父親から引き継いだマークII(JZX105)。雪道も楽しく走れる4WD車を自分好みに愛でる

2010年にお父様が突然亡くなってしまったことをキッカケに、お父様が乗っていたトヨタ・マークⅡグランデFour Gパッケージ(JZX105)を引き継いだという金野竜さん。
「スポーツカー好きだった親父があるとき何を思ったかオートマのマークⅡに乗るって言い始めたんですよ。いやいや、いつも『オートマは嫌だ』って言ってたじゃん!って突っ込んじゃいました(笑)。父親の形見だからとかそんなカッコいいもんじゃなくて、走行距離も4万5000kmと程度のいいクルマだったので、手放すのは勿体ないないかなと思ったんです」
また、長くスカイラインに乗り続けていたお父様が、いきなり購入してきたマークⅡがどんなクルマなのか?少し気になったことも、引き取った理由のひとつだという。

金野さんのマークⅡは、1996年にフルモデルチェンジを受けた“100系”と呼ばれる8代目モデル。
自然吸気の1JZ-GE型エンジンを搭載し、電子制御フルタイム4WDシステム『i-Four』を採用したグレードだ。

「冬はスキーの指導員を友達とやっているんですけど、このクルマにスーリーのボックスを付けて行ったら、FR 車のイメージが強いみたいで『お前達!危ないだろ!何考えてんだ!』って言われるんです。そこで、このクルマは4WDだよと伝えると『えっ、マークIIに 4WDってあるの!?』というやり取りが恒例になっていますね(笑)。寒冷地仕様ではないんですけど、雪道も本当によく走ってくれますよ。スタッドレスタイヤを履いていれば、フカフカの雪道なら曲がれないかもと思っても、4WDだからブーンと力強く走っていくんです。すごく楽しいクルマですよ」

ターボと間違われるくらいのパワー感とアクセルレスポンス、そしてエンジン回転の伸びは、むき出しのエアクリーナー取り換えによる効果が大きいという。最初は程々の大きさからスタートし、じわじわとサイズを変えていった結果、今の大きさに落ち着いたのだそうだ。ちなみに、米国製K&N社製汎用品を金野さんがインテークパイプ加工して取り付けた自作品となっている。
ほかにもエンジンの性能を最大限に引き出すためにNGKのRXプラグを装着したり、高速道路での走行安定性能を高めるためにスポイラーを追加したりと、自分なりに改良を加えているのだと楽しそうに教えてくれた。

「走りはヨーロッパ車っぽいフラットライドな感じを目指して仕上げているんです。カヤバのNEW SRダンパーとツアラーVのスタビライザーを追加して、純正装着の16インチに留めつつタイヤの扁平率を上げたことで、大分それっぽくなりました」

金野さんがあまりに楽しそうに運転するので、一緒にスキーに行っっていた友人も同じマークⅡに乗りたいと探し始めたものの、4WDの1JZ-GE型エンジン搭載車はなかなか見つからなかったというそうです。
「結局、110系のマークⅡグランデG four JZX115という型を購入していましたよ。なんでも、友人のマークⅡは、数百台しか生産されてないそうです。本当にそうだったとしたら、貴重なクルマに乗れて良かったねと言っときました(笑)。僕のも4WDなのに寒冷地仕様じゃないという貴重な個体だそうです」

内外装はこの年式なりの良さを崩してしまいたくないとのことで、なるべくノーマルからかけ離れないように意識しつつカスタムを楽しんでいるという。
「例えばグリルなんですけど、本来のグリルは全体がメッキなので、ちょっとゴージャス過ぎるというか、バブリーな感じがするかな?と、僕は気になっていたんです。だから、メッキが横に5本引いてあるところを、2本だけカーボンで黒にしています。ブラックアウトしないでメッキを減らしたって感じですかね。メルセデスのグリルデザイン3本線メッキを見て閃いたんですけど、実際にやってみると“やりました”感もなくていい塩梅になったかなと思っています。クラウンで言うところの、アスリートみたいな雰囲気になったんじゃないかと…言い過ぎですかね(笑)?」

リアトランクスポイラーにもこだわりがあり、トランクのエッジ部分に合わせて貼るとトランク長が引っ込んで見えてしまうため、バランスを見ながら何度も張り直し、ちょうど良い場所を探し当てたそうだ。貼る場所によっては猫背っぽく見えてしまうとのことで『かなり苦労した』と語る横顔は職人の顔つきだった。
ほかにもマークⅡグリルエンブレムをトヨタエンブレムに付け替えたり、サイドシル部分をボディと同色に塗ったりというカスタムに加え、当時の雰囲気を壊さないように意識している部分もあるという。

「マークⅡには駐車時の目印になる“電動ポール”が付いているんですけど、そういう昭和な世界観を崩さないようにしているんです。今となっては見かけませんけどね、」
また、ヘッドライトはLEDに変えているものの、あえて青白いものではなくハロゲンのような色具合をチョイスしているという。

そんな金野さんはもともとかなりのヨーロッパ車好きで、アルファロメオ・155ツインスパーク16Vスポルティーバをワンオーナーで16年間所有していたこともあるという。購入する時に『故障するから修理が大変だよ!』とは言われていたそうだが、実際は「噂どころではなかった」と何とも言えない表情を見せた。
愛情も修理維持費も注いだ愛車アルファ155について伺うと、
「2011年の東日本大震災で津波に流されてしまったんです。僕はその日に限ってアルファ155で出勤していたんですが、今まで体験したことのないような地震が起こって津波がきました。クルマを高いところに移動させないと!と思って駆け寄ろうとしたんですが…あの、嘘のように聞こえちゃうかもしれないんですけど「来るな!来るな!!」て聞こえたんですよ。本当に、確かに2言聞こえました」

「それで我に返って、とりあえず建物の3階まで逃げたんですけど、そのあとすぐに津波がブワァっときてアルファ155は津波に持っていかれました。間一髪だったと思います。ブルブル震えて、動悸がしたのを今でも覚えていますね。思い違いと言われるとそれまでだけど、あれは絶対に愛車が僕を救ってくれたに違いないです。散々苦労させられたけど、愛着を持っていたから、最後に助けてくれたのかな。そういうこともあって、マークⅡの走り味をアルファ155に近づけたかったというのはあるかもしれませんね。どちらにせよアルファ155もマークIIもいいクルマですよ。機会があったらぜひ乗って欲しいくらいです!」

「今のようにクルマ趣味と仕事をできているのは家族の理解があってこそ」と語る金野さん。
現在はマークIIのほかにもロードスターやスズキ・ワゴンRなど合計4台を所有し、用途や気分によって使い分けているという。
また、奥様もクルマ好きでプジョー・106XSiと三菱・i-MiEVのシトロエン版である『C-ゼロ』を所有、息子さんはマツダ・ロードスターとスバル・プレオ、娘さんは日産・デイズと家族で合計9台。さらに、趣味が高じて自動車整備などをおこなう事業も立ち上げ、販売用の車両なども含めさまざまなクルマが身近にある生活を楽しんでいる。
なかでもマークIIは移動手段としての役割が強いクルマではあるものの、忘れられない思い出が詰まっていると話してくれた。気づけば所有歴は12年が経過し、走行距離も14万7000キロを超えているという。長く愛したアルファ155のように、今度もマークⅡとの時を刻んでいくことだろう。

取材協力:盛岡競馬場(OROパーク)

(文 : 矢田部明子 / 撮影 : 平野 陽)

[GAZOO編集部]