4AGを搭載する希少なカローラワゴン、サーキット走行もしつつ50万kmまで楽しむための努力とは?

新たな愛車を選ぼうと考えたとき、レジャーで活用するならSUVやステーションワゴン、サーキットなどでスポーツ走行を楽しみたいならスポーツクーペといったように、使用するシーンや目的に合わせて選ぶのが正攻法といえるだろう。もちろん、自動車メーカー各社もそういった購入者のニーズに合わせてカーラインアップを取り揃えている。
しかし、時に自動車メーカーはジャンルをクロスオーバーさせた唯一無二のエポックメイキングなモデルをラインアップすることもある。
そんな意外性に心を奪われ、1997年式のカローラワゴン・BZツーリング(AE101G)を愛車として迎え入れたのがササヨシさんだ。

『カロゴン』の愛称で90年代に一世を風靡した100系カローラワゴン。空前の2BOXブームの波に乗り、レジャーを楽しむためのファミリーカーとしてはもちろん、カスタマイズのベース車としても人気となったモデルだ。
しかしカロゴンのなかでもBZツーリングというグレードは、レジャーやカスタマイズなどのニーズとは一線を画し、AE111型のレビン/トレノに搭載されたツインカム20バルブ版4A-GEエンジンにマニュアルミッションを組み合わせた硬派なスポーツワゴンである。

そんなカローラワゴン・BZツーリングとの出会いは、まだ東京の専門学校に通っていた頃。他人と被らない車両を探していたところ、カローラワゴンに4A-GE搭載のMTモデルが存在していることを知ったというササヨシさん。
その中でも6速MTが搭載された後期型で、ボディカラーもナイトシェードトーニングⅡに限定して探しまわり、走行距離3万8000キロの極上車と出会うことができたのは、専門学校卒業後に地元に戻った3年ほど前のことだという。

「当時はまだ中古車情報でも7〜8台は掲載されていたんですけど、ほとんどがAT車でした。そんな中で見つけたこの車体は、狙い通りのボディカラーで、フルノーマルのうえ走行距離も短かい奇跡の1台だったんです。それから3年が経過しましたが、年間2万キロほど乗っているので、すでに走行10万キロを超えちゃいましたよ。それだけ走らせることが楽しく感じられるのは、この意外性があるキャラクターが影響しているのかもしれませんね」
購入後は地元の青森県にある藤沢サーキットをはじめ宮城県のスポーツランドSUGO、茨城県の筑波サーキット、さらには愛知県のオートランド作手などで開催される走行会に定期的に参加。またJAFが開催しているオートテストにもエントリーし、ステーションワゴンでもサーキット走行を楽しめることを実証しているのだ。

もともとスポーツカーでサーキット走行を考えていたササヨシさんにとって、このクルマは意外なメリットをもたらしてくれたという。
というのも、サーキットで履き替えるタイヤや整備用の工具などを積み込むためには、スポーツクーペではスペース不足になりがち。しかしワゴンボディなら必要なモノを満載してサーキットに行くことができるのだ。
ササヨシさんはこのメリットを最大限に生かし、交換用のタイヤや工具一式を搭載し、どこのサーキットにもすべて自走で会場入りしているという。

ちなみに、ササヨシさんがこのクルマに狙いをつけた最大の理由とも言えるエンジンは、名機4A-GEの中でも20バルブに進化し最大出力を165psにまで高められた通称“黒ヘッド”。そのポテンシャルは高く、筑波サーキットコース1000でのベストタイムは47秒台をマークしているとのこと。

また、吸排気系のアップグレードやサーキット走行に合わせてオイルクーラーを増設したりと、徐々にスペックアップを楽しんでいるのも見どころ。もちろんオイルクーラーなどのパーツはカローラワゴン用のラインアップはないため、AE111用のブラケットを加工しながら装着するなど、同系のパーツ流用情報なども勉強しながらカスタムを進めているという。
「もともと4連スロットルが標準装備されていてレスポンスの良いエンジンですが、TODA製のファンネルに変えたらさらに吹け上がりが良くなりました。このエンジン自体の素性がいいため、ちょっとしたパーツ交換でもその効果が体感できるので、スポーツカー以上にスポーティなクルマなんじゃないかって思っていますよ」

