18歳で一目惚れ。ようやく手に入れた31GTS-R

若い頃に憧れたクルマが忘れられず探し続け、手にした時の気持ちはいかほどなのだろう。手に入れたことで満足するのだろうか。時を経てしまい、色褪せてしまうのだろうか。1987年製のニッサンスカイラインGTS-Rに乗る神奈川県相模原市に在住の増田さんに話を聞いてみた。

「いや、もう一目惚れなんですよ。18歳の時に見たCMが忘れられなかったんです」。そのCMとは「エリーゼのために」がBGMとして流れ、ブルーブラックのGTSがバンクを疾走して来ると言ったもので、世界初のオートスポイラー(走行中にFスポイラーが伸びてくる)装着のテロップと共に「精悍」の文字が印象的なものだった。「あのCM見てから、どうしてもこのクルマに乗りたくて(発売後10年以上経った頃)31のGTSを3台乗り継ぎました。そのあと、ミニクーパーやBMW、ステージアと乗ったんですが、どうしても限定のGTS-Rに乗りたくて。ネットで専門店のサイトを見つけて連絡したんです。僕は神奈川在住なのですが、その店は岐阜県にあったのです。それでも店長に頼んで探してもらいました」

R31スカイラインにあって、GTS-Rだけは別格のクルマだ。その素性は当時のグループAに出るために製作された、ホモロゲーションモデルなのだ。レースに出るためのベース車両として、800台しか生産されていない(現在では300台くらいしか残っていないと言われている)。そんな特別なクルマだっただけに入手も困難だった。「当時は450万円くらいしていたので、手が出なかったんです。このクルマは4年前に手に入れたんですが、その時で200万円くらいだったと思います。でも即決ですよね。やっと乗れる喜びでいっぱいでしたね」

セブンススカイラインと呼ばれたR31は、ステンレス製のエキマニに大型タービン、前置きのインタークーラー、アルミのタワーバーが標準装備された。色もこだわり抜いたブラックブルーのみの販売となった。このホモロゲバージョンにはGT-Rの名が冠されると期待されたが、その称号を勝ち取ることはできなかった。そのことに触れると「別にGT-Rじゃなくてもいいんです。この31があったからR32 GT-Rが生まれたんだし。何より今でも一番だと思っていますから。なるべくノーマルで乗っていたいので、あまり改造はしていません。エアクリーナーに車高調、ECUくらいなもんですね。このパイピングもノーマルなんですよ」とアルミのパイプを指差してくれた。

「それからエアコンをR33のエアコンに変えてあります。やっぱりノーマルは効きが悪いんですよね。ただエアコン入れると、明らかにパワーが落ちるんです。もう、体感できちゃうくらい。それも“味”ってことでいいんですけど」と愛車に満足している様子。今後の付き合い方を聞いてみると「絶対に手放しませんよ。メンテナンスも岐阜のショップがすべてやってくれるし。パーツも作っているので、無くなることもないですし。とにかく、最後まで行こうと決めています」。増田さんにとって18歳の時に憧れたクルマは、30年経った今も全く色褪せることなく、彼を魅了し続けているようだった。

(写真、テキスト、折原弘之)

折原弘之

F1からさまざまなカテゴリーのモータースポーツ、その他にもあらゆるジャンルで活躍中のフォトグラファー。
作品は、こちらのウェブで公開中。
http://www.hiroyukiorihara.com/

[ガズー編集部]