『GR Garage』が東京にさらに2店舗オープン!深川、蒲田で「GR スープラ・トークショー」を開催

社員を中心に86/BRZ Race、Vitz Race、ラリーチャレンジに挑戦するGR TOKYO Racing(以降GTR)を運営するトヨタモビリティ東京は、町一番のクルマ屋さんを目指す『GR Garage』をすでに三鷹、北池袋にオープン。

この9月にさらに深川、蒲田と2店舗を同時オープンし、エリアにお住まいの方なら自宅から30分以内に行けるよう、エリアの東西南北にそれぞれ『GR Garage』を展開しています。今回深川、蒲田のオープンを記念し、スペシャルトークショーを開催。

“GR スープラ”開発責任者の多田哲哉さんをメインに、GTRの清水宏保選手、武藤義明監督、私、そして86/BRZ Raceで並み居るGTドライバーを押さえ優勝経験のある社員ドライバーの水谷大介選手をMCに“GR スープラ”の魅力について語りました。

自宅近くにオープンした『GR Garage東京深川』
自宅近くにオープンした『GR Garage東京深川』

純粋にスポーツカーを作れる環境があったから“GR スープラ”は誕生した

90年代後半からクルマをはじめ産業界全体で環境負荷を軽減する施策が行われ、家電は省エネ、クルマは低燃費を売りにする車種も多く、ユーザーも歓迎しました。

さらに自動車業界ではZEV規制(販売台数のある一定数をEV、FCVといった排気ガスを出さないクルマを販売しなければならない)やCAFÉ規制(出荷したクルマの総台数の平均燃費から二酸化炭素量を算出し基準を設ける)など業界全体で環境負荷を継続的に軽減する規制があります。

そのなか世界で認められたのがハイブリッドカーです。プリウスを筆頭に様々なハイブリッドカーが世界中で販売されているので、トヨタはこのCAFÉ規制でEV専業社を除けば最も優秀なメーカーです。

「低燃費を謳うクルマが多く、魂を揺さぶるような官能的なスポーツカーがないという方がいますが、実はトヨタはハイブリッドカーが世界中で歓迎されたおかげでCAFÉ規制で有利となり、“GRスープラ”はCAFÉ規制を気にせず、純粋にスポーツカーを作れる環境があったのです」と控室で多田さんから聞きました。20年を超えるハイブリッドカー販売のおかげで、17年ぶりに“GRスープラ”が復活できたことは意外でした。

純粋にスポーツカーが作れる。86はトヨタのスポーツカーのいわばエントリーモデル。その上のモデルとしたら、やはり“GRスープラ”の復活しかない。フラッグシップは3リッター直列6気筒エンジンを積むため、BMWと共同開発することが効果的で、BMWもZ4を自社のみでフルモデルチェンジをするには厳しい環境だったのだと思います。両社がスポーツカーを愛するユーザーのために手を組んだことで、現代に新たに2台のスポーツカーが誕生したのだと思います。

明るい雰囲気のなかトークショーを開催
明るい雰囲気のなかトークショーを開催
店内に展示している『GR スープラ』を使いながら解説
店内に展示している『GR スープラ』を使いながら解説
『86』に続き『GR スープラ』のチーフエンジニアの多田さん
『86』に続き『GR スープラ』のチーフエンジニアの多田さん
レースを前提に作られた『GR スープラ』。D1、NASCAR、ニュル24時間そして来年から導入されるSuper GTとレースを席捲していく
レースを前提に作られた『GR スープラ』。D1、NASCAR、ニュル24時間そして来年から導入されるSuper GTとレースを席捲していく

チーフエンジニアが語る“GR スープラ”の魅力

「“GR スープラ”を開発するにあたり、レースに参戦するベース車として考えて作りました。スポーツカーといっても、実際レースに参戦するときは手間をかけてチューニングや補強をするのではなく、特に冷却はレーシングマシンには大事なので、最初からダミーではめているパーツを取れば、冷却効率が上げられるようにしています。潤滑系のクーリングや補強パーツもポンと装着できるようにしています」

“GR スープラ”といえばセリカからの派生モデルですが、そのセリカがWRCで日本車初となる年間ドライバーズタイトルをとったGT-FOUR(ST165)は、もともとラリーマシンを前提に作られたクルマではなかったので、トヨタ・チーム・ヨーロッパは相当苦労したことを思い出しました。

「そして考え抜いたのはダウンフォースです。この“GR スープラ”、展示を逆さにしてみなさんに観ていただきたいくらい、きれいに平面にしています。またタイヤハウスにもダクトをダミーで入れてあり、必要であればそこからタイヤハウスの空気を抜いてリフトを抑えることができます」

ただ、空気抵抗を軽減することを第一にボディデザインしたのではないそうです。スポーツカーのあるべきスタイリングを求めて行ったら、空力でもいい結果が生まれた。

「ピュアスポーツカーを目指し、FRでエモーショナルな走りを求め、50:50の重量バランス、ドライバーズシートから、手を伸ばせばリヤタイヤが触れるほどのレイアウト、ショートホイールベース、ワイドトレッドと、思い描いていた理想をすべて具現化しました。ホイールベースが短いと高速での安定性を気にする方もいると思いますが、それはリヤのアクティブディファレンシャルが機能し、走りと安定性をサポートしています」

純粋にスポーツカーとして仕上がった“GR スープラ”。ドライビングインプレッションをしたモータージャーナリストやオーナーからは、レーシングカーのような気を遣うような感覚ではなく、とてもニュートラルなドライビングができ、なにより乗り心地がいいという声が多い。

