課題も多い? 免許証の「自主返納」とは

高齢ドライバーによる交通事故が社会問題となっています。それにともなって、運転免許の自主返納についても注目が集まるようになりました。では、この「自主返納」とは一体どのようなものなのでしょうか?

「クルマの運転が怖い」そんな声から生まれた制度

免許証の自主返納とは、身体的、認知的機能の低下により安全にクルマの運転ができない人が、有効期限の残っている運転免許証を返納すること(運転免許の申請取り消し)を言います。「運転中に以前よりもヒヤリとする場面が増えてきた」「もうクルマを運転するのが怖い」といった声が上がったことから、平成10年の道路交通法の改正後に開始されました。免許証を返納すると運転ができなくなります。

運転免許経歴証明書を身分証明書に!

生活のさまざまなシーンで顔写真付きの身分証明書として、免許証を提示する人も多いもの。免許証を返納してしまうと、不便に感じる人も少なくありません。そうした人のために、希望者には公的身分証明書として利用できる「運転免許経歴証明書」が発行されます。免許証の返納時から5年間運転免許経歴証明書の発行が可能で、無期限で使用できます。

自主返納に向けて各自治体が独自の取り組みを

免許証を返納することで一番不便に感じるのが移動する際の“足”です。そこで返納後の移動に困らぬよう、運転免許経歴証明書の提示などでバスやタクシー、電車などの割引が受けられるといった優遇措置を自治体が企業と協力して行っています。免許返納後の優遇措置や特典は各自治体によって異なり、趣向を凝らした取り組みで免許証の自主返納を進めている地域もあります。

占いや生前遺影の撮影が割引に

大阪府では免許証を自主返納した人が、運転免許経歴証明書を提示することで、バスや電車といった公共交通機関の割引のほかに、占いや写真館での生前遺影の撮影代が割引になる一風変わった特典を用意。また、吉本新喜劇の人気キャラクターとコラボして、免許証の自主返納についてPRするなど啓発運動も盛んに行っています。

自主返納についての相談室を設置

静岡県や長野県の一部の地域では、自主返納についての相談ができる相談室を警察署などに設置して、高齢者をサポートしています。相談室では、相談員が自主返納についての説明や相談、返納後のアフターケアを行う相談員の派遣といった活動を行うところも。自治体が主体となり、高齢者に寄り添いながら免許証の自主返納サポートをしています。

まだまだ問題のある自主返納

公共交通機関が充実している都市部なら、運転免許証を返納してもさほど不便には感じないかもしれません。しかし、地域によってクルマの重要度、依存度が異なるもの。交通手段の乏しい山間部や農村部では、クルマがなければ買い物や病院に行くことができず、死活問題となります。

どんなに自治体が魅力ある優遇措置や特典を用意しても、運転免許証を自主返納できない事情を抱えた地域があるのも事実です。クルマの依存度の高い地域に住む人たちが、免許証を返納後もこれまで通り不自由なく生活ができるよう、国や自治体のよるより一層の努力が今、求められています。

(唐沢未夢+ノオト)

[ガズー編集部]

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