人生初の愛車は元教習車、21歳のオーナーが所有するトヨタ・コンフォート デラックス(SXS13Y型)

生まれて初めて運転したクルマといえば、自動車教習所が保有する教習車ではないだろうか?

それまでは聖域だった運転席に自分が座り、エンジンを掛け、ギアを入れ、サイドブレーキを解除する。そして、クラッチを繋いでアクセルを踏むと、するするとクルマが動き出す…。あの瞬間の緊張度と感動を超える体験は忘れられない人が多いのではないだろうか?

しかし、そのときに運転していたクルマのことを覚えている人はどれくらいいるのだろうか?今回は、教習車として運転したクルマのことが忘れられず、元教習車を人生初の愛車として手に入れたというオーナーを紹介したい。

「このクルマはトヨタ・コンフォート デラックス(SXS13Y型)です。このクルマは、かつて教習車として使われていたクルマなんです。私は現在21歳になりますが、このクルマが最初の愛車でして、手に入れて今年で3年目になります」。

おそらく、多くの人が気になるであろう「なぜ、本物の教習車を手に入れようと思ったのか?」という質問を投げ掛けてみた。

「確かに、誰もがそう思いますよね(笑)。運転免許を取得するため、地元の教習所に通ったんです。そこで教習車として使われていたのが、このトヨタ・コンフォート デラックス(SXS13Y型/以下、コンフォート)でした。まず、子どものときに描いたクルマのシルエットそのもののスタイリングに一目惚れしてしまったんです。実際に運転してみたら、当たり前ですが、ものすごく乗りやすいんですね。ますます好きになってしまいました」。

コンフォートは、1995年から2017年5月まで生産されていた「商用車」だ。クラウン コンフォートは姉妹車にあたる(クラウン コンフォートはロングボディ仕様となる)。この2モデルと入れ替わるようにして生産が開始されたのが「トヨタ・JPN TAXI(ジャパンタクシー)」である。今年の東京モーターショーでも展示されていたし、少しずつ街中で見掛ける機会も増えつつある。コンフォートは、主に教習車やタクシー向けに使用されていることからも、多くの日本人にとって非常に馴染み深いクルマといえるのではないだろうか。そんなこのクルマを、どのようにして手に入れたのであろうか?

「教習車を手に入れるにあたり、まずはインターネットで売り物がないか調べてみました。しかし、この種のクルマを売っている販売店が、私の住まいから離れた地域ばかりだったんです。あるとき、友人がマイクロバスや教習車・福祉車輌などを販売している特殊車輌専門店を教えてくれまして、さっそく店舗のホームページに掲載されていた在庫車を見てみると、本当に教習車の払い下げ車輌が売られているんですね(笑)。在庫車の多くはLPGガス仕様のエンジンを搭載しているクルマでしたが、その中に1台だけガソリン仕様車があったんです。幸い、私の住まいからそれほど離れていない場所だったので、クルマ好きの父と一緒に見に行き、その場で購入を決めてしまいました」。

オーナーのように、元教習車を個人ユーザーが所有するというケースはあるのだろうか?

「専門店の方の話によると、私のようなマニアが、『年に何人か買っていく』とのことです。程度の良い中古車だと教習所が購入して、再び教習車として使われるケースもあるみたいですよ。この個体には、大阪の教習所で使われていた痕跡が残っていて、現在は使用できないようにしてありますが、助手席の補助ブレーキもそのまま残されていたりと、元教習車ならではの雰囲気がそのまま残っていたんです」。

教習車やタクシー車輌として使われているコンフォートは、LPGガス仕様が多いように思うが、この個体はガソリン車。使い勝手はどうなのだろうか?