「確かにニュルブルクリンクも走り込みましたが、その付近のワインディングなど一般道を多く走り込んで鍛えました。ヨーロッパはアスファルトや石畳などいろんな路面があり、また山岳路もあり、言うなら自転車競技のツールドフランスが走る過酷な道を走り込んだので、どのような路面でも対応して乗り心地がよく、ドライビングに集中できます。これがピュアスポーツだと思います」

道が人を鍛え、クルマを鍛える。多田さんをはじめ、“GR スープラ”を開発したメンバーはみな、様々な道で鍛えられ、その道と人によってさらに鍛えられた“GR スープラ”。多田さんは、「どんな話を見聞きするより、とにかく乗ってくれれば、“GR スープラ”のよさを体感してもらえるのでぜひ乗ってみてください!」とおっしゃっていました。『GR Garage』では試乗車を用意しているところも多いので、ぜひお近くの『GR Garage』で試乗してもらいたいです。

和気あいあいとした雰囲気でトークショーは進む
和気あいあいとした雰囲気でトークショーは進む
『GR Garage』の活動をGRTの武藤監督が説明
『GR Garage』の活動をGRTの武藤監督が説明
エリアにお住まいの方々が自宅から30分以内に来られるよう東西南北に配置
エリアにお住まいの方々が自宅から30分以内に来られるよう東西南北に配置
レーシングシミュレーターで子供でも『GR スープラ』をドライブし、富士スピードウェイを走れる
レーシングシミュレーターで子供でも『GR スープラ』をドライブし、富士スピードウェイを走れる
サードパーティーの機能パーツも多く展示
サードパーティーの機能パーツも多く展示

蒲田ではチーフデザイナーが急遽登場で盛り上がる

トークショーに出させていただくことになり、来場者に何かここだけの話をできないかなと思い、懇意にさせていただいている“GR スープラ”のチーフデザイナー、中村暢夫さんに連絡したら、ちょうど当日近くにおられるということで、急遽、蒲田店にご来店いただきました。これにはトヨタモビリティ東京の方々、多田さんもビックリ!途中観客席からサプライズ登場していただいたら、来場者もビックリ!

中村さんに教えていただいた、ここだけの話でおもしろかったのは、BMWの役員に大変、驚愕されたことがあったそうです。

BMWとトヨタの両トップが同席するBMW本社デザイン検討場での最終デザイン合意会。

初めてZ4と“GR スープラ”のデザインモデルが並び、どちらの役員も相手側のデザインを見るのは初めて。中村さんがデザイン意図を説明すると、BMW技術トップの方が「君達はBMWの”M” とかメルセデスの”AMG”を作っているつもりなのか?!」と。

フロントから、サイド、リヤに渡るまで奢ったエアロパーツなどは、MやAMGなど、スペシャルモデルで装備するレベルで、標準モデルでここまでやるのかと驚かれたそうです。そこで中村さんは「“GRスープラ”はトヨタのフラッグシップスポーツモデルだから、これくらいやらないとダメなんです!」とコメントしました。

その数ヶ月後、ドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)を観戦しに訪れたホッケンハイムサーキットで、偶然そのBMWの役員と顔を合わせた時も、また同じコメントを驚きの表情で言われ、ただ最後に「でも、looks nice だけどね!」と笑顔とともに、愛ある言葉をいただいたそうです。トヨタの本気を知ってくれたBMW役員からの最高の褒め言葉ですね。

そして会場でお話しいただき、さらに驚いたのはデザインに清水宏保選手の存在が関わっていたということです。

「2001年でしたか、モーターショーのプレスデーで前から清水宏保さんが歩いてくるのをお見かけしたんです。現役時代(冬季オリンピック・男子スピードスケートでは1998年・金メダル、2002年・銀メダル)の清水さんの体型、上半身が絞られ、下半身、特に太腿の存在感に圧倒され、速く走る者のエネルギーにインスパイアされたのを覚えています」と中村さんがお話しされると清水さんもビックリ!

清水さんは「速く滑るためにより重心を低くすることが大事でした。現役時代にロケットスタートやコーナリングをより速く安定させるために、大会1週間前から腸を肋骨の裏側に入るぐらい上げて、おなかを薄くし、太ももをさらにおなかに近づけて低い姿勢を作っていました。それにしても私の体型が“GRスープラ”のデザインに関わっていたら、本当にうれしいです」と。

世界一の走りで世界を圧倒した清水さんと、世界を凌駕するピュアスポーツの“GRスープラ”をデザインした中村さんが、18年ぶりに『GR Garage』で再会したことに運命を感じました。日本人ゴールドメダリストの余計なものをすべて削ぎ落し、速く駆けることに必要なものだけで仕上がっている造形美が、日本を代表するスポーツカーに宿り、今度は“GRスープラ”がモータースポーツ、スポーツカーの世界でどう成長していくか、これからがさらに楽しみです。

『GRスープラ』のような俊敏な身のこなしで颯爽と会場に駆けつけてくれたチーフデザイナーの中村さん。さらにトークショーにまでご登壇いただき、来場者も大喜び
『GRスープラ』のような俊敏な身のこなしで颯爽と会場に駆けつけてくれたチーフデザイナーの中村さん。さらにトークショーにまでご登壇いただき、来場者も大喜び
無駄を削ぎ落し、必要なものだけを鍛え上げたアスリートの清水さんのスタイルに感動した話を中村さんがされて、みなビックリ!
無駄を削ぎ落し、必要なものだけを鍛え上げたアスリートの清水さんのスタイルに感動した話を中村さんがされて、みなビックリ!
『GR スープラ』を気に入った清水さん。チーフデザイナーの話を聞き、さらに親近感が湧いた
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チーフエンジニアの多田さん、チーフデザイナーの中村さん、ありがとうございました!
チーフエンジニアの多田さん、チーフデザイナーの中村さん、ありがとうございました!

(テキスト/写真:寺田昌弘・トヨタモビリティ東京)

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


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