MIRAIの車…TBS安東弘樹アナウンサー連載コラム

みなさま、お久しぶりです! 以前、GAZOOにインタビューを受け、紹介を頂いたTBSアナウンサーの安東弘樹と申します。これから暫くは、コラムという形で、クルマに関するあらゆることを、私の経験や色々な方との交流を通じて感じたことを綴っていきたいと思います。稚拙な文章ですが、暫くの間お付き合い頂ければ幸いです。

これまで、40台近くのクルマを全て「ローン」で買ってきた事や、新車が出るとほぼ全部のクルマに試乗するという話をさせて頂きましたが、新車でも、ショールームに中々展示されない様な希少車等は試乗する機会も限られます。

そんなクルマの一つが、TOYOTAの燃料電池自動車「MIRAI」です。その「MIRAI」に5月に乗る事が出来ました。TBSラジオで、土曜深夜に放送している「ライムスター・宇多丸のウィークエンド・シャッフル」という番組の取材で、東京都江東区のお台場MEGA WEBの中のライドワン(試乗)コースで運転をさせて頂いたのです。

これまで、電気自動車を含めて、あらゆる種類のクルマを運転して来ましたが、やはり水素で走る「MIRAI」は、独特のライドフィール(運転感覚)でした。電気自動車に近い「シュウィーン」という、如何にも未来のクルマという音を発して、文字通り滑る様に走ります。コースの最高速度が40km/hですので、もう少し速い速度での挙動は分かりませんが、高速道路を真っすぐ走る分には、さぞ快適である事が伺えました。

ワインディングロードを走ってみたい、という軽快感は有りませんが、もう20年以上前から、水素が燃料で純粋な「水」しか排出されない、燃料電池自動車や水素エンジンのクルマを夢見てきた私にとっては、正に夢が実現した瞬間でした。

唯、デザインに関しては、最近のTOYOTAのクルマの傾向でしょうか。かなり怖い顔で、僕には「プレデター」に見えました(笑)
​日本のクルマでデザイン的に難しいのが、駐車環境に制約が有る為、全長や高さに比べて幅を抑えなければならないので、所謂「箱」の様になったり、間延びしてしまいがちになる事です。「MIRAI」も幅がもう少し広ければ、全体のシルエットはよりスタイリッシュになったと思うのですが、如何でしょうか?

以前、アメリカの純電気自動車「TESRA(テスラ)」に試乗した時は、そのワイド&ローのシルエットに惚れ惚れしましたが、幅が1,964mmと聞いて、このシルエットはセンチュリーでさえ1,890mmで抑えなければならない、TOYOTAや、ましてや、他の日本メーカーで実現するのは不可能だなと納得しました(笑)
クルマというのは、つくづく、道によって、その性格が決まるのだな、と思います。

アメリカのクルマは、大きくてとにかく真っすぐゆったり走るのに適していますし、フランスのクルマは、石畳を走るのに適した「足」になるし、ドイツのクルマはコンパクトカーでも180km/hでアウトバーンを巡航出来る様に考えて造られています。​​

​​そして日本のクルマは環境的にストップ&ゴーが多いため、平均スピードが遅く、乗り降りの回数も多いので、ガソリンハイブリッド車が一番効率良く、シートも柔らかく、フラットな形状のものが一般的です。

​​最近は、各国のメーカー、それぞれ技術も進んで来ましたし、全体として、マーケットがグローバル化してきた事も有り、同じベクトルでクルマが造られる傾向はありますが、やはり、それぞれのメーカーの国の道や使われる環境が劇的に変わらない限り、特徴は残っていくと思います。

ちなみに私は、年間4万キロ以上(一日平均100キロ以上です)しかも、その半分は高速道路を使って走っているので、残念ながら?日本のクルマより、ドイツのクルマが合っているかもしれません。​​

​​東京から宮崎まで、食事とトイレ以外はノンストップ。新潟まではトイレにも寄らずに完全ノンストップ。京都には日帰りでクルマで往復、という私は、乗り降りの便利さより3時間~5時間座りっぱなしでも、身体が沈み込まない様なシートや高速で長時間走って燃費が良くなるパワーユニット(動力源・エンジンやモーター等)のクルマを、求めてしまいます。

実際に、以前一週間、同じクラスのハイブリッドとディーゼルのクルマをお借りして比較してみましたが、両車、面白い程、同じ位の燃費でランニングコストは30%安い軽油で走るディーゼル車の圧勝、という事になってしまいました。​​

​​さて、表題の「MIRAIのクルマ」ですが、50年後は、全てのクルマが水素で走っているかもしれませんが、10年後20年後という近未来に関しては、これ一つ、というより、使い方によって、ユーザーが自分に合ったクルマを選ぶのが効率的なのではないでしょうか?

そう考えた時、今の日本では選べるクルマ、というより選べるパワーユニットやパワートレーン(トランスミッション等、動力伝達装置)が少ないのが気になります。​​

今の日本では一社を除いてパワーユニットはガソリンエンジンとガソリンハイブリッドだけで、パワートレーンは、大半がCVTかトルクコンバーターの、所謂、ATで占められています。​​

しかも、1車種に対して選べるパワーユニットはハイブリッドを含めて2種類か3種類。パワートレーンは2種類だけ、というのが一般的です。​​

​​ちなみに、ドイツ車の代表的な存在である、BMWの3シリーズ、本国では、ディーゼル7種類、ガソリン4種類、ハイブリッド1種類の、計12種類のパワーユニットを選べます。もうすぐ、プラグインハイブリッドもラインナップされるので、更に増える様です。正に、自分に合ったパワーユニットを選び放題?という状況です。

ヨーロッパ、とくにドイツのメーカーは、先進ユニットを開発しながらも、内燃機関が、その役割を完全に終えるまで、開発の手を緩めず、より高燃費の、よりハイパワーの「エンジン」を造り続け、そして運転する歓びを、更に追い求めている様な気がします。​​

​​一方、日本メーカーは、内燃機関にはもう見切りを付けてモーターや燃料電池にシフトして、先進パワーユニットに開発を集中させ、ひいては自動運転を目標にしているメーカーもあります。

​​どちらが良いとは言えませんが、古いタイプのクルマ好きの私は、未だにマニュアルトランスミッションを駆使してのエンジンのクルマの運転が捨てられないので、今の運転感覚のある究極のゼロエミッションカーを待ち望んでいます。

​​今の所、僕にとっての究極の「MIRAIのクルマ」は水素を燃料とする水素内燃機関エンジンのマニュアル車です。

共感して下さる方は、いらっしゃるでしょうか?!
今度は、道路行政や、教習所のあり方等についても言及してみたいと思います! ​​

​​では、また次回!​

(テキスト/安東弘樹、画像提供/ライムスター・宇多丸氏)

[ガズ―編集部]