「LPGガス仕様だと燃料を補充できる場所が限られますが、このコンフォートのエンジンは『3S-FE型』なんです。当時、市販されていたトヨタ車と同じガソリンエンジンを積んでいるので、給油する場所を気にする必要がありませんし、この使い勝手の良さも購入の決め手となりました。また、このクルマは元々教習車ですから、補助ミラーが左右に装着されているので、後方視界は良好です。それと、リアのトランクにあるのは、よく自動車電話のアンテナと間違われるんですが、実はコーナーポールなんです。多くの教習車の特徴でもある、左右のドアに付いているサイドバイザーは、一見すると効果絶大に見えますが、実はそうでもないんです(笑)。雨の日に窓を開けるとすき間から水が車内に入り込んでしまうんですね。そこでストローを加工して取り付け、水が車外に落ちるように加工してあります」。

コンフォートのボディサイズは全長×全幅×全高:4590x1695x1515mm。「3S-FE型」と呼ばれる、1998cc 直列4気筒DOHCエンジンの最大出力は135馬力を誇る。この「3S-FE型」は、1990年代後半〜2000年前後に販売されていた、トヨタ・セリカ(T200型/6代目)やイプサム(初代)などに採用されたエンジンだ。

念願だった教習車を自らの愛車にしたことで、オーナーのカーライフにはどのような変化があったのだろうか?

「このクルマを通じて友人が増えました。SNSやオフ会に参加して仲良くなった人もいます。しかも、教習車を個人所有している方とも知り合うことができたんです。2台並べて、それぞれの違いをマニアックな視点で見比べたりして楽しんでいます(笑)。コンフォートは生産期間が長いクルマだけに、見た目は同じでも、エンジンの仕様や車内の装備など、時代ごとに微妙に仕様が異なるんです。例えば高年式のモデルだと、車内の空気清浄機としてプラズマイオンクラスターが採用されていたり、リアに3点式シートベルトの設定があるんです」。

元々は本物の教習車だけに、街中で見掛けたときのインパクトに驚かれることはないのだろうか?

「街中を走っていると、スマートフォンなどで撮影されることもしばしばです。メンテナンスは地元のトヨタのディーラーにお願いしていますが、初めて訪れたときは、ショールームの皆さんが驚いていました(笑)。実際に走っていても、外国人の方の反応は今ひとつです。このクルマに反応するのは日本人ばかりですね」。

元教習車という仕様にこだわりを感じるが、モディファイしている箇所はあるのだろうか?また不特定多数の、それも運転に不慣れな人たちが乗ったことによる不具合はあるのだろうか?

「フロントバンパーに埋め込まれているフォグランプをクリアーからイエローレンズに交換したくらいです。インターネットオークションで純正の中古品を安く手に入れることができたのでラッキーでした。トラブルについては、一度だけオイルパンからエンジンオイルがにじんでいたことがあったくらいです。私が手に入れたときの走行距離は10万キロでしたが、現在は16万キロを超えたあたり。ディーラーの方がきちんとメンテナンスしてくださっていますし、まだまだ快調ですよ!」。

最後に、このコンフォートと今後どう接していきたいかオーナーに伺ってみた。

「教習所仕様のままの状態で乗り続けたいですね。古き良き日本車のシルエットを残したこのデザインがたまらなく好きです。それに、車内も広いですし、使い勝手も抜群にいいんです。いずれはエンジンを載せ換えることも考えています。今は屋根がない駐車場に停めているので、いずれは屋根付きガレージを造り、いつまでも大切に乗り続けたいですね」。

オーナーのコンフォートは商用車であり、教習車として最初の役目を無事に果たした。その後は、役目を終えると廃車になるか、海外へと輸出されていく運命にあるはずだ。今はまだ当たり前のように見掛ける存在かもしれないが、そう遠くない未来に、ふと気がつくと街中から姿を消している可能性がある。それはまるで、昭和の時代を彩ったSL(蒸気機関車)のようだ。オーナーのように個人で所有するケースは稀かもしれないが、タクシーなどで見掛けるケースは少なくない。もし今後、コンフォートに乗る機会があったら、その端正なデザインと車内の広さを再確認してみて欲しい。決して豪華なクルマではないが、シンプルかつ無駄のない作り込みに驚かされるかもしれない。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]