ボクサーサウンドを子守唄に、幼少期からスバル車ひとすじで育ったWRXオーナーのスバル愛

クルマ好きの中には、特定のメーカーや車種にこだわりを持つファンが存在するが、なかでもSUBARU(スバル)はそういったファンのことを表現する『スバリスト』という言葉が広く知られている。

そして今回、新潟で開催した取材会にお越しいただいた2014年式VAB型スバル・WRX STI Type Sオーナーの渡辺直樹さん(29才)は、まさにその『スバリスト』という言葉がふさわしい人物だ。

「中学生のころに深夜テレビで見たWRCでスバルが活躍している姿を見てから、ずっとスバルのクルマに憧れて育ってきました」

当時、WRXの前身となる4ドアボディのインプレッサでWRC(世界ラリー選手権)に参戦していたスバル。父親がスバル・レガシィ(BH5)に乗っていたこともスバルに愛着を持った理由のひとつというが、それ以外にも渡辺さんが特にインプレッサという車種にこだわりを持つようになった理由があるという。

「自分は1992年生まれなんですが、インプレッサの歴史を調べていったら、初代インプレッサが発売された年も1992年ということを知ったんです。ただの偶然ですが、不思議とそのことに縁を覚えて、よりインプレッサに興味を持って将来乗りたいと思うようになっていきましたね」

農家を営む実家で育ち、身近に農機具などの機械があったことからメカにも興味を持つようになったという渡辺さん。高校を卒業すると整備専門学校へ進学し、現在は建築関係の重機などに携わる整備士の職に就いているという。

免許を取得した19才からは父親の所有していたレガシィを借りて乗るようになり、ここで初めて運転席で水平対向エンジンのフィーリングとサウンドを味わうことに。そして、そのままの勢いで20才となった年には晴れて初マイカーを購入。車種はもちろんインプレッサWRXだ。

「ヘッドライトが涙目のGDB型インプレッサでした。もちろん前期の丸目のほうもWRCのイメージが強いと思いますが、自分にとっては思い入れのあるペター・ソルベルグ選手が日本初開催のラリージャパンで優勝を飾った2004年のモデルが涙目ということと、中古車屋をめぐって程度が良かった車体だったこともあってこちらを選びました」

当時は残念ながら北海道で開催されたラリージャパンの現地観戦こそできなかったものの、購入前から『2004年ラリージャパン仕様のレプリカ車両を作って自分で乗りたい』という思いを強く抱いていたという。

「まずは同じ型のバンパーを手に入れるところから始まって、レプリカ用のグラフィックの制作が得意なお店に頼んで作ってもらったステッカーを自宅に送ってもらって、自分で施工してレプリカ仕様に仕上げました」

自動車整備士としてのノウハウを活かし、日々のメンテナンスや修理はもちろん、アフターパーツへと交換するカスタムや、こういったレプリカ車両の製作まで自分で行うことで、手間をかける代わりに費用面を抑えることができたという渡辺さん。

レプリカ車両として満足のいく完成度となり、愛着あるクルマとして普段乗りを続けていたそうだが、5年前に突然エンジンブローのトラブルに遭遇してしまったという。

「通勤途中でエンジンが壊れてクルマがまったく動かなくなったんです。エンジンを直してまた乗り続けるかどうかを悩んでいたところに、知り合いのディーラーの方からちょうどいいVABの中古があるよ、と紹介してもらったんです」

それが現在の愛車であるVAB型WRXとなるわけだが、当初は通勤を中心とした用途の利便性を考え、レヴォーグなどの選択肢も考えていたという。

「でも、ずっとスバルのモータースポーツを追いかけていたのでニュルブルクリンクでの活躍も見ていたし、試乗してみたらフィーリングも良く、EJ20型エンジンが載っている最終型のモデルということもあって、やっぱり最終的にはVABを選んでしまいました」

もともとスバルがWRCに参戦するためにチューンしたインプレッサに与えられた『WRX』という名称が、車両名として独立して冠されたVAB型WRX STI。先代の3代目インプレッサよりもボディ剛性が高められるなど、スバルを代表するスポーツカーとして仕上げられたモデルだ。

購入したグレードは専用サスペンションや大径ホイールなどが標準装備された上位モデルのSTIタイプSだというが、インプレッサに乗っていたころと同様に、気になる点は自身の手でカスタムを加えているという。

スバルブルーに映えるスポーツカーらしさを意識し、ホワイトカラーを選んだというホイールはワークエモーションD9Rをチョイス。ボンネットのエアスクープは、よく見るとノーマル仕様よりも大型の後付けタイプに交換済み。これはGDB時代のデザインが好みでそのイメージを踏襲したそうだ。

渡辺さんのWRXは前期型で、本来はリップスポイラーのカラーリングは黒1色の設定だが、後期型からリップスポイラーのラバーガードがSTIカラーのピンクになったことに着目。前期型への適合は不明だったものの、注文して取り付けてみたところ、意外とあっさり装着できたそうだ。

昨年からは新しい趣味を始めようと、WRXでのソロキャンプをスタートしたという渡辺さん。リヤウインドウに貼られたこれらのステッカーは愛着のある地元新潟にあるキャンプ用品メーカーのもの。

ちなみにスノーピークのステッカーは、ファンの聖地として知られる新潟県三条市のヘッドクォーターズの現地でしか販売されていない限定品だ。

前後に追加されたアライモータスポーツ製のマッドフラップは雪国新潟の必需品かと思いきや、ラリーカーらしさをアップさせるためのドレスアップ目的とのこと。
取り付けはビス止めとなるため、納車1週間で車体に穴を開けることになり、その思い切りの良さは購入元のディーラーから驚かれたというエピソードも。

WRX STIが愛車となってから5年目となり、新たな刺激を求めて今後はマフラーや車高調を交換したり、以前のレプリカ仕様を作ったようにドレスアップ方面にも力を入れて行こうかと悩んでいるという渡辺さん。

それもあってか、昨年からは冬シーズンと通勤に使用するためのセカンドカーを購入。当然のことながらメーカーはスバル一択、車種は運転が楽なCVTに乗ってみたいということで選んだR2とのことだ。

そんなスバル車の魅力を「乗っていて気持ちいい加速感のあるエンジンフィーリングと安定感」と話す渡辺さん。幼少期から父親のレガシィで育った渡辺さんにとっては、EJ20が奏でる水平対向エンジンのボクサーサウンドは、例えるなら赤ん坊にとっての子守唄のようなものに違いない。

それが響く愛車の車内は、ゆりかごのように心が落ち着く空間だと思えるのも、決して不思議ではないだろう。

取材協力:万代テラス

(⽂:長谷川実路 / 撮影:岩島浩樹)

[GAZOO編集部]

MORIZO on the Road