また、中川さんからは、MR-Sは闇の試作車と呼ばれていて、エンジニアたちのアンダーデスクの努力により、予定されていない中で開発され発売されたことが明かされました。また、今回の特別仕様車を担当した永津さんは「一応、ターゲット設定ではヤング層とヤングatハートの熟年層ということになっていますが、要は、自分が今いちばん乗りたい車を作りました。ミッドシップで2シーターのオープンなんて、とってもぜいたくな車です。オープンにしてワインディング・ロードや海岸線をゆっくり流せば、とても楽しいし、気持ちが元気になります。高いポテンシャルを有していながらあえて、ゆっくり余裕で走る車だと思います。だから40代や50代の人に雰囲気で乗ってほしい。また女性が運転するのもとってもかっこいい車だと思います」とコメント。スポーツカーの開発にはそれに携わる人たちのロマンと情熱、そしてたくさんのドラマや裏話があるものだと感動しました。
そんなトークショーの中で一際ファンの注目を集めていたのが、マスターテストドライバーの成瀬さん。21年間ずっと製品企画を担当してきた手島さんが「ミッドシップは運動性能が命。そのため、何度も試乗会を重ね、運動性能のテストを繰り返してきました。そうした試行錯誤がMR-Sに結実しています」というようにMR-Sの開発において、テストドライバーの果たした役割はとても大きいものがあります。デザイナーやエンジニアと対等(場合によってはそれ以上)の立場でテストドライバーが開発に参加し、一緒になって車を作り上げてきました。
「MR2の試作車に初めて乗ったときは、まっすぐ走らない。結構大変だと思いましたね。以来、毎週土曜日、テストに付き合うことに。それもボランティアでね」と成瀬さんは当時を振り返る。片山さんからは「ベンツにしてもBMW、ポルシェでも、欧州メーカーには、その人が『OK』を出さないと車が発売できないという影響力を持った人がいるものだ。トヨタでいえば、それが成瀬さんです」との紹介をうけるまでもなく、会場に集まった人はみんな成瀬さんのことはよく知っているようで、尊敬とあこがれのまなざしが成瀬さんに集中していました。
そしてトークショーの締めくくりとして成瀬さんが「トヨタのスポーツカーの歴史がこれで終わるわけではありません。みなさんの熱い声援や開発者たちの情熱によって、またきっと復活するに違いありません」とコメント。トヨタのスポーツカーの灯は消えることなく、みんなの心の中に引き継がれていくことを確認。みんな大きくうなずいていました。
(2006年11月取材)

