ホットハッチGRカローラRZのクルマ好きを喜ばす装備

まずは限定500台で発売された、トヨタの高性能ハッチバック「GRカローラRZ」。その実車に触れた、走り好きのモータージャーナリスト山田弘樹の感想は?

「カローラ スポーツ」のシャシーを強化し、「GRヤリス」のパワーユニットと4WDシステムを組み込んだ「GRカローラRZ」。当初その概要をウェブサイトで見た私は、アタマのなかに「?」マークのフラグがピョコピョコと立ちまくった。

この1.6リッター直列3気筒ターボは、GRヤリスに搭載しているからこそ価値があるんじゃないの? Cセグメントモデルの重たいカローラだったら、排気量だって2リッターにするべきじゃない?

脊髄反射で文句を言うのは現代病のひとつであり、ヒジョーによろしくない。ということで素性を調べてみると、なんとエンジンの最高出力はGRヤリスの272PS/6500rpmから、304PS/6500rpmへと大きく上乗せされている。メーカー純正のテンロクターボがオーバー300PS!

しかもその発生回転数が同じだから、トルクが上がっているのかと思いきや、370N・mという最大トルク値は同じでもそのトルクバンドが3000-4600rpmから3000-5550rpmへと拡大されていた。やるじゃん。

それでも私は、まだまだGRヤリス推しだ。だってあのクルマは、市販化された夢のラリーマシンなのだ。WRCの都合でホモロゲーションこそ関係なくなってしまったけれど、それにトヨタが真っ正直に応えたさまに萌(も)えた。わざわざ空力特性に優れる3ドアボディーを開発し、軽量な3気筒ターボをハイチューンして、ローカルラリーをも席巻するためにつくった熱血マシンなのだ。

「だってヤリスでしょ?」という声も、ヒジョーにアタマにくる(笑)。そうではなくて、「だからヤリス」なのだ。ラリーでは小さなボディーが有利で、かつてスバルが「レガシィ」から「インプレッサ」へ、三菱が「ギャラン」から「ランサー」へと“箱替え”したのも、ボディーサイズを小さくして勝つためである。この小さなボディーに最強のパワーユニットと4WDシステムが凝縮しているからこそ、GRヤリスには意味があるのだ!

あっ……、GRカローラの話だっけ。

つまり、そんなクルマ好きの筆者にとって、GRカローラは見ていて複雑な気持ちになるクルマなのだ。だって、実物はすごくカッコいいじゃない。テレビCMを見たくらいで散々ケチをつけていたタレントに、偶然遭遇したら手のひら返しでサインをもらい大ファンを名乗ってしまう……くらいの熱量を、GRカローラは持っている。人もクルマも見た目が9割なのかと思うと、なんだか悲しくなるけれど。

いやいや、ボンネットスクープの裏側ダクトの形状が左右で別あつらえされていたり、リアバンパーには袋だまりになる空気を抜く穴が空いていたりと、機能もきっと、きちんと考え抜かれている。おまけに5ドアハッチだから、リアシートへのアクセスもいい。

なんだよー。やっぱり、良さそうじゃないか……。というわけで、早速乗ってみましょうよ!

(文:モータージャーナリスト・山田弘樹)

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