答は自分の中にある [ブレイド 金森善彦チーフエンジニア](1/2)

これまで日本のクルマは“大きいほど高級”とされてきた。
小さなクルマから大きなクルマになるに従って、質感も性能もよくなっていくというのが常識だった。
その分かりやすい表れが、かつての「いつかはクラウン」というキャッチフレーズだ。日本のユーザーは、小さなクルマからエントリーし、年齢と収入増にともなって、大きくて高級なクルマへとステップアップしてきたのである。
しかし今、消費者の価値観は大きく変わった。郊外の大きな一戸建よりも、コンパクトな都心のマンションを好む人が増えているのと同じように、コンパクトで質感と性能の高いクルマを求める人が確実に増加しているのだ。
2006年12月に発表された新型車「ブレイド」は、そうした変化をとらえたトヨタの意欲作だ。見た目はコンパクトでも、大きな野心を秘め、多くの注目を集めるクルマなのである。
そんなブレイドの開発をまとめたのは、いったいどんな人物なのか。編集部は、プレス向け試乗会が開かれている神奈川県・大磯プリンスホテルまで、開発責任者・金森善彦チーフエンジニアに会いに行った。

クルマづくりにはチームワークが不可欠。

私は入社以来、ボディ設計の部門に在籍し、製品企画部門からのオーダーを受けてボディを設計していました。
1995年に製品企画部門に移ってからは、逆にボディ設計部門やさまざまな担当部署にオーダーを出す立場になりました。
両方の立場を経験して分かったことは、多くの部門の良好な関係がなければ、良いクルマづくりができないということです。一台のクルマを創るためには、多くのエンジニアが関わっていて、いくら優秀なエンジニアでも、一人でクルマを創り上げることなどできませんからね。
そこで、自分がはじめてチーフエンジニアになったときには、エンジニアたちにいかに力を発揮してもらうか、良い仕事をしてもらうかに、心を砕きました。
できるだけ関係部署に出向いてエンジニアと直接話をし、相手を理解すると同時に、私自身を理解してもらうよう心がけました。手前味噌ですが、オーリス、ブレイドでは、エンジニアたちとの深い信頼関係をベースに、良い開発ができたと思っています。

一(いち)から、新開発しました。

私は、ブレイドの開発に、一から携わっているんです。
製品開発部門で9代目カローラと欧州向けカローラを担当した後に、私は先行開発部門で新しいプラットフォームの開発に着手しました。それは、コンパクトクラスで今後いろいろなクルマの土台となっていく予定の、新しいプラットフォームでした。
トヨタがその先5年10年、どのような性能を持ったクルマを世に送り出していくべきか、ある意味、そのベースを決めてしまう開発。責任が重くプレッシャーがありましたが、とてもヤリガイのある仕事でした。
そしてその後、製品開発部門に戻ってきて、その新しいプラットフォームを使った初めてのクルマづくりのチーフエンジニアとなりました。それが、2006年の後半に相次いで送り出した、オーリスとブレイドだったのです。
オーリス、ブレイドはカローラ系の派生車だと思っている方も少なくないようですが、まったく異なる新設計のクルマです。プラットフォームから担当した私が言うのですから間違いありません(笑)。

MORIZO on the Road