編集部:みなさんG-BOOK mXの開発および商品化において、それぞれの役割の中でこだわってきたことがあると思います。それについて教えてください。
松岡:商品企画のチームとして徹底的にこだわったことは魅力的な価格設定です。G-BOOK ALPHAでは安心安全のサービスが高く評価され、高級車を中心にテレマティクスの普及を図ることができました。そして、続くG-BOOK mXで目指したテーマは、ずばり「テレマティクスの本格的普及」です。より多くの人にテレマティクスの魅力を知っていただき、利用していただくためには、サービスの向上はもちろんのこと、お客様がお求めやすい価格設定が必要です。いくら新しいサービスが追加されても、それで利用料金が高くなっては意味がありません。ですから通信費をはじめさまざまなコストダウンを図るために、サービス内容やビジネスモデルを再度、整理して、DCM利用の場合で現状維持の月あたり1,000円、さらに携帯電話利用の場合では永年無料を実現しました。また、G-SOUNDには新しく無料カプセルを追加して、より多くの人にこのサービスを体感していただけるようにしました。

鈴木:プローブコミュニケーションではパケット料を最小限にすることに挑戦しました。携帯電話接続の場合は通信費はお客様負担になりますから、料金が高いと利用してもらえません。そのため、徹底的にムダな情報を省き、効果的な道路交通情報を提供するために最小限必要な情報に絞り込みました。さらに、それを最低限必要なタイミングで、可能な限り多くの情報をコンパクトに送信できるようにしました。必要な情報を必要なときに必要なだけ送るしくみです。同時に、将来、このしくみを使って、交通情報以外の情報を提供できるように、拡張性のあるフォーマットにしています。今後、「プローブコミュニケーション○○」という具合に、いろいろな○○がついたサービスが誕生してくると思います。
井野口:道路交通情報に対してお客様が期待していることは、現在の状況ではなく本来は天気予報のように、「これからどうなるのか?」という予測とその精度です。ですから、G-BOOK mX で私がこだわったことを一言で言えば「量から質へのこだわり」です。つまり、情報の精度を上げるために、リアルタイムの情報をプローブとして集めるということです。それを実現する上で、DCM は強力な武器になりました。そして、これは他社にはないものですから、たいへん競争力のあるサービスになったと思います。
杉本:地図更新サービスでも通信費のコストダウンにこだわりました。地図は鮮度が命ですから、新しい道路の情報をいち早くお客様に提供するためには、通信で自動的に情報を送信するのが一番いい。しかし、全国の地図をすべて通信で更新するとなると莫大な通信費が必要です。そこで新しくなった部分だけ更新するという地図差分更新サービスという考えに行き着きます。しかし、それでもまだ一度に送信するには情報量が多い。そこで自宅および目的地周辺とその経路に絞り込んで、ドライバーが必要な情報だけ送るという方式を採用しました。しかし、これは技術的には大変難しいことなのです。ただ単に地図の表示を更新するだけなら、古い部分を切り取って、ジグソーパズルのように新しい地図をはめ込めばいいのですが、ナビの場合は経路計算やルート案内をおこなうわけですから、道路のつながりを保証しなければいけない。じつはこれが相当難しいのです。

編集部:たとえば、臓器移植をするときには、血管や神経の一つ一つをつなぎ合わせなければいけませんが、そういうことですね。
杉本:通常、ナビの地図を作る会社が大型コンピューターを使って何日もかけてやっているのと同じようなことを、あの小さな車載機の中で、カタカタとやらせているのです。しかも、「その更新時間中はナビが使えない」では意味がありませんから、その間も普通にナビが使えるようにしなければいけない。そのために、技術的には相当難しいことに挑戦してきました。そもそもすべては、地図情報の鮮度にこだわった結果です。ですから、本当に新しい高速道路の情報を7日間で更新できるのかも現地現物(※4)で確認しました。具体的には、昨年の11月18日に北海道に行って、その日に開通した国縫ー八雲間の高速道路の測量に立ちあい、さらにその測量情報が北九州のゼンリンに渡り地図が作成され、名古屋のトヨタマップマスターで地図が加工され、それがアイシン・エィ・ダブリュでナビ地図用の差分データに編集され、車載機に配信され反映されるまでをずっと情報とともに移動して確認しました。
※4:現地に行って、現物を見て、現実を確認すること。ただ表面的な観察ではなく、事実の背後にある真実を発見することが重要。
目的は、1)先入観の排除、2)独断・独善の排除 3)誤解(一部を全体と思う)の排除、の3つ
松尾:G-BOOK mXの広報や販促を担当する私の仕事はむしろこれからです。G-BOOK mXの新しいサービスの魅力をいかに正しく多くの人たちに伝えていくことができるのか、素晴らしいサービスができただけにとても責任を感じています。幸い、お客様の関心が高い地図更新や道路交通情報が画期的に向上することもあり、販売店スタッフからの反響はとても大きく、手応えを感じています。
編集部:松尾さんはG-BOOK mXの記者発表も担当されていましたね。
松尾:初代G-BOOKからずっと伝統的に、記者発表ではマスコミのみなさんにリアリティをもってサービスを実感していただくために、本番環境でのデモンストレーションの実施にこだわってきました。しかし、本番環境といってもまだ実際にサービスが開始されていない状態ですから、なにが起こるかわかりません。担当者はハラハラものです。私が担当したG-BOOK mXでもその伝統を踏襲しました。デモがうまくいったのは私の力というより、スタッフのみなさんの努力の成果に他なりません。私はただ運が良かっただけです。