【ルノー メガーヌGT 試乗】4WSからして、すでに尖っている…中村孝仁

ルノー メガーヌGT
とかく尖がったイメージの強い日本におけるルノーというブランドイメージ。勿論好対照の『カングー』なんていうクルマもあるし、『トゥインゴ』だって存在するが、イメージとしては個人的には尖がっているわけである。

『メガーヌ』というモデルは言うまでもなくCセグメントのハッチバックモデルであって、当然のことながらVW『ゴルフ』とか、プジョー『308』などとその市場を争うモデルである。つい最近で言うとトヨタ『カローラ・ハッチバック』なんかもこのセグメントのモデルである。しかし、メガーヌのイメージを引っ張るのは「R.S.」と呼ばれるニュルブルクリンク・ノルドシュライフェを、8分を切って走ってしまうような過激なスポーツモデルが象徴的に語られる。

勿論VWにはさらに過激な『ゴルフR』があるし、プジョーにだって280psの『308GTi』があるから何ら違いがない。それにメガーヌだって『GTライン』と呼ばれる普及モデルが存在して、大人しい性格のモデルがないわけではないのだが、ではどれがイメージを引っ張るかと言えば、それは文句なくR.S.なわけである。ゴルフの場合も308の場合も売れ筋はやはり、中間モデルなのだが、ルノーは真っ先にR.S.を投入しそいつが売れてしまうと順次下級のモデルが登場するという他とは真逆の市場展開をするから、どうしても尖ったイメージが先行するのだろう。

さて、メガーヌの中間ラインナップと言えば、この「GT」である。そもそも名前からして少しだけ尖っている。そして走ってみると、やはり尖っていた。そもそも4コントロールという4WSを標準しているところからして、他とは違う。4WSはご存知の通り、ある特定のスピードまで低速側では逆位相に、そして高速側では同位相に切れる、リアのタイヤが僅かにステアする仕組み。これ、日本ではホンダやマツダなどが80年代後半から90年代にかけて取り組んだものの、いずれもすぐにやめてしまった技術。それを今になってルノーがものにして投入した。基本的には60km/hで、逆位相から同位相に変わる。

どんな効果を生むかというと、逆位相に切れると小回りが利く。だから、車庫入れなどは便利だし、低速でもシャープな走りを可能にする。一方で同位相だと安定感が増してくれる。路面に吸い付くような感触などとよく言われるが、そいつを実現してくれる。メガーヌには走行モード切り替えが付いていて、基本的にはスポーツ、ノーマル、コンフォートがチョイスできる(他にペルソというインディビデュアルモードもあるが)。これをスポーツに切り替えると、位相の切り替えが80km/hに上がり、さらにシャープさを強調する。

そもそもこんな機構が装備されているのだから、走りは押して知るべし。エンジン/トランスミッションは、1.6リットルターボ205ps、280Nmに7速のEDCと呼ばれるツインクラッチトランスミッションが装備される。勿論パドルシフト付き。

プラットフォームはCMFという日産との共同開発で誕生したものだが、日産側ではエクストレイルがこれを使っているのだが、まあ何というか性格の違うクルマだから同一に比較しちゃいかんだろうが、何故こうも乗り味や運動性能に違いが出てくるのか不思議に感じるほど、ルノーのそれは素晴らしい。とにかくフラット感は高いし足そのものがきちっと動いている印象が強いし、4コントロールのおかげもあって素晴らしくシャープなハンドリングが可能だし、文句のつけようなし!

シートは一体型バケット風で、サポート性も抜群だが、クッションは硬く、長時間、特に渋滞で乗っていると腰に負担が来た(個人的感想)。

すごくいいと思ったのは、高速走行中に前車との車間を、距離ではなく時間で示してくれるところ。一般的に車間は2秒空けましょうというのがお約束だが、2.5秒を切ると表示され、2秒まではグリーン、2秒を切るとオレンジに代わり、さらに1秒を切ると赤く表示され、車間が狭いことが認識できる。最近は煽り運転などが問題にされているから、これで自分の車間距離が明確に掴めるという点で、他メーカーも是非真似してもらいたいと思う。

ネガ要素としては、ACCが装備されないことやナビをApple CarPlayに頼るところなどだが、ルノー乗りからしてみると、そんなものいらんわ!となる装備なのだろう。やはり拘りのマニア向けクルマともいえるかもしれないが…。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★ 
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

(レスポンス 中村 孝仁)

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