大きな旗を掲げる ~レクサスIS-Fへの道~ [レクサスIS-F 矢口幸彦チーフエンジニア]

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キーパーソンインタビュー 大きな旗を掲げる ~レクサスIS-Fへの道~ [矢口幸彦チーフエンジニア]

初代LS400(UCF10)。
その静粛性の高さは自動車メーカーを震撼させた。

とことんこだわったLS400の開発が基礎になった。

 入社して2年目からクラウンの振動騒音の開発を担当、初代セルシオ(LS400)の開発がはじまると 自ら志願してLS400の振動騒音開発の担当になりました。
 当時はまだ、日本のクルマは振動騒音について世界のトップとは言えない状況。ある評論家に「クラウンは静かだが、 100kmを超えるとドイツ車に劣る」と書かれているのを見て、LS400では必ず勝ってやろうと思いました。 そこで、それまでは時速100km時だけだった振動騒音の評価基準を、自主的に200km時にも設定し、数値目標を掲げたのです。 この目標を、どのようなやり方でクリアするか、自分なりの考えをチーフエンジニアにアピールして任せてもらいました。
 開発では、あらゆるクルマに乗りましたよ。会社の試験車はもちろん、ないものはディーラーに出かけていって乗りまくりました。 ドイツのアウトバーンにも何度も走りに行きました。とにかくクルマは、実際に乗って感じなければ、本当のことは分からない。 これは今でも変わらない私の信念です。
 とことんこだわって開発した結果として、LS400が誕生したとき、外国のメディアからも「世界一静かだ」と評価されました。 「やった!」と思いましたよ。
 そうしたLS400の開発は、“これからの高級車はどんなクルマであるべきか”を考える行程でもありました。 その流れでワーキンググループが発足し、1995年にはレクサス商品性企画委員会となりました。 これがいまのレクサスセンターの基礎になっています。私自身、このころからブランドというものに、興味を持ち始めました。
 その頃、第1企画部に移り新コンセプト車の企画等に参画、それを機に私は、入社以来暖めていたアイデアを実現させるべく、 行動を始めたのです。それがいまのIS-Fにつながるクルマの企画でした。

旗を掲げ、想いを持ち続ける。

 ヨーロッパ、中でもドイツの高級車には、ハイパフォーマンス・バージョンが存在します。 レクサスのラインナップにも、そうしたクルマを持つべきだと私は考えたのです。
 最初に試作車を創ったのは、2000年。チェイサーをベースにしたもので、 私たちはスーパーチェイサーと呼んでいました。 その後、改良を加え、コンセプト検討車という位置づけで、社内の役員に プレゼンテーションをして回りました。
 テストコースに来てもらって、この検討車に乗ってもらうと、 普段は難しい顔をしている役員たちが、みんなニコニコして降りてきます。 なかには規定周回を超えても走り続ける人もいたりして。 「ウチの役員は、みんな本当にクルマ好きなんだな」と嬉しく思ったものです。
 それでも、この製品企画は何度もつぶれそうになりました。どうしたって販売台数が出ないクルマです。 ご存じのように、トヨタは販売台数をとても重視するメーカーですから(笑)、簡単にゴーサインは出ません。 しかし、私はレクサスが世界の高級車と闘っていくには、ブランドイメージを高め、 クルマ本来の楽しさを訴求するスポーツモデルが不可欠だと考えていました。
 私は、ひとり一人、賛同者を増やしていきました。クルマづくりは、もちろん私一人の力ではできません。 多くの人の思いが集まって、ようやくIS-Fの本格的な開発が進み始めたのです。
 クルマづくりに限らず、やりたい仕事を実現するために必要なことは、まず“旗を掲げる”ことだと思います。 自分はこんなクルマを創りたいんだ、こんな仕事をしたいんだ、と高々と宣言する。 そして、その想いを持ち続けること。 賛同してくれる人を集めながら、あきらめずにアピールし続けることですね。

人の想いに応える乗り物を創る。

 「IS-Fはどんなクルマか」という問いに対する私の答は、“乗ると降りたくなくなるクルマ”“ずっと走っていたくなるクルマ”です。
 サーキットに持ち込んで絶対的なスピードを計れば、いちばん早くはないかもしれません。 しかし私が大切にしたのは、乗った人が楽しさを感じることです。しかも、その楽しさをいつでも味わえることを重要視しました。 体調が良くて上手に運転ができた時だけではなく、たとえ疲れているときでも楽しくなるクルマにしたかったのです。
 そうした想いの根本には、私の子ども時代の体験があります。私は運動が苦手で、走るのも遅い子どもでした。 でも自転車に乗って工夫をして走れば、仲間に負けずに走ることができる。その頃から、機械や乗り物は、身体の延長であり、 身体の機能を高めてくれるものだと考えるようになった。機械や乗り物を身体の一部のようにコントロールできたときの楽しさや喜びを、 私は今、クルマづくりで追求しているのでしょうね。クルマというのは、そうした想いに応えてくれる、エモーショナルな乗り物だと思います。
 ぜひIS-Fに期待してください。そして、その時期が来たら、ぜひ乗って走ってみてください。 私たちがIS-Fというクルマづくりで掲げた旗に、一人でも多くの方が賛同していただければ、それにまさる喜びはありません。

( 文:三枝義浩 )

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