クルマとバイクをこよなく愛する22歳の若者が惚れ込んだ1台。トヨタ・チェイサー ツアラーV(JZX100型)

ただひたすら、夜な夜なクルマやバイクで走るのが楽しい…。たとえ、睡眠時間や昼食代を削ってでもガソリン代を優先し、仕事が終わり、夜になると走りに出掛けた…。そんな記憶はあるだろうか?

年齢を重ねていくうちに体力と気力が衰えていき、さらに疲労も蓄積していく。やがて、わざわざ深夜に出掛けること自体が億劫になっていく…。明け方まで走り回り、ほとんど寝ないでそのまま出勤する。そんな無茶ができるのも、若いときの特権だと思う。今回は、20代前半でクルマとバイクの趣味を謳歌し、存分に楽しんでいる若者を紹介したい。

「このクルマは1999年式トヨタ・チェイサー ツアラーV(以下、チェイサー)、所有して約10ヶ月です。現在、私は22歳になりますが、自身の愛車としてはこれが2台目です。もうひとつの趣味であるバイクは、高校生の頃から乗っているので、現在の愛車のカワサキ・Ninja ZX-10Rで7台目くらいになります。思い返すと、バイクだけでもずいぶんお金を使っちゃいましたね…(笑)」。

JZX100型のマークII・チェイサー・クレスタは、1996年にデビューを果たした。クルマ好きの間では「ヒャクのマークII/チェイサー/クレスタ」と呼ばれているようだ。中でもチェイサーは、スポーツセダンの色合いが強い(正確にはセダンではなく、4ドアピラード ハードトップだ)。1997年からは、JTCC(全日本ツーリングカー選手権)において、コロナ Exivに代わって参戦したことを記憶している人も多いだろう。ちなみに、車名のチェイサーは、英語で「追跡車」を意味する。

チェイサーのボディサイズは全長×全幅×全高4715x1755x1400mm。オーナーが所有する「ツアラーV」には、「1JZ-GTE」と呼ばれる、排気量2491cc、直列6気筒DOHCターボエンジンが搭載され、最大出力は280馬力を誇る。先代モデルにあたるJZX90型から設定されたスポーツグレードにあたるツアラーだが、ターボ車には「ツアラーV」、ノンターボ車には「ツアラーS」の名称が与えられた。なお、JZX100型では、排気量1988cc直列6気筒DOHCエンジンを搭載した「ツアラー」も用意された。もっともハイパワーなモデルにあたる「ツアラーV」には5速MT車が設定されたが、販売台数が少なかったこともあり、その希少価値から中古車市場において高値で取り引きされた。そのため、AT車をベースにMT仕様に変更された個体も存在する。

自身にとって、このチェイサーが2台目の愛車とのことだが、なぜこのクルマを選んだのか、その経緯を伺ってみた。

「最初の愛車は、ダイハツ・ミラ L700VをベースにURASが仕上げたデモカーでした。オーディオに凝ったりして楽しんでいましたが、次第にパワー不足を感じるようになったんです。私は4ドアセダンが好きなので、ランエボかインプレッサあたりを次の愛車に考えていました。すると、たまたま先輩がチェイサーに乗っていて、駆動方式がFRのセダンもアリかも…と思うようになり、ようやく見つけたクルマが現在の愛車です。マークIIでもクレスタでもなく、スポーティなイメージの強いチェイサーに的を絞って探しました」。

先輩…とのことだが、オーナーと年齢が近い人もいるのだろうか?

「1、2歳年上の先輩もいますよ!今、チェイサーに装着しているマフラーも先輩から譲っていただいたものですし。『若者のクルマ離れ』といわれている現状も知っていますが、スバル・BRZや、BMW・M3に乗っている同級生もいます。少なくとも私の周りでは、クルマやバイクが好きな仲間が多い印象です」。

では、実際にチェイサーを手に入れてみてどうだったのだろうか?

「やはり、パワーがあるクルマは楽しいですよね。直6エンジンの音、そして吹き上がりが本当に気持ち良いです。納車した翌月には北海道までドライブに行きましたし、このときだけで3000キロくらい走ったように思います。とにかく今は運転するのが楽しくて仕方ないですね。現在、オドメーターは12万キロ台を刻んでいますが、この個体はメーターを交換しているようなので、実際には17万キロくらいだと思います」。

オーナーの個体は、生産から20年近く、17万キロを走った個体とは思えないほど美しいコンディションを保っているように見える。やはり、この状態を維持するために気を遣っているのだろうか?

「父もクルマが好きで、現在は、マツダ・ロードスター(NC型)を所有しています。これまで軽く10数台は乗り継いできたようです。父はモディファイには興味がないようですが、洗車が大好きで、洗車するときはKärcher製の洗浄機で汚れを落としています。私もその影響を受けたのか、小まめに洗車する方だと思います。この個体のボディカラーは『スーパーホワイト』なのですが、とにかく汚れが目立ちます。今年の春はスギ花粉が多く飛んだので、すぐに汚れて大変でした」。

自分好みのクルマを所有できただけに、モディファイにも興味津々のようだ。

「私がこの個体を購入した時点でMT仕様になっていましたが、メーターにはシフト位置を示す表示がありますし、元々はAT車だったようです。フロントバンパーは伊藤オートサービス製、サイドマッドガードとリアバンパースポイラーは純正オプション品、そして、メーカーは不明ですが、フロントインタークーラーは過去のオーナーさんが取り付けたようです。私が所有してからは、SUPER STAR製レオンハルト ゲミュート アルミホイール、TOMEI製デフ、BLITZ製サスペンション、KTS製調整式リアアッパーアーム、スパルコ製バケットシート、MOMO製ステアリングなどを交換しています」。

このチェイサーも、まもなく20年選手だ。気になるのは純正部品の供給状態だが…。

「JZX100型のチェイサーは、ディーラーで注文しても問題なく買えます。欠品という話も、まだ聞こえてこないですね。その点はありがたいですね」。

最後に、この愛車と今後どのように接していきたいか伺ってみた。

「いずれは、URAS製フルアエロを組んでみたり、まだまだモディファイしたいところがたくさんあります。できるだけ長く乗りたいですし、まずはコンディションを維持していくことが最優先だと思っています。このチェイサーとバイク(Ninja ZX-10R)をそのときの気分で乗り分けて、当面はクルマとバイクの両方を楽しみたいですね」。

クルマ、そしてバイクも、所有してみてはじめて分かることや、得られるものが必ずあるはずだ。確かに、レンタルやカーシェアリング等を利用する方がお手軽だし、余計な維持費も掛からずに済むだろう。しかし、所詮は「借りモノ」だ。自分好みに仕上げていくことなんてもちろんできないし、期限までに返却しなくてはならない。

自分で稼いだお金で、念願の「愛車」と呼べるクルマやバイクを手に入れ、モディファイし、走りにいく。そして帰ってきたら丹念に磨き上げる。こんな日常を、気のおけない仲間と過ごすことができたら最高だ。人それぞれ、さまざまな価値観があるだろうが、敢えていうなら、こんな素晴らしい体験をすることなく年老いていくのは、あまりにも寂しいではないか。

若い世代の方で、愛車を持つことに二の足を踏んでいる方がいるとしたら…。「残された時間は意外なほど短い」とお伝えしておきたい。22歳の若きオーナーは、まさに青春を謳歌しているようだ。それがとても眩しく、同時に心底羨ましいと感じた取材となった。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road