トヨタ・MR2 (1984年~) トヨタ名車列伝9話

1984年、日本初のミッドシップを採用した2人乗りスポーティカー「トヨタMR2」が誕生した。

FF用に高性能・低燃費エンジン「4A-G」の開発が進む中、吉田明夫を中心とした実験部門から、ある提案が出された。「思い切って、新エンジンを車両中央に搭載すれば、極めて運動性能に優れたスポーティカーを創り出すことができる」。しかし、トヨタにとってミッドシップは、レーシングカー以外では未知の分野。そこで、吉田が製品企画室の主査となり、新型車の開発が始まった。

トヨタMR2は、マニアに限らず幅広いお客様に向けたクルマとした。そこで、ミッドシップの良さだけでなく、欠点を徹底的に洗い出した。中でも室内空間の確保が最大の問題だった。まずデザイナーが、スポーティカーらしさと使いやすさの両立に試行錯誤しながらクレイモデルを仕上げた。次に吉田は、すでに管理職となっていた技能五輪の金メダル獲得者たちに依頼し、原寸大クレイモデルから1ヵ月半という短期間で試作車のボディを製作。そうして個性的で斬新なスタイルが完成した。更に「Fun to Drive」の極致を狙った高い走行性能と、気軽に乗ることができる魅力的な価格を実現した。

「Fun to Drive」誰もが運転する楽しさを感じるクルマをつくるという精神と技能は、今も受け継がれている。