「GR-FOUR」登場で思い出す歴代「GT-FOUR」モデルたち

注目を集めた新型車も多かった2020年。トヨタ久々の4WDスポーツである「GRヤリス」の登場も、今年のトピックスのひとつです。GRヤリスの4WDシステムにつけられた「GR-FOUR」という名称を聞いて、「GT-FOUR」の名を思い出した人もいるのではないでしょうか?

「GT-FOUR」は、トヨタがかつて4WDのスポーツモデルに与えていたグレード名。では、どんなモデルに設定されていたでしょうか? 歴代GT-FOURを振り返っていきます。

ラリーでもスクリーンでも活躍した4代目セリカ

初めてGT-FOURという名が登場したのは、1986年10月のこと。1985年8月に4代目へと生まれ変わった「セリカ」のスポーツモデルにつけられました。

  • セリカGT-FOUR北米仕様(写真:トヨタ自動車)

「セリカGT-FOUR」は、トヨタのモータースポーツシーンを長らく支えた「3S系」をターボで武装した185PSの「3S-GTE型」エンジンを搭載。フルタイム4WDを組み合わせ、5ナンバークラスの日本車としては、トップクラスの先進的なメカニズムと性能を誇りました。

発足初期からセリカが参戦していた世界ラリー選手権(WRC)は当時、2WDから4WDへの転換期。4WDとなったセリカGT-FOURは、WRCを戦っていたTTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ)にとって「待ってました!」という存在だったでしょう。

  • セリカGT-FOUR WRC参戦車両(写真:木谷宗義)

WRCの規定がグループBからグループAに変更となり、ベース車両の販売台数規定が400台以上から5000台以上となったため、GT-FOURでの実戦は1988年まで待つこととなりますが、1990年にカルロス・サインツ選手がドライバーズタイトルを獲得するなど、活躍を見せました。

ラリーでの活躍のほかにも、このセリカGT-FOURを語る上で欠かせない活躍の舞台があります。それは、映画のスクリーンです。

1987年に公開された映画『私をスキーに連れてって』では、佐藤真理子さんと羽田ヒロコさん、それぞれの愛車としてセリカGT-FOURが登場。「4WDは雪に強い」と謳う彼女たちが雪道を疾走するシーンは大きなインパクトを与え、「セリカGT-FOURでスキーに行くのがカッコいい!」という一種のステータスになりました。

トヨタのラリー黄金期を築いた5代目セリカ

  • セリカGT-FOUR北米仕様(写真:トヨタ自動車)

続く5代目セリカは、1989年9月にデビュー。このフルモデルチェンジでは、GT-FOURも同時に登場しました。エンジンは同じ「3S-GTE型」ながら40PSもパワーアップし、225PSを発生。日本車初の「トルセンLSD」を装備していたことも、話題となりました。これはトルク感応型LSD(リミテッドスリップデフ)で、駆動力やコントロール性の向上に寄与するものです。

WRC参戦を目的として「GT-FOUR RC」も、全世界5000台限定で販売。RCは“ラリー・コンペティション”を意味していて、水冷式インタークーラーやメタル製タービンなどの専用チューニングによって10PSアップを実現していました。

  • セリカGT-FOUR RC WRC参戦車両(写真:木谷宗義)

このGT-FOUR RCでのWRC参戦では、1993年に日本車初のマニュファクチャラーズタイトルを獲得。6連覇していたランチアを抑えての快挙でした。しかも、ユハ・カンクネン選手のドライバーズタイトルとあわせてのダブルタイトル獲得です。翌1994年もダブルタイトルを獲得(ドライバーはディディエ・オリオール選手)。トヨタのひとつのラリー黄金期を築いたモデルとなりました。

セリカGT-FOURの集大成となるモデル

6代目セリカは、それまでの特徴だったリトラクタブルヘッドライトから丸目4灯ヘッドライトとなって、1993年10月に登場。翌1994年2月に、GT-FOURがラインアップに加わります。

先代モデルではGT-FOUR RC専用装備だった水冷式インタークーラーを標準装備し、エンジンパワーは255PSにまで向上。それに合わせ、フロント対向4ピストン、リア対向2ピストンへと強化されたブレーキや、インチアップされたタイヤが装着されました。このモデルでもWRCのホモロゲーションのための専用グレード、「GT FOUR WRC仕様車」を国内2100台限定で販売。高さがアップしたリアウイングをはじめとした、専用エアロパーツを装備していました。

  • セリカGT-FOUR WRC参戦車両(写真:西川昇吾)

WRCへは1994年シーズンの途中から参戦しますがマシンの熟成に時間がかかりました。その後勝利を挙げたもののTTEの技術規定違反が問われるなどしたこともあり、トヨタは一旦WRCシーンから遠ざかることに……。トヨタは1998年にWRC復帰を果たしますが、参戦車両はカローラとなりセリカはWRCでの役割を終えることとなります。そして1999年に6代目セリカは生産を終了。7代目セリカはFFのみのラインアップとなり、結果的に6代目に用意されたGT-FOURが、“最後のセリカGT-FOUR”となりました。

最後の「3S-GTEエンジン&4WD」となったカルディナ

セリカGT-FOURの終了とともに途絶えていたGT-FOURの名は、2002年9月に「カルディナGT-FOUR」として復活を遂げます。

  • カルディナ(写真は2.0ZT、写真:トヨタ自動車)

歴代セリカGT-FOURと同じく、3S-GTE型エンジンと4WDを組み合わせたカルディナGT-FOURは、260PSという歴代セリカGT-FOURよりも高い最高出力を発生。さらに「GT-FOUR Nエディション」ではレカロシートやトルセンLSDを装備し、GT-FOURを名乗るに恥じない走りを実現していました。モータースポーツシーンでの活躍はありませんでしたが、「3S-GTEエンジン&4WD」というGT-FOURのスタイルを踏襲したモデルでした。

GR-FOURはどんなエピソードを残していくのか?

振り返るとさまざまなエピソードを持っている歴代GT-FOURモデル。2020年9月に登場したGR-FOURは、これからどんな活躍を見せてくれるのでしょうか? 2020年代の注目株となりそうです。

(文:西川昇吾/編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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