「人とくるまのテクノロジー展2017 横浜」は新しい発見の連続!

5月24日(水)~26日(金)にかけてパシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2017 横浜」は、公益社団法人・自動車技術会が主催する自動車業界向けの技術展。IoTや自動運転といった最新技術はもちろん、開発研究向けの機材や素材メーカーが開発した新素材など、自動車作りを支えるサプライヤーやメーカーが持ち寄った“最先端”を見ることができました。その中から、筆者が注目したブースをいくつか紹介します!

最新技術を見る前に…

入場ゲート前では、「大衆への普及」、「排出ガス・燃費技術」、「魅力・高性能技術」の3テーマから、それぞれを象徴する歴史的なクルマが展示されていました。発表当時の新聞の切り抜きが壁面に張り出され、世間での反応の一片を見せていたのも興味深い展示です。

1955年式トヨペット・クラウン
1973年式ホンダ・シビックCVCC(米国排気ガス規制・マスキー法に初合格した乗用車)
デンソーが1981年にトヨタ・ソアラ用に開発したデジタルメーターのデモ模型

さらに会場の2階では、ホンダのカブ号F型から日産・リーフの電動パワートレインまで、自動車技術の歴史を実物展示で追えるようになっていました。

日野自動車、UDトラックスで見たトラックの最新エコ技術

ここからはイベントの本題、最先端テクノロジーを紹介していきましょう。トラックメーカーの課題として、長距離走行時のドライバーへの負担軽減と燃費性能の向上があります。日野自動車とUDトラックスでは、それぞれの課題に対する技術を展示していました。

日野自動車「DPR-Ⅱ」:手前の触媒でPMを除去し、その直後に燃料噴射し奥の触媒でNOxを浄化する

日野自動車では「尿素(AdBlue)フリー」の排気ガス浄化システムが展示されていました。最近のトラックでは、排気ガスに含まれている窒素酸化物(NOx)を、尿素で浄化しています。でも、尿素は「尿素水」をドライバーが別途専用タンクに補給しなければなりません。しかも尿素水は、すべてのガソリンスタンドで補給できるわけではないのです。

そこで日野自動車は、新型レンジャー(中型トラック)に尿素フリー「DPR-Ⅱ」を搭載しました。この浄化システムは、PM(粒子状物質)とNOxの触媒をわけ、PM触媒のあとで燃料噴射をし、触媒の温度を上昇させて浄化能力を引き上げるシステムです。

UDトラックス「フォアトラック」システムの模型:GPSで道路勾配を記憶し、次回走行した際に加減速を制御しエコドライブを実現

UDトラックスでは、GPSと連動したエコドライブシステム「フォアトラック」の模型展示をしていました。このシステムは、クルーズコントロールと連携するもので、GPSシステムで一度走行した道路の勾配を記憶。次に同じ道路を走行する際に道路状況を先読みし、車速や補助ブレーキを制御することで、運転スキルに関わらずエコドライブを可能にするシステムです。

旭化成×GLMで共同開発 走るコンセプトカー「AKXY」

新素材などを研究開発している旭化成とEV(電気自動車)のスポーツカー「トミーカイラZZ EV」を販売しているGLMは、共同開発したコンセプトSUV「AKXY(アクシー)」をお披露目しました。

旭化成AKXY:車名の由来は「Asahi Kasei ×(かける) You」。疾走感のあるシャープなデザインだ

このコンセプトカーは、旭化成がGLMのEVプラットフォームに、車内の空気環境を分析するCO2センサーや音声による車内コミュニケーションシステムなどの最新技術をふんだんに取り入れた1台。素材には、同社が開発をすすめる軽量で耐久性に優れるエンジニアリング樹脂や快適性を追求した人工皮革が採用されています。

ありとあらゆるところに旭化成の素材、「LEONA繊維(ナイロン素材)」が用いられてる

このAKXY、市販予定はないものの、具体的なコンセプトモデルとしてプレゼンテーションできたことで、GLMだけではなく多くの自動車メーカーの新規開発に役立つことができればとのこと。

三井化学、布製ボディの電気自動車「rimOnO(リモノ)」

総合化学メーカーである三井化学のブースでは、昨年の5月に「株式会社rimOnO」が、ドリームスデザイン、三井化学、帝人フロンティアそしてローランドを開発パートナーに開発した、布製ボディを持つEV「rimOnO(リモノ)」を見ることができました。

欧州の14歳以上で取得可能な免許「L6e」を想定して開発を進めていると同時に、日本版L6e導入働きかけを行っている
運転は原動機付自転車を流用している。公道走行を目指しているため、クラッシュテストといった安全要件もクリア

このクルマのコンセプトは、「とにかくカワイイを徹底追求!」。三井化学は、このクルマの布製ボディを開発しています。このボディはファッション感覚で容易に着せ替えできるそうです。

現在、公道試験走行を行なうにあたりプロトタイプを製作する資金調達に苦戦していることから、クラウドファンディングを募っています。興味のある方は出資してみては?

rimOnOクラウドファンディング
https://www.booster-parco.com/project/214

「だけじゃない。テイジン」のコペン着せ替えコンセプト

「だけじゃない。テイジン」のキャッチフレーズで知られるテイジンは、ダイハツ・コペンをベースに同社の素材でカスタマイズを施した「着せ替えカー」を展示しました。一見すると市販のコペンですが、内装にテイジンの技術が応用されています。

一見普通の現行ダイハツ・コペンに見えるが…。

ドアトリムは特殊な不織布で、マジックテープのように簡単に取り外しができて洗濯も可能なもの。シートはクッション部がリバーシブル素材になっていて、それぞれの面が涼感/温感を与えてくれる機能性を持っています。ラゲッジスペースは静音性、防水・防汚に優れた人工皮革を敷くことでコペンでもアウトドアなアクティビティが可能に。ハッチバックはCFRPとポリカボネートで軽量かつ頑丈に作られています。

テイジンは、「これからも素材だけではなく、製品として企業に積極的に提案していきたい」とのこと

さらにダッシュボードには、すでに一部施設などで導入されている通信シート「セルフォーム」を設置し、車内でもネットワークが使えるようになっていました。趣味からビジネスユースまで、幅広く対応できそうですね。

クルマ業界を目指す人はぜひ見てほしい

公道を走っているクルマに対して、個々の部品や技術などの背景を意識することはあまりないですよね。でも、この展示会に行くと、「1台のクルマにこれだけの企業と技術が関わっているんだ」ということを認識させられますね。

「人とくるまのテクノロジー展」は毎年、開催されているので、クルマが好きな人はもちろん、これから自動車業界を志す学生に、ぜひ見学してほしいと思います。少し難しい内容が多いですが、会場をひと回りするだけでも十分、勉強になりますよ!

(クリハラジュン+ノオト)

[ガズー編集部]