新幹線がクルマに変身!地方出張で大活躍の「ラッピングレンタカー」

バスや宣伝カー、痛車など、ラッピングを施したクルマが増えてきました。そんな中、鉄道を模したラッピングカーがあるのをご存知でしょうか。
今回は新幹線や伊豆クレイル、あずさなど、鉄道のデザインを施したラッピングレンタカーを運用している「JR東日本レンタリース株式会社」にお伺いしました。
ご説明いただいたのは、JR東日本レンタリース株式会社、営業本部の千田遼典さんと、デザイン及び施工を担当した株式会社SECプランニングの秋山健一さんです。(以下、敬称略)

(左から)株式会社SECプランニング 秋山健一さん、JR東日本レンタリース株式会社 千田遼典さん
(左から)株式会社SECプランニング 秋山健一さん、JR東日本レンタリース株式会社 千田遼典さん

――ラッピングレンタカーは、どのような経緯で始められたのですか?
千田:スタートは2014年からです。最初は盛岡、秋田限定で、新幹線「はやぶさ」「こまち」をイメージした部分ラッピングカーを作成しました。ただ、その頃は商品ではなく、あくまで営業所のPR車両でした。
その後、JR東日本様と「旅行と絡めてタイアップできるものを」と模索していたところ、観光バスにラッピングしているのをみて、レンタカーでもできるんじゃないかと企画しました。
現在は新幹線のほか、伊豆クレイル、旧国鉄車両など計10種のラッピングレンタカーがあります。

山形営業所の「E3系つばさ」
山形営業所の「E3系つばさ」

――デザインとラッピングの施工はどのようにされたのですか?
秋山:各鉄道の写真をもとにして、イチから作りました。まず前、後ろ、サイドを2次元でデザインして、立体の写真に当てはめて確認します。次に実車にあたるのですが、ラインの描き方が変わってくるので、ノリの弱いステッカーを貼ってデザイン通りに線を手書きしたあと、一旦剥がします。それを基に再現可能なデザインデータに調整してから、実際のラッピング作業に移ります。
新幹線はフロントからサイドに流れるストライプがあるので、そこを繋げるのが難しかったですね。

千田:白い車体に線を入れたように見えますが、もともとはシルバーです。いわゆるフルラッピングで、車両はHondaのフィットを使用しています。

秋田営業所の「E6系こまち」
秋田営業所の「E6系こまち」

――そもそも鉄道とクルマではフォルムが違いますよね。苦労したポイントなどありますか?
秋山:「はやぶさ」「とき」はツートンカラーで、真ん中にストライプが入っているだけなので、そのままクルマに展開しても全然新幹線っぽく見えないんです。ストライプをどこまで伸ばすか、実物に近い曲線を作るためのデフォルメが大変でした。ラインの角度も見る位置によって変わるので、何回も微調整しました。
あとは色ですね。なるべく実物に近づけるために、印刷のカラーチップを持って東京駅まで行きました(笑)。
フィルムを貼る職人さんにも苦労をかけました。ちょっとズレただけでイメージが変わりますからね。

「D51形蒸気機関車498号機」をイメージしたラッピングレンタカーの施工現場(現在は予約終了しています)
「D51形蒸気機関車498号機」をイメージしたラッピングレンタカーの施工現場(現在は予約終了しています)

――JR東日本の監修は厳しかったのでは?
秋山:ラインの位置やデザインに関しては、そこまで厳しくはなかったです。ただ「SHINKANSEN YEAR 2017」のロゴに関する注文は多かったですね。ドア一面にロゴを入れたのですが、我々としては「もっと小さくして、ラインを生かしたほうがいいんじゃないか」と。そのせめぎ合いはありました。

新潟営業所の「E4系とき」
新潟営業所の「E4系とき」

――利用料金はおいくらですか? あと稼働状況は?
千田:12時間まで4,050円、24時間まで5,260円です。より多くのお客様にご利用いただきたいということで、基本料金よりも25%割引しています。
稼働については、各営業所に1台しかない限定車両ということもあり、土日や行楽シーズンは早めに予約をいただかないと埋まってしまう状況になっています。

熱海営業所の「伊豆クレイル」
熱海営業所の「伊豆クレイル」

――通常よりも安いのですね。どんな人が利用するのでしょうか?
千田:休日はお子さま連れのご家族に人気です。一方、平日はビジネスでの利用が非常に多くなっています。理由は価格が安いのと、見た目が特別なので、地方の取引先へ営業に行く際の話のネタにしていただいているようです。
当初は鉄道ファンの方に乗ってくれればいいな、と思っていたのですが、予想以上にビジネス利用がございました。

小淵沢営業所の「旧国鉄特急 あずさ」
小淵沢営業所の「旧国鉄特急 あずさ」

――営業マンが話のネタに、というのは面白いですね。ほかにはどのような意見が?
千田:常連の方からは「JRらしいね」と言われました。あとデザインが目立つので、大きな駐車場でも見つけやすいというご意見もありました。マイカーではないので、普通のレンタカーだと見つけにくいんですよね。その点ラッピングレンタカーはすぐ発見できる、というメリットがあります。

鉄道ファンからは「内装もこだわって欲しかった」というご意見もありました。正直そこまでは考えていなかったので、次回は内装も検討したいと思っています。

稼働中のラッピングレンタカー一覧(2017年10月現在)
稼働中のラッピングレンタカー一覧(2017年10月現在)

――新幹線の車両は期間限定だそうですね。終わった後はどのように?
千田:はい、「新幹線YEAR2017」はJR東日本とのタイアップ企画で、2017年12月末までとなっています。「鉄旅ドライブ」は期限の定めなく稼働しています。
新幹線の車両は終了後、ラッピングを剥がして元のシルバーに戻し、普通のレンタカーとして使用する予定です。

JR東日本グループだからこそ実現した、新幹線ラッピングレンタカー。鉄道ファンの利用が多いのかな? と想像していましたが、子どもやビジネスマンに人気というのは意外でした。
「新幹線YEAR2017」の車両は年末までで、終わった後は剥がしてしまうとのこと。ちょっともったいない気もしますね。乗ってみたい方は今すぐ予約しましょう。

(取材・文・写真:村中貴士 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]