サーキットでの走行前チェックはもちろん、自分でできる作業は自分でおこなうというササヨシさん。そのためラゲッジには整備用の工具なども積み込み、いつ何が起こっても対応できるように準備しているという。
「整備全般は自分でやるのが基本になっています。整備だけでなくサーキットをもっと楽しむためのカスタマイズにもチャレンジしようと思って、LSDの装着やフロアなどの補強バー関連を追加することも考えています」
ワゴンというボディ形状のため、セダンやクーペよりも剛性感が落ちるのは仕方のないところ。そういったウィークポイントを解消することで、より楽しく走れるクルマに仕上げていくことも醍醐味のひとつというわけだ。

インテリアに関しては、友人から譲ってもらったMOMOステアリングを装着したのみ。純正でホワイトメーターが備わっていたり、ホールド性の高いシート形状が採用されていたりと、走りに特化したBZツーリングだからこそ、純正のままでも楽しめているという。
とはいっても、シートに関してはサーキットを走るうえで体がズレてしまうため、今後はバケットシートの装着も検討しているのだとか。

20バルブの4A-GEを搭載するだけでなく、後期モデルで採用された6速MTもササヨシさんこだわりの装備。ボディスタイルこそ違うものの、パワー/ドライブトレインはすべてAE111であることが、意表を突いたサーキットマシンとして楽しめるアイデンティティにもなり得ているのだ。

足まわりはカローラGT用のラルグス製車高調を流用して装着。自走でサーキットまで往復するための快適性も考慮し、ストリートとサーキットの中間を狙ったセッティングを施しているという。
おなじくタイヤもストリートとサーキットを両立できるよう、ハイグリップラジアルのプロクセスR1Rを組み合わせていた。

音質に惚れ込んだ柿本改のマフラーはAE111用を流用。ボディサイズがカローラワゴンの方が若干長いため、マフラーのエンドが内側に収まっているのはご愛嬌とのことだ。

ヘッドライトとフォグランプはイエローバルブでクラシカルな印象を作り出している。外装は純正をキープしているものの、今狙っているパーツは純正オプションとして用意されていたリヤゲートスポイラーとリヤサイドアンダースポイラーだという。これらのアイテムをインターネットオークションなどでチェックし、予算とタイミングが合えば手に入れたいというのも今後の目標なのだとか。

「実はこのクルマが好きすぎて、部品取りとしてもう1台ストックしているんですよ」というササヨシさんは現在26才ながら、このカロゴンからもわかるようにネオクラシックカーがストライクゾーンだという。そのためカロゴンと部品取り車だけでなく、平成初期のカローラレビンやパジェロなども所有している。今の時代にはない特徴的なクルマを好むセンスは、マニアックと呼んでも差し障りはないだろう。

「同じエンジンを積んだ知人のクルマが走行40万キロを突破しているんですよ。その走行距離と比べれば現在の10万6000キロはまだまだこれからって感じです。だから今後も街乗りからドライブ、サーキット走行とガンガン走りまくっていきたいですね」
長く乗り続けることを考えてオイル交換は3000〜4000キロごとに行っているだけでなく、使用するオイルもいろいろ試しながら最適なアイテムを見つけ出すなど、50万キロまで楽しむための努力も怠ってはいない。
レビン&トレノとはひと味違った“スポーティなステーションワゴン”というパッケージだからこそ、実用車でサーキットも楽しみたいササヨシさんにとって、唯一無二の相棒となり得えているようだ。

取材協力:盛岡競馬場(OROパーク)

(文:渡辺大輔 / 撮影:金子信敏)

[GAZOO編集部]