大学自動車部ってどんなところ? -甲南大学編-

全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景やご自慢部員をレポート。今回は、兵庫県にある甲南大学体育会自動車部を訪問。関西でトップクラスの実力を誇る名門の秘密に迫ります。

甲南大学体育会自動車部プロフィール

●部員数:男子15名 ※部員数は2014年5月現在

●部車:ホンダ インテグラDC5 ※ジムカーナ用

●ホンダ インテグラDC2 ※ダート用

●活動内容:毎週水曜日にミーティング。整備作業は土曜日に実施し、試合前の週末はコースを借りて実技練習。

●活動実績:平成26年度 第1回全関西学生ダートトライアル選手権大会 団体2位
●平成25年度 全関西学生自動車連盟総合杯 団体優勝
●平成25年度 全日本学生ダートトライアル選手権大会 男子の部 個人優勝
●平成25年度 第1・2回全関西学生ダートトライアル選手権大会 団体優勝 など

名門の危機を救ったひとりの先輩

岡本キャンパスのちょうど中央あたりに位置する1号館。この建物の前はキャンパスのメインストリートです
このトロフィーの数が名門たる実力を物語っています
手前がミーティングスペース。奥のくつろぎスペースでは、何とRECAROのシートが座イスの替わりに!
今年は1回生が4名も入部。「きっちり体制を整備してレースに臨みたい」と主将の志水君

邸宅が並ぶ閑静な住宅街の中に甲南大学岡本キャンパスはあります。甲南大学は、戦後の教育改革が進む中、1951年に開学しました。岡本キャンパス以外にも、兵庫県西宮市の西宮キャンパス、神戸市中央区のポートアイランドキャンパスがあり、全部で8学部4研究科1専門大学院を有する総合大学です。在籍する学生の約7割が兵庫県内在住者ということで、地元ではとても親しまれた学び舎と言えます。
  
関西圏では上品でスマートな印象を持つ大学ともっぱら評判。ですが、スポーツ系の部活動も実は活発的で、海上文化都市の六甲アイランドに総合体育施設が整備されています。ここでは、各運動部が活動しており、今回うかがった自動車部もガレージを構えていました。
  
自動車部の部員は、4月にいったん現役を退いた4回生世代を含めると、全部で15名。現役活動部員としては、7名です。今回主に話をうかがったのは、主将の志水研太君(3回生)、主務担当の小林雅幸君(2回生)、そして、4回生の岡翔太君です。
  
ガレージ2階のミーティングスペースへ案内され、室内を見渡すとこれまでに獲得したトロフィーが飾られており、その数に驚かされました。
  
名門の片鱗をうかがわせる甲南大の自動車部ですが、「実は数年前までは廃部寸前に追い込まれていました」と岡君が意外な事実を告白します。「部員も少なく、クルマもボロボロで、もちろん大会成績も芳しくない。本当に危機だったと聞いています」と続ける志水君。そんな部の瀕死の状況を救ったのは、“竹本幸広”というひとりの偉大な先輩でした。

レジェンドの意志を受け継いでいく

猛煙を上げながら、果敢にアタックするホンダ インテグラDC2。ダートでは負けられない意地があります
「クルマに夢中の状態から抜け出せない」と話す岡君。卒業後はクルマ関係の仕事に就きたいとか
今年はジムカーナでも好成績を残して、さらなる飛躍をめざしたいと部員一同が燃えています
学年の垣根を超越して、皆がフレンドリーな自動車部

ウワサの竹本先輩は、テコ入れのため、まずはボロボロで戦闘力が低かった部の車両をチェンジ。これはOBからの寄贈ということですが、そのための理解活動に精を出しました。そしてこれを機に皆が気持ちを入れ替え、とにかく練習に明け暮れます。
  
岡君は練習走行で竹本先輩の横に座った経験があります。「とにかくムダのないステアリングさばきでクルマを操るんです。コーナーを回る時も、かなり鋭角に曲がり、絶妙にタイムロスを防いでいます」と圧倒されたそう。志水君も「雲の上の存在」と誉め称え、小林君は「レジェンド“竹本”」と大絶賛しています。
  
竹本先輩が起こした改革の後、甲南大学はダートトライアルで見事な成績を量産。以降、竹本DNAを受け継いだ後輩世代も、ダートトライアルで好成績を残し続けています。
  
ちなみに岡君は、昨夏栃木県で開かれた全日本学生ダートトライアル選手権大会で自己タイムを2.7秒も縮め、優勝を獲得。このほか平成25年度第2回全関西学生ダートトライアル選手権大会でも勝利。そして、関西の大学自動車部なら誰もが欲するタイトル、全関西学生自動車連盟総合杯では2年連続で甲南大学が一位を飾りました。これから部を牽引する志水君や小林君たちは、3連覇を成し遂げることを目標にしています。
  
「ダートではいいレースを展開できています。今年も春の全関西学生ダートトライアル選手権大会では団体で2位でした。でも僕は、ジムカーナが好きなので、今度はジムカーナでも甲南の存在感を大きくPRできたらいいなと思っています」と志水君。新たな活路を切り開くべく闘志に燃えています。

支えてくれるOBの期待に応えたい

「今クルマは、ミニバンやSUVが主流ですが、スポーツタイプも必ず需要がある」と小林君はキッパリ
六甲アイランドにある部のガレージは立派なリフト付き。阪神大震災前には建てられていたとか
車両をリフトアップすれば、ブレーキやサスペンションなど足回りの整備も楽々
ガレージの前ではフィギュアの練習も可能。OBから借りたトヨタ ヴィッツでトライ!

甲南大学自動車部は、竹本先輩だけでなく、やさしいOBの存在なくしては語れません。
  
以前、コースで練習していた時のこと。練習中にクルマがオーバーヒートを起こし、エンジンがまるっきり使えない状態に。部員は皆焦るばかりでした。そこで、OBの皆さんがクルマの購入費を持ち寄り、ホンダ インテグラDC2を寄贈。大会1週間前にそのクルマが部に届き、テスト期間と重なりましたが、全員で懸命に整備に取り組みました。結果、レースも授業の単位も無事手中に収めることができたのです。
  
「立派なガレージを残していただいたのもありがたい」と小林君。リフト付きのガレージで、ストレスなく整備ができます。また、フィギュアの試合前の練習期間中は、OBの方がトヨタ ヴィッツを貸してくださるとのこと。
  
OBの皆さんは、会長、副会長、監督、ヘッドコーチ、コーチ(多数)と、卒業後もそれぞれポジションを担い、現役部員を見守っています。世代もバラバラですが、皆さん気さくな方ばかり。可能な限りは練習や大会に顔を出し、愛ある助言で現役部員を鼓舞しています。
  
「支えられているから、活動できる。だからこそ、がんばりたい」と真剣な表情の志水君。ここ最近、主将としての自覚が強くなったようです。
  
最後にクルマへの思いを語ってもらうと、小林君は「僕からクルマを取ったら何が残るんだろうって思っています」とぞっこん。「クルマは移動手段としての便利さ以外の楽しみも与えてくれることを知ってほしい」と力説します。また、志水君は「幼少の頃からクルマ好きなので、僕の人生の礎です」とこちらもクルマへの愛情がたっぷり。最後に岡君が「ずっと付き合っていきたい存在かな」と美しい言葉でシメてくれました。

 強豪としての誇りを継承しようとする現役部員たち。次の“レジェンド”がこの中から生まれるかもしれません。


関連サイト
【Blog】甲南大学体育会自動車部

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road