ホットハッチ好きな20代オーナーの愛車の型式はHN15改、日産・パルサーセリエ 2.0 オーテックバージョン

ソニー損保が年始に発表している「新成人のカーライフ意識調査」によると、2017年の新成人が欲しいクルマの総合1位にはトヨタ・プリウスが返り咲き、女性の1位は日産・キューブという結果になったという。運転免許も、年々AT車限定の割合が増えつつあるようで、今や半数以上を占めている。MT車を運転することなく年齢を重ねていく世代が今後も増えていくことが予想される。もしかしたら、いずれは自動運転のクルマしか乗ったことないという世代が現れるかもしれない。

今回の日産・パルサーセリエ 2.0 オーテックバージョン(以下、パルサー)のオーナーの年齢は25歳。今年の新成人より、少し先輩にあたる世代だ。

「自分で所有してみたいと思った最初のクルマはマツダ・RX-7(FD3S型)なんです。RE雨宮がGT選手権に出場していたマシンのフォルムに惚れ込んだことがきっかけです。1998年〜99年頃のデザインが特に好きですね。学生時代は自動車関連の専門学校に通っていたので、そのときに実習で整備した日産・スカイラインGT-R(R32型)のアテーサE-TS(電子制御スポーツ4WDシステム)にも舌を巻きました。それでも自分のクルマにしたいとは思わなかったです。やはりホットハッチが好きですね」。

パルサーといえば、R32型スカイラインGT-Rと同時期に発売されていた「GTI-R」をはじめとして、3ドアハッチバックモデルを思い浮かべる人も多いはずだ(4ドアセダンなども存在した)。オーナーが所有するN15型パルサーから3ドアの車名は「パルサー セリエ」となった。中でも、当時のスポーツグレードにあたるGTIをベースにオーテックジャパンが手を加えたスペシャルモデルが、この 2.0 オーテックバージョンなのだ。型式はHN15改。この「改」の文字は、オーナーにとっても誇らしくあり、密かな自慢だろう。

エンジンはS13型シルビアなどに搭載されていたSR20型エンジンをベースにハイカムなどが組み込まれている。そのため、ノーマルのSR20型エンジンのレッドゾーンが7000rpmなのに対して、このモデルは7500rpmまで引き上げられているという。販売時よりFUJITSUBO製マフラーが組み込まれ、4気筒エンジン独特の音色を轟かせる。また、専用バンパーやリアスポイラーなど、オーテックバージョンに相応しい装備となっていた。

「このパルサーは人生で2台目の愛車となります。手に入れてからまもなく1年になります。以前はフォード・フォーカスST170を所有していたのですが、事故で廃車にしてしまいました。そこで職場の先輩のアドバイスもあり、次の愛車を探していたときに出会ったのがこのクルマなんです」。オーナーにとって最初の愛車となったフォード・フォーカスST170も、当時のフォーカスのハイパフォーマンスモデルにあたる。このモデル専用の2Lエンジンに6速MTが搭載され、3ドアハッチバック…。パルサーの他には日産・プリメーラも次期愛車の候補に挙がっていたようだが、奇しくも似たようなキャラクターのクルマを手に入れたというわけだ。

「本来はオーテックバージョンのバンパーを装着しているはずですが、この個体は、私が手に入れたときから前期型のノーマルタイプのものに交換されており、サイドステップも外されていました。そのため、この個体がオーテックバージョンだと判別できるのはリアスポイラーくらいでしょうか」。この個体には前オーナーのものだろうか、走りの勲章ともいうべき傷がそのまま残されており、さらにグリルレスの佇まいがスパルタンな雰囲気を漂わせている。

オーナーがこのパルサーを手に入れてからモディファイした箇所は、フロントとリアでカラーリングが異なるSSR製MK-2Rホイール、NISMO製ダウンスプリング、AAR製フルバケットシートや、フォード・フォーカス時代から愛用しているOMP製フルハーネス、シフトノブなど。オーナーの仕事は自動車のメカニックであり、クルマのメンテナンスに関するプロフェッショナルだ。この種の部品交換なら朝飯前の作業だろう。

「このパルサーが現行モデルだったとき、当時のオーナーたちがモディファイしたイメージを自分なりに膨らませながら手を加えています。AAR製シートも、当時の雑誌広告で見つけてひと目で気に入り、インターネットオークションで手に入れました。また以前より、ハッチバックにはSSR製のこのホイールが似合うと思っていたので、ようやく装着することができて嬉しいです」。このパルサーは1996年式。生産されたのはオーナーがまだ幼少期の頃であり、冒頭のプリウスやキューブがデビューする直前の時期にあたる。気づけばこのパルサーも20年選手なのだ。

この取材を重ねていると、メーカーを問わず多くの日本車、特に絶版車のオーナーが純正部品の欠品と確保という問題を抱えている現実が浮き彫りになってくることが非常に多い。他車の部品を流用したり、廃車になった個体から使える部品を譲ってもらうこともある。それは、このパルサーのオーナーも例外ではない。そうなると頼りになるのはインターネットオークションだ。「とはいえ、とにかく部品が少ないです。インターネットオークションに出品されても、みんな同じようなものを探しているので入札が入り、結果として割高になってしまうことも少なくありません」。そこまでしてこのパルサーに乗り続ける理由はなぜだろうか?

「父もスカイライン ジャパンやサニーを乗り継いでいますし、現在もラルゴ(GTというトップグレード)に乗っています。祖父もU12型ブルーバードに乗っていましたし、私が日産車を選ぶのは自然な流れかもしれません」。オーナーの好みは「ホットハッチ、スペシャルなエンジンが搭載されているMT車、さりげなく人とは違うモデル」なのだろうか?「人と違うクルマに乗っていたいという思いは密かにあります。パルサーに乗る仲間たちと交流していますが、この仕様と被ることはまずありません。年1回、パルサーミーティングというイベントが開催されているんです。今年は参加してみようかなと思っています。パルサー乗りの付き合いは非常に濃いので、これからもできる限り乗り続けたいと思います」。

このパルサーのオーナーのように、かつてはホットハッチを操り、夜な夜なガソリンスタンドの片隅でクルマをメンテナンスしたり、走りに出掛けた人も多いだろう。それが楽しくもあり、夢中になれるのは若さゆえの特権だ。年齢を重ねるにつれ、家庭を持ち、社会的責任が生まれると、本人が望んでも周囲が許してくれなくなる。「夜中にクルマでどこに出掛けるの?」と言われてしまいかねない。

もしかしたら、今が1990年代までに生産されたクルマを楽しめる最後の時期に差し掛かっているのかもしれないと感じることがある。純正部品の欠品や絶滅間近なモデルがある一方で、世界の有名なオークションに出品され、高い評価を得ている個体もあるからだ。いずれにしても、中古車の数が潤沢で、部品の確保が容易ではないケースが増えつつあるように思う。それならば、年齢を重ねてからでも乗れるクルマは先の楽しみにとっておいてもよいのではないだろうか。一昔前に生産された国産車を手に入れ、自分好みにモディファイし、思う存分楽しんでいる若きオーナーを羨ましく感じる取材となった。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]