができる。停車中のアイドリング自体はオススメしたいものではないが、熱中症を避けるためなど、エアコンが必要なこともある。そのときにバッテリー残量が少なくても、アイドリングだけでエアコンを使えるのは、いざというときの安心感が違うだろう。

ベース車両はトヨタ・カムロード、このシャシーでは精一杯という5200ミリまで全長を拡大
アイドリングの電力だけで家庭用エアコンを使えるというのは、いざというときに頼りになりそうだ

【ナッツRV】 CREA 5.3X EVOLUTION

乗車定員6人、就寝定員5人、車両本体価格7,011,000円(税抜)
ナッツRVの今回の出展で一番の目玉は、現在特許を出願中という最新の充電システムだ。「EVOシステム」と銘打たれたそれは、105Ahのバッテリー3基を数時間のアイドリングでフル充電できるという。キャンピングカーで長期間の旅をすると、2日目、3日目と日を追うごとにバッテリー残量が心許なくなるものだが、これだけ大容量のバッテリーを日中に再充電できれば毎日を快適に過ごせるに違いない。

ベース車両はトヨタ・カムロード
アイドリング時、走行時で充電回路を切り替えることで高効率の充電を可能にしたEVOシステムを搭載

【バンテック】 Cyda

乗車定員7人、就寝定員4人、車両本体価格4,900,000円(税抜)
バンテックにはトヨタ・カムロードをベースにしたZILという看板モデルがあるが、それよりも気軽に使えるコンパクトモデルが欲しいという要望に応えて開発したライトキャブコンが、Cydaだ。大きな特徴は、オプションで発電機の消音ボックスを設置できること。発電機は騒音が大きいため使える場所や時間が限られ、かといって後付けの消音ボックスは大きく設置場所に悩まされる。この課題を解消するためバンテックはホンダ製発電機EU16i専用の消音ボックスを開発、Cydaにオプションとして組み込めるようにした。

ベース車両はマツダ・ボンゴ
オプションで装備できるホンダ製発電機EU16i専用消音ボックスは配線済みですぐに使える

【フィールドライフ】 Balocco

乗車定員4人、就寝定員4人、車両本体価格3,071,000円(税抜)
フィールドライフは軽自動車ベースかマイクロバスベースのキャンピングカーしか作っていないという、ちょっと極端なビルダー。今ではキャンピングカーの1ジャンルとしてすっかり定着した軽キャンピングカーを最初に作ったのがこの会社だ。そのため、軽キャンピングカーとはいえ、高級なバスコンと同じ部材がおごられており、その分価格は高めだが、質感の高さは他ビルダーと一線を画している。

ベース車両はダイハツ・ハイゼットトラック、サイドオーニングやテントもサイズぴったりに作られている
バスコンに使われる部材を軽キャンピングカーにもそのまま使用し、高品質なインテリアを実現

【フジカーズ】 FOCS Ds-Fスタイル

乗車定員7人、就寝定員3人、車両本体価格3,999,000円(税抜)
フジカーズジャパンではバンコンのFOCSシリーズに、新たにFスタイルとLスタイルをラインナップ。中でもイチオシは、ファプスシートを取り入れたFスタイルとのこと。ファスプシートは移動時には前向き座席に、停車時には後ろ向き座席に、そして就寝時には平らになる。横向きや後ろ向きの座席では酔いやすかったり、普段使いに向いていないというユーザーの意見を取り入れたモデルだ。インテリアはミゾとホゾと組み合わせて組み、その上からネジで強度を確保しているので、キャンピングカーにつきもののインテリアの軋み音が少ないのが自慢だという。

ベース車両はトヨタ・ハイエースワゴンGL
走行時は前向き座席として使えるファスプシートを採用し、普段のファミリーカーとしての使い勝手にも配慮

【ホワイトハウス】 FREESTYLE POPHOT Package

乗車定員5人、就寝定員4人、車両本体価格3,285,000円(税抜)
ハイエースやミニバンベースのキャンピングカーでもまだ大きいと感じる人にはこちら、ホンダ・フリード+がベースのフリースタイル。コンパクトだが、ポップアップルーフと回転可能な前席シートで、4人で食事、就寝が可能。30車種以上のポップアップルーフを手がけてきたというホワイトハウス、その品質には自信があるとのこと。ベース車にフリード+を使っているメリットは、運転のしやすさだけではない。ハイブリッドモデルを選ぶことができるほか、大規模な架装がないため普段のメンテナンスはホンダディーラーでOK。

ベース車両はホンダ・フリード+
これまで30車種以上の設計、製作を作ってきたホワイトハウスが自信を見せるポップアップルーフ

【レクビー】 ホビクル N-pop Superior

乗車定員5人、就寝定員2人、車両本体価格4,500,000円(税抜)
あえて車内装備をシンプルにしたホビクルNのコンセプトは「遊びの基地」だ。装備がシンプルなので荷物が積み込みやすく、簡単に遊びに出かけられる。室内にはいたるところにレールやバーが取り付けられており、ベッドの高さを変えたりフックや収納ケースを設置したりして自分の趣味に合わせてカスタムできるようになっている。

ベース車両はトヨタ・ハイエース ロング
室内のあちこちにレールやバーが設置され、フックや棚を自分でつけてカスタマイズできる

いかがだろう、気になるモデルはあっただろうか。近年はブームということもあり、全国各地で頻繁にキャンピングカーフェアが開催されている。JARVAのイベント情報サイトなどで近くのイベントを探し、気になるモデルを実車で確認してみてほしい。

最後に、国産車とは別世界の輸入キャンピングカーを1台ピックアップして、紹介しておこう。サイズ感や装備などから、国産車との世界観の違いを感じて欲しい。

【番外編・ボナンザ】 COMPASS 23TK

乗車定員6人、就寝定員4人、車両本体価格13,860,000円(税抜)
ベースとなっているのは、フォード・トランジット350というトラック。アメリカでは大きい部類ではないようだ。3.2Lのディーゼルエンジンは静かでパワフル、運転しやすいだけではなく、高速道路なら7km/Lという良好な燃費を叩き出すという。全幅2286ミリ、全長7163ミリと、ボナンザがこれまで扱ってきたモデルに比べてコンパクトなボディは、取り回しがよく、狭い道路が多い日本でも安心して旅に出られる。

ベース車両はフォード・トランジット、これでコンパクトと言ってしまうあたりがアメリカンだ
滞在時にはリビング部がスライドアウトし、ゆったり過ごせる室内空間を作り出す
ガスコンロにシャワー、水洗トイレと、生活に必要なものが一通り揃えられている

(重森大+ノオト)

[ガズー編集